【JAXA╳『惑わない星』】 水星探査機「みお(MIO)」プロジェクトサイエンティストと石川雅之の打ち上げ直前対談が実現!
2018/10/04 00:00
[インタビュー・対談] [他メディア掲載・出演・コラボ情報]

ロケットに搭載されるBepiColomboミッションの探査機2つのうち、JAXAが担当するMMO(水星磁気圏探査機)・愛称「みお(MIO)」

そして、打ち上げ予定日を目前に控えた本日10月4日(木)発売&配信開始の「モーニング」&「週刊Dモーニング」44号誌上で、「みお」のプロジェクトサイエンティストを務めるJAXA・村上豪助教と石川雅之氏の対談が実現!
当サイトでも公開いたしますので、この機会にぜひご覧ください!
宇宙はわけがわからなくて怖い
村上豪(以下、村上) この度はイラストを描き下ろしていただき、ありがとうございました。
石川雅之(以下、石川) いえいえ。
村上 『惑わない星』に出会ってからというもの、大学の授業で惑星の説明をするときに、漫画の一部を使わせてもらってるんです。とてもわかりやすく描かれていますよね。それもあって、「みお」に搭載するメッセージや絵を募集するキャンペーンの一環として、ぜひ石川さんのイラストを搭載したいと思いまして……。
石川 こちらこそお声がけいただきありがとうございます。乗っかれるものは乗っかりたいですから(笑)。
村上 もともと宇宙はお好きだったんですか?
石川 いえ、もともと嫌いというか、怖くてしようがなかったんです。奇妙でわけがわからない。暮らしているうちの上半分が謎っていうのが気持ち悪くて(笑)。ついでに物理も嫌いだったので、合わせてやってみよう、というのが出発でした。
村上 想像と違う答えでびっくりしました(笑)。そういえば僕も小学生くらいのときにブラックホールの本を読んでみたんですが、まったく意味がわからなくて。とりあえず吸い込むやつだ、と。怖かったですね。それに宇宙の大きさを考え始めるとわけがわからなくて。研究対象として惑星を選んだのは、まだ探査機で手が届く範囲だからかもしれません。
水星は見るのも行くのも大変
石川 今は何をされているんですか?
村上 今年の10月にいよいよ打ち上げをひかえていて、その準備中です。今回の計画はJAXAとESAの国際共同ミッションなので、JAXAが担当する「みお」とESAのMPO(水星表面探査機)をドッキングした形で水星へ送りこみます。水星に着くのは2025年末。打ち上げてから7年ほどかかる予定です。
石川 水星は地上からのイメージでいうと「見えない星」ですよね。見るチャンスがある日に、天体望遠鏡でマンションの上から見ようとしたらあっという間に太陽に隠れてしまった。太陽が圧倒的すぎて、望遠鏡をのぞくのが怖いくらいで。昔だと一生見られなかった人もいるらしいので、一回は見たいと思いながら過ごしてるんですが。
村上 たしかにそのせいもあってか、水星はいまだに情報が少ない天体です。影の薄い天体になりがちというか。大きさも惑星としては太陽系の中で一番小さくて、月よりちょっと大きいくらいですし、行くのもかなり難しいんですよ。『惑わない星』でS沢が走りながら重力と遠心力の関係を説明するところがありますよね。軌道の話をするときにとても便利なエピソードなんですが(笑)。実は水星探査の場合も同じで、太陽に落ちる(向かう)のって意外と難しいんですよ。探査機は地球から出るので、地球が持つ公転のスピードを持ってしまう。なので太陽に落ちるためには減速しないといけないんですが、そのためのエネルギー量は太陽系を脱出するよりも大きい。その辺りを地球・金星・水星で計9回のスイングバイ(重力を利用した軌道変更)をして克服し、7年かけてやっとたどり着くという。
仲良くやってますから!
石川 水星ってかなり熱いですよね? 探査機はもつんですか?
村上 たしかに水星の表面温度は約430℃ですが、宇宙そのものは-270℃の世界で、逆にかなり寒いですよね。なので温度についてはバランスをとるのが重要になります。「みお」も熱いところは300℃くらいになるんですが、大事なところはそんな温度にならないようにしつつ、常に横からしか日光が当たらない設計になっていて。
石川 あまり太陽を見ないようにする、みたいな感じで。
村上 そうですね。日陰に装置をおいて、寒い宇宙に熱を逃がすようにして。
石川 カメラなんかは溶鉱炉に放り込んで実験したり……?
村上 そこまではもちません(笑)。大事な装置は60~70℃が限界になっています。実験は巨大な真空の容器に探査機を入れて、巨大なランプの光を巨大なレンズで集め、それを探査機に当てて行います。虫メガネで日光を集めるのと同じですね。
石川 もしESAの探査機が燃えたらニヤっとするもんなんですか(笑)?
村上 いやいやいや(笑)。仲良くやってますから! 昔はライバル関係があったと思うんですが、今はそんなこと言ってられないというか、余裕がないので、科学者として一緒になって成果を求めています。それをとりまとめるのが僕の仕事ですね。
村上豪(むらかみ・ごう)
JAXA/ISAS 太陽系科学研究系 助教
人工衛星による惑星大気・プラズマの撮像観測に関する研究に従事。2011年以降はJAXAにおいて国際水星探査計画「BepiColombo」に向けた探査機全体の開発を行う。現在はBepiColomboプロジェクトサイエンティスト(JAXA側の科学者代表)として衛星開発や運用計画のとりまとめを行っている。
教科書を書き換えるような発見をしたい
石川 7年後に到着するってことは、その頃になるとチャラい大卒の子が入ってきて、研究を引き継いで、村上さんは違う部署から結果を見守る、なんてこともあるわけですよね。
村上 僕もプロジェクトの中ではかなり若者の部類です。なのでもともと携わってきた先生方からすると、僕がそのチャラい子になりますね(笑)。計画自体は古く、2003年からスタートしてますから。今、まさに高校生や大学生の子たちが研究者になる頃にデータが届くので、よく「君たちの内の誰かが研究に携わってくれれば」と、学生向けの講演で言っています。
石川 海外に行く飛行機のモニターには世界地図があって、飛行機がどこにいるかがわかるじゃないですか。ぜんぜん動かないのに、好きでずっと見ちゃうんですが、ああいうのが見られるとうれしいです。
村上 できると思いますよ! いつ、どこを通るのかはすでに公開しているので。最新情報はやっぱり気になりますか?
石川 「新しい情報出るな!」っていつも思います。木星や土星に探査機が行っているので、ストーリーが成立しなくなる発見があったらどうしよう、とヒヤヒヤしてます。ニューホライズンズ(探査機)がもうすぐ冥王星に着くっていうときに連載が始まったんですが。
村上 ハートマークのお話ですね。
石川 そうなんです。そういうラッキーもあれば、ニューホライズンズのチームが「全部惑星にしよう。月も」とか言い出したりするので、それはやめようよ、と(笑)。
村上 そういう意味では僕らも教科書を書き換えるような発見をしたいですし、惑星探査というのは行くと何かしらあるものですから。『惑わない星』で水星が人工衛星について「いた気がする」と言っていたので、それにぜひ「みお」を加えたいと思っています。
石川 ぜひ水星の本当の姿を広めてください。応援しています!
村上 この度は本当にありがとうございました。
対談記念読者プレゼント!
本対談の実現を記念し、「みお」に搭載された「水星」イラストの複製原画と、国際水星探査計画「BepiColombo」のピンバッジをセットにして5名の方にプレゼントいたします!
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