【モーニングの新・新人賞】 第4回《THE GATE》、ツジトモ&一色まこと両氏を迎えた最終選考の議事録を公開!

2017/05/23 22:00

THE GATE] [新人賞

全受賞作全掲載の“超実戦型”新人賞、第4回【THE GATE】(結果発表はこちら)の最終選考議事録を公開します。



モーニング編集部員全員による2次選考を経て、一色まこと氏(『ピアノの森』)&ツジトモ氏(『GIANT KILLING』)の両審査員をお迎えし、最終に残った11作の中から各賞を決定した白熱の議論を、ほぼノーカットでお届け!

漫画家志望の方はもちろん、受賞作が気になった読者の方も、ぜひお読みください。


[漫画] 『ヤフじま
ヨンチャン (京都府・24歳)

ストーリー

未知の島を調査すべく出かけた一行は、嵐に見舞われ、命からがら島へたどり着く。ある理由によって食料確保もままならないなか、突然「ヤフ」と名乗る男が現れた。

一色まこと氏より

最初に感心したのは、見開きの扉ページにあった「お父さん!!」の台詞。この切羽詰まった一言の叫びで、彼女と船長の関係をわからせています。作品のあちこちに、こういうところがあって、余分な説明をせずともうまく情報を入れている。とても力を感じます。展開もアクションも非常にうまい。これだけ画面が動いているにもかかわらず、ドタバタ感がないのは、ところどころで画面を止める印象的な絵があるからでしょう。トレイシーのキャラの作りが甘いため、少しご都合主義な感じがしてしまったところは気になりますが、とても力のある方なので、連載デビューが待ち遠しいです。

ツジトモ氏より

全体的にクオリティが高く、読んでいて非常に気持ちが良かったです。漫画として作品をまとめ上げる能力が非常に高い方だと思います。背景やキャラクターの絵の密度も適度で、読みやすい。一方で、今回の作品のようなテンションの高い作品ではなく、人間的な成長や変化を描こうとしたとき、キャラには、もっとディティールが必要になるはずです。次回作では、人間の心の機微を描くことにも挑戦してみてほしいと思います。

THE GATE事務局長より

圧倒的なスピード感とキャラクターの明るさ! ザッツエンタメ! それだけではなく、きちんと「読者の目を止めさせる」意識が随所に見られ読み味に緩急がついている点など、勢いと内容がともなった作品で満場一致の大賞でした。物語における多少の凸凹を気にさせない、強くて明るいキャラクターを描けるのは才能です。一日でも早く連載を勝ち取り、「読むと元気になる」モーニングを引っ張るような作品を生み出していただきたいです!

受賞のことば

漫画大国である日本で自分の漫画が掲載されるなんて、ミラノでファッションショーを開くのと同じです。これは実に感激です。(ヨンチャン氏)

担当編集より

韓国出身のヨンチャン氏!! キャラクターの体や顔がギュンギュン動き回る、とにかくパワフルでスケールがでかい作品です!


ツジトモ とても面白かったです。ただ、前半のコマ割りで引きの絵が多かったり、ちょっとキャラクターの絵が小さすぎるようなところが気になったので、もうちょっと大小や緩急がつけば、なお良かったと思います。ですが、とてもクオリティが高かったと思うし、気持ちよく読めました。

一色まこと 担当さんのコメントで「時間がなかったので背景の原稿にかける労力が足りなかった」とありましたが、このままで十分です! 十分のクオリティになっています。むしろこれ以上やらないでほしい(笑)。もしこれで少ないと担当編集さんが思ってしまうと、その思いは漫画家さんにも伝わって描きこみすぎてしまい、逆にもったいないことになってしまうかなと思います。

ツジトモ ちゃんと描いてないコマがあるならそうなんですけど、この作品は全部ちゃんと描いてありますよね。だからあとは、読者もみんなそれぞれ頭で補いながら読むので、これで大丈夫だと思います。

一色まこと そうです。きっとこの人は週刊連載をするでしょうから、「背景背景」って言っていると原稿が間に合わないですよ(一同爆笑)。物理的な問題もありますが、漫画を作る上で意識を持っていかなきゃいけないのは、キャラクターとか構成とかもっと他にあると思います。背景については現状でもちゃんとやれていると思うし大丈夫。

編集部員・K田 背景については、作家さんご本人が「本当はもっと描けた」とすごく悔しがっていた経緯がありまして……。

ツジトモ 描けちゃうからなんですね。「逆に見やすくて良かった」とぜひお伝えください。現状でポイントポイントの背景はちゃんと入っているので、バランスが良くてすごくいい漫画だと思います。詰め込みすぎるとかえって重くなってしまうので。不安にかられて背景を埋めたがる人は多いんですけど、なにが効果的な表現かチョイスできるようになるのも、とても大事です。

編集部員・K田 わかりました、ありがとうございます。この方は持ち込みで出会ったのですが、この作品はその時点で作家さんの中にでき上がっていたものでした。スケール感がある作家さんで、ウソのつきかたが大胆だなと思いました。とにかく体が動いているのも魅力的だなと。ただ、漫画を描く、漫画としてまとめ上げる能力が高い作家さんだと思ったのですが、裏を返せばどうしてもたまにご都合展開に見えるところも気になってしまって、リアリティーをもっと追求するべきなのか、それには作家さんが実感を持てる体験などをもっと入れてみるべきなのか、などと悩んでいます。

ツジトモ オチが「パキーン」とはっきり出る漫画を描ける人だと思うんです。でも、オチがスンナリとは終わらないタイプの話を描こうとしたら、この作りではできないと思うんですよ。作品と作家さんの魅力、強みでもありますが、「バンバン!」「ボカーン!」っていう爽快な展開を終わりまで楽しんで読めるという、テンションの高さを持っています。もし今後、ちょっといい感じで余韻を残して終わる話だったり、キャラの心の変化があって終わる作品に挑戦しようとするときには、キャラたちにもっとディテールや奥行きが必要になると思うんですよね。一色さんがさっきおっしゃっていた「少しご都合主義な感じ」という展開も、このテンションのキャラ達だからできると思うんですよね。しかし、そうじゃない雰囲気の話を作るとしたら、もうちょっと仕掛けがほしい。漫画を描いていく過程で、どの話も同じような終わり方をさせることはできないから、自然と気づくのではないか、と思うので、それも楽しみですね。

一色まこと 本当にこれからが楽しみですね。どんどん描いてもらいたいと思います。


第4回THE GATE大賞受賞作『ヤフ島』は、
4/6発売&配信の「モーニング」&「週刊Dモーニング」19号に掲載されました。





[漫画] 『鳥と馬』
岩沢いわさわ美翠みどり (埼玉県・27歳)

ストーリー

不幸な出自から世を呪い、暴虐の限りを尽くしてきたブロメイ。神父の情けにより死刑を免れ、流刑に処された彼は、たどり着いた島で、美貌の青年・フィアンセと出会う——。

ツジトモ氏より

物語の世界観と、登場人物たちの生き様には、なにかひかれるものがあり、不思議とページをめくってしまいました。誰かに出会うことで自分を変える、という物語をすごく丁寧に描けています。島の絵もすごくいい。この絵柄は、僕にとっては少し懐かしさもあるのですが、そこがこの人にとって、大きな武器になるような気がします。ダイレクトな表現もあって、昔の漫画にはあったけど、今の漫画にはない魅力がありました。もう少しだけ読者に歩み寄ったお話にしてあげれば、この才能を読者は支持してくれると思います。その才能を武器にして、デビューを目指していってほしいです。

受賞のことば

やった〜!! ツジトモ賞、めちゃくちゃ嬉しいです!!! ありがとうございます!!(岩沢氏)

担当編集より

人と人が出会うことで救われるさまを壮大なスケールで描ききった、希望に満ちた意欲作。次作が楽しみ!


ツジトモ 世界観と登場人物たちの動いている様子が良かったです。ただ、主要キャラが男か女かわからないままだったのと、喜怒哀楽を描こうとしているものの淡々と進んでしまっていて、あまり物語に入り込めなかったです。でも嫌いじゃないです。自然とページをめくらされて、不思議な読み味があって、僕は好きですね。もう少し読者に歩み寄る描写とかあればさらに良かったと思います。

一色まこと 主人公のキャラの設定が難しかったんじゃないかと思います。幼いころに虐待を受けていた経験があったとしても、何人もの女性を惨殺したキャラクターを、どうやって応援すればいいかわからなかったです。彼の犯した罪が、その時代であれば仕方のないものであったり、理解できるものであったりしたのなら感情移入できたんですが。そこがもっとちゃんとしていれば、評価が上がったと思います。

THE GATE事務局長 自分の世界をしっかり持っているのは伝わりましたが、読者に「わかってもらう」努力が少し足りなかった印象を受けました。編集長はどうでしたか?

モーニング編集長・宍倉 独特なセンスがあるなと思いました。ただ、主人公に感情移入できないまま終わってしまったのが、やっぱりもったいなかったですね。

編集部員・H野 僕も一色さんがおっしゃった部分を変えたほうがいいかなと思っていたんですが、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』でカンダタが人をいっぱい殺していたのに蜘蛛を助けただけで救われるというのを思い出して……(笑)。僕も主人公が好きになれたかというとそんなことはないんですが、「誰かに出会って変わる」というテーマを、大きなスケールですごく丁寧に描いているのがいいなと思いました。審査委員のおふたりに質問です。個人的に絵がめちゃくちゃうまい作家だなと思っているんですけど、キャラクターの絵が80年代の感じですが、これは武器と捉えてもいいものなんでしょうか。

ツジトモ いいと思います。僕は懐かしい気持ちがして嬉しかったというか、逆に新鮮な気がしました。

一色まこと そうですね。個性的でこの世界観に合っていると思いました。イラストとしても魅力がありますね。


第4回THE GATEツジトモ賞受賞作『鳥と馬』は、
4/13発売&配信の「モーニング」&「週刊Dモーニング」20号に掲載されました。





[漫画] 『かいせんぜんや』
次枝つぎえだ春花はるか (大阪府・22歳)

ストーリー

クラスメイトが言葉の通じない怪物にしか見えない「私」。たった一人、「彼」を除いて。でも、ある日、心の拠り所にしていた「彼」に変化が……。誰の気にも留めてもらえない「私」の、孤独との戦いの物語。

一色まこと氏より

とてもセンスを感じる漫画でした。絵も内容も完成されていますし、この方、独自の世界観が作られています。絵の部分で言えば、白(空間)の使い方がうまいです。欲を言うなら、登場人物の心が動く瞬間をもう少し入れても良かった。全体的には淡々とした展開になっているので、感情が見えるシーンがちょっとあるだけで、キャラクターを好きになったり、読み味が変わってきたはずです。たとえば、ヘルメットをかぶった男の子が主人公に恋をしたかも……の瞬間の画面を止めても良かった。主人公から彼にもう一言あっても、ラストシーンがより印象的になったはず。次の作品では、この人にだからこそ描けるものを読みたいです。

受賞のことば

結果を聞いたときはほっとしました。ありがとうございます。頂いた評価を無駄にしないよう精進いたします。(次枝氏)

担当編集より

抜群に美しいシーンを作れる人。その美しさを際立たせるような人間のみっともなさや泥臭さを描けるようになったら最強です!


ツジトモ 宮崎夏次系さんにどことなく似ていますね。作品全体としては好きなんですが、オチの付け方などにこの作者ならではのオリジナリティが見られると、もっと良かったと思います。

一色まこと 全体的にとてもクールに描いているのですが、もう少し登場人物の感情に起伏をつけてもいいかな、と思いました。ちょっとだけ笑顔を見せるシーンを入れたりするとか。これはもう好みの問題なのですが。

モーニング・ツー編集チーフ・寺山 ある作家さんのことが好きでマネしたいという人は多いけれども、曲がりなりにもマネになっているという作品が作れる人はそうはいないと思います。実力はある方だとは思うので、これから一人の描き手としてなにを描いていきたいのかを担当と打ち合わせしていけばいいと思います。

THE GATE事務局長 担当のY川さんはいかがですか。

編集部員・Y川 一色さんは感情の起伏を見せるシーンがあったほうがいいとおっしゃいましたが、ツジトモさんはなにか足したほうがいいと思った点はありますでしょうか。

ツジトモ これはこれで、でき上がっている作品だと思います。だからこの作品をいじるというよりは、作家さんが好きな作品、感動した作品はあると思うので、そういうものも意識しつつ、オリジナリティを出しながら作品を作っていけたらいいと思います。

一色まこと そうですね。女の子のキャラクター造形もとてもかわいいし、今後の作品にとても期待します。どんどん描いていってもらいたいです。


第4回THE GATE一色まこと賞受賞作『かいせんぜんや』は、
4/20発売&配信の「モーニング」&「週刊Dモーニング」21号に掲載されました。





[漫画] 『アビの日』
小森こもり江莉えり (滋賀県・24歳)

ストーリー

フィンランドの教育を学ぶため、現地の高校に実習に訪れた大学生・秋山陸。理想的な教育環境に感動するが、卒業イベント「アビの日」を前に、一人の少女の悩みが、陸をある行動へ駆り立てる。

モーニング編集長・宍倉より

月例新人賞「モーニングゼロ」の2016年9月期期待賞からステップアップしました。前作『織り職人のしごと』では西陣織を題材に丁寧に描いていましたが、今回もフィンランドの教育現場、文化風習を丁寧に描いています。丁寧に描く姿勢は作者の武器になります。一方で、日本人留学生の過去がステレオタイプだったり、フィンランド人と日本人の内面にそれほどの差異がなかったりと、キャラクターの内面を掘り下げることが足りていませんでした。次は魅力的なキャラクターを生み出してください!

受賞のことば

とても嬉しいです、ありがとうございます! 丁寧にお付き合いいただいた担当さん、前向きに応援してくれた友人たちに感謝です。課題は残りますので、これからも頑張ります。(小森氏)

担当編集より

まるで自分の目で見てきたかのように、作品にリアリティがあります。綿密なリサーチ力、飽くなき好奇心が作者の大きな武器です!


THE GATE事務局長 これは編集部の評価が一番高かった作品ですね。宍倉編集長、いかがでしたか?

モーニング編集長・宍倉 リアリティがあるかどうかは別の話として、今回の応募作のなかで一番いろんな要素を入れようとしていたのが良かったですね。この方は最初、月例賞「モーニングゼロ」に応募していただいていて、そのときに比べたら描く世界が広がっていたし、希望が持てる終わり方で作品を作っていたところも評価しています。

ツジトモ 北欧に対して、多くの日本人は「教育や福祉が充実していて幸福度が高い」みたいなイメージを持っている部分があると思います。その感覚をふまえると、この作品の主人公は外国に逃げて行った人間に思えてしまいます。外国にだってさまざまな問題はあると思うんですが、そこを描かない設定で、それはなんか違うんじゃないかと思いました。しかし、いいところもいっぱいありましたね。主人公が他の登場人物の気持ちを思いやって発言しているところとか、キャラクターが生きてる感じがして良かったです。

一色まこと この漫画を読んでフィンランドがすごく良い国だということはわかったんですけど、主人公のキャラが少しもったいないと思いました。主人公のひどい過去、辛い状況を説明していますが、そういう過去を経験してきた人には見えない。とても良い家庭に育った素直ないい子にしか見えず、そこが少し違和感でした。仮に彼が過去を克服した後の話だとしても、その経験をしたからこそのなにか……陰のような部分があってもよかったのでは……と思います。そこがあったら、もう少し感情移入ができて、作品に入れたかもしれません。

THE GATE事務局長 ありがとうございます。しかしこの作品、全体的に評価が高いですよね。

ツジトモ それはわかりますよ。会話の成立の仕方とか場面展開の仕方とか、悪者を出さないようにしているところとか、主人公の考えも奥行きがあって、そういうところが読みやすさにつながっているんだと思います。

THE GATE事務局長 担当のS藤はどうですか。

編集部員・S藤 登場人物にリアリティが感じられないのは、作者が自分と違う考えを持っていたり自分と違う経験をしているキャラを描くのが、まだ苦手なのが原因だと思います。漫画を描いていく上で、自分と違うキャラは絶対に描かなければいけないと思うんですけど、おふたりはそういうキャラを描くときにどうされていますか?

ツジトモ わからない人は描けないんですけど、でも、描かなきゃいけないんですよね。そこでやっぱり想像力が必要になってくると思うんです。この人はこんな仕事をしているけど、実はこうなんだろうなとか。わからないけどそこを想像できるかどうかは、人間観察であったり、人にどれだけ興味を持っているのかだと思います。でもやっぱりどの作家さんも、自分じゃない登場人物は描いていないと思うので……。

一色まこと 私は正しい大人の男性を描くのが苦手で、おそらく自分のなかにそこがスッポリないんでしょうね。そういう場合は、こうだったら面白い、こうだったらカッコイイ……という妄想と、理想から作りますかね。

ツジトモ その理想であったりとかも含めて自分の想像力ですよね。

一色まこと ああ、そうか。そういうことですね。

THE GATE事務局長 ありがとうございます。漫画でキャラクターは重要ですので、そこを描けるようになってもらいたいですね。


第4回THE GATE編集部賞受賞作『アビの日』は、
5/11発売&配信の「モーニング」&「週刊Dモーニング」24号に掲載されました。





[漫画] 『断面』
井小富いことみ (埼玉県・22歳)


一色まこと 私はこの作品の、ちょっと気持ち悪い絵に妙にハマってしまいました。立松君が「うなぎが旨すぎる!」と喜んで食べている顔が真に迫っていてすごく良くて、この顔が描けたらこの話はOKなんじゃないか! と思いました。主人公が、友人の笑顔をもう一度見たい! というただそれだけの話なんだけど、それがすごく楽しく感じてしまって、このキャラクターを描こうとする意志がすごくいいなと思いました。タイトルが『断面』なんですけど、好きな友達の一部、断面を切り取って見せました、ということなのかな? 荒削りで突っ込みどころは多々ありますが、このままどんどん描いていってください。この先がとても楽しみです。

ツジトモ 僕もキャラクターを描く熱量はすごいなと思ったんですが、表現力のある作家さんだからこそ見えた部分で物足りなさを感じました。たとえば、自分が見たい立松君の表情を見ようと画策するんだけど、いざ見ると「あれ? あんまり嬉しくねーな?」と感じているシーンとか、ハルキ君の動機がどこか友情っぽくないように感じてしまったんですね。落差があるのはわかるんですけど、でも好きな友達がなにかをおいしそうに食べてたら、やっぱり悪い気はしないんじゃないかとか、なんかしらの感情があるんじゃないかと思うんです。単なるガッカリではない感情があるんじゃないかと。しかしそこで主人公の心がひゅーんとガッカリしてしまう心の動きが描かれているんです。この子たちの関係性を考えるとなにかもうちょっと友情としてつながってほしいという読者としての期待があって、そういうところの描き方が弱いような気がしたんです。オチも、立松君のことを少しでも知ることができた気がしてなにかしらの満足感はあった、というようなものだったら、感情移入しやすくてドラマとしてつながっていく気がしました。

編集部員・K根 月例賞をきっかけにこの作者さんの担当になり、ネーム段階で見せていただいていました。実は私もけっこうしつこく、二人の関係性や「誕生日にうなぎを食べるんですか?」なんてことを聞いていたのですが、ご本人は「うなぎ美味しくて好きだからです」とか、たまに入っているお母さんの顔が怖いと指摘すると「え、怖いですか?」とかいう反応で、ご本人は顔が怖かったり、気持ち悪いと言われ得る絵柄を描いているつもりは全然なくて、ナチュラルにこの作品に没入して描いていいらっしゃるという印象でした。掲載や連載を目指す上では、「読んだ人がどう思うか?」をもう一歩踏み込んで考えられるといいのかなとは思っていまして、ネームで一個ずつ聞いたりしながらやっているんですけど、ご本人的には自分の描いていることを一歩引いて客観的に見ることがすごく難しいそうで、うまくアドバイスする方法があったら教えていただけますとありがたいです。

一色まこと それは客観性が持てないということですか? えーとそうですね……まず、のめり込んで描くことができるのは、絶対いいことだと思うんです。逆にそれができないプロの作家さんも多いと思います。そして客観性を持てるようになるには、もっともっと描かないと。描けばいずれ手に入るというか、自然に見えてくるんじゃないかなと。だから最初は、「真夜中のラブレター」的でいいと思うんですよ。他人が見たら恥ずかしいと思うくらいのめりこんで描けるのなら、それはそれで才能だし。ただ世間に発表する前に、きちんとそこは担当編集さんがチェックしなければいけないですけどね。あとは、客観性というのも実はけっこう難しくて、わかったつもりになっていても、勘違いや、思い違いや、独りよがりや、抜けはあるし。大御所の先生でも、ズバリと言ってくれる担当編集が絶対に必要なのはそこの部分だと思う。私自身も客観的に自分の作品を見ることができるようになるまで、何年もかかりました。

ツジトモ たしかに僕も未だに、一年くらいしないと自分の単行本をまともに読めないですよ。

一色まこと あ、それ、まったく同じです。何年か前のを読んで、グッときたりすることがあるんですよね、自分の漫画で(笑)。

ツジトモ ありますよね! やっぱり自分が描いたのって、好きな作風なんだな!って思う(笑)。

一色まこと ただその一方で、後から「うわー!」って失敗したと思うコマもありますね。確かその当時は、けっこう編集さんに「直した方がいい」って言われたけど、その効果をあまり理解してなくて直さなかったところだったり。「うわー? ここ直せばよかったー」ってずいぶん後で気づくこともあるんですよ。だからその場での客観的な判断なんて、そんなにできてないかもしれない……。

THE GATE事務局長 そういう直さなかったコマは覚えているものなんですか?

一色まこと 覚えてますよ。だって心理的には反抗してますからね。曲がりなりにも第一読者である担当編集者から、直すように指摘されていて「直そうか? 直すまいか?」とぎりぎりまで葛藤しているわけですから。例としては「照れ」があって書けない一言みたいなものもあります。担当には「絶対必要です! その一言がないと読者に伝わらない」と直すまで強く言われて、渋々で直す。何故渋々でも直すかというと、あまり寝ていなくて自分の判断を信じきれないことと、その状態の自分より担当編集者を信じているから(笑)。でも一年かしばらくしてから読み返したとき、「ありがとう!!」って思いましたね。もしその一言を入れてなかったらお話にならなかった。今ではものすごく感謝しています。そういうことは何度かあります。

ツジトモ でも「反抗した」っていう事実も大事な気もしますよね? 僕もけっこう反抗する方で、「絶対違う! わかってない?」って思うことも多かったんだけど、でもそれまでに言われてきたこととかが、フッと頭に入ってくるときがかなりありますから。ちゃんと反抗する方が、結果的にちゃんと気づく土壌としては悪くないのかなーなんて。後々刺さるんですよね、お母さんとかの言葉と一緒で(一同爆笑)。

編集部員・S根 「のめり込む力」が少なくても、プロとして漫画は描けるのでしょうか?

一色まこと そうですね、技術もあって、絵もうまいと、心を込めなくてもお話が描けてしまう。それもかっこ良く描けてしまう。そういう漫画家さんはいっぱいいると思うんですよ。でもそれが人の心を動かすかどうかはわからない。動かせないんじゃないかと思う。だからそのうまいへたじゃなくて、たとえば小さい子が電車ごっこをしているとして、自分の空想の世界で本気で遊ぶみたいな、そういう感覚で漫画が描けたらすごく強い。そういう空想の世界に、本人が入っちゃってるわけだから。それはもうすごい能力、才能、エネルギーですよ。でもそれが人の心を動かすかどうかはわからない(笑)。

編集部員・S根 それはやはり、色々な漫画作品を見たりするなかで、作家さんの没入度みたいなものはわかるものですか?

一色まこと どうでしょう? 読めばわかるような気もしますが。やはりキャラクターが成り立っていないと、その状態にはなっていないでしょうね、と思うことはあります。色々なキャラクターが出ているけど、誰と誰を置き換えてもかまわない話というのは結構あって、それは良い面ではストーリーの面白さが勝っているからなんだけど。でも、「いるな。存在してるな」って思うようなキャラクターが創れたら、カッコよく言うとキャラクターが勝手に動いてくれるところがあって、もうほんとに坂道をスキップして歩くように、ストーリーは流れます、おそらく(笑)。

ツジトモ 流れないこともありますけどね(笑)。でも結局、すべてはキャラクターの話になっちゃうんですよね。

一色まこと この作家さんもそうですが、のめり込んで描けるのは才能なので、とにかく描くことです。そのなかでキャラクターを捕まえることもあるし、客観性はそれより後の話かもしれません。


第4回THE GATE奨励賞受賞作『断面』は、
5/18(木)配信開始の「週刊Dモーニング」25号に掲載!





[漫画] 『脳虫』
モイタナナミ (東京都・19歳)


一色まこと 発想はとてもいいし、途中までは面白く読めました。ただわからないところはいくつかあって、野木君が「今日までなんだ」っていう期限とか、そもそも脳が虫に食われてしまうっていう感覚がわかるようでよくわからない。もやもやしました。

ツジトモ いじめられていた野木君が学校に来なくなった理由とかも、いまひとつよくわからないというか、いろんなことの説明が少し足りないと思います。

THE GATE事務局長 お二人からはこういう声があがりましたが、担当からはいかがでしょうか。

編集部員・M川 この方は月例賞に応募してくださって担当になりました。学校がつらいということを表現するのに、脳に虫がいるという描き方をするのがとても面白いなと思いました。ただ、お二人のお話を聞いて、もしかしたら自分が作者の表現する世界にどっぷりつかりすぎてしまって、説明を引き出せなかったのかなという気もしました。

一色まこと 担当さんにわかるのなら大丈夫ですね。その感覚を共有していない人に、どうやって作品を読んでもらえるか、それを見つけられたら良いと思います。

ツジトモ 作者の世界観の外にいる、つまり読者に近い登場人物が一人でもいると違うと思います。読者がその人物を手掛かりに作者の世界に入っていけるような存在がほしいなとも思いましたね。これからの作品で、ぜひ読者を担当編集さんみたいにどっぷり世界観に引き込んでほしいです。期待しています。


第4回THE GATE奨励賞受賞作『脳虫』は、
5/18(木)配信開始の「週刊Dモーニング」25号に掲載!





[漫画] 『Snow Planet』
佐野さの裕一ゆういち (京都府・21歳)


一色まこと 世界観がとてもよく出ていて、飢えの怖さであったり、色々なものが伝わってきます。画面が全体的にグレーで暗いのは、春が来たときのための演出なのかなと思っていたんですけど、いざ春が来たときも変わらずに、ずっとグレーだったところは少し残念。あと限りある食料を一人が我慢し続けるのではなく、分け合ったりはできなかったのか? とか、せっかく春が来たのに、ラストでスッキリ感がなかったのはもったいなく感じました。

ツジトモ よく描ききったなと思います。こういうのが描きたかったんだなというのが伝わってきたので、作者の作品に対する熱量の高さが良かったです。これから先はもっといろんな作品を作って、いろんなことに挑戦していってもらいたいですね。見せ方やセリフなど、読み手の立場に立って作ってみてほしいです。

THE GATE事務局長 一色さん、ツジトモさんありがとうございます。担当のH野はどうでしたか?

編集部員・H野 今のお二人のお話を聞いて、とても納得しました。一色さんがおっしゃった「食べるのを我慢するのはおかしい」というのは僕もすごく共感できます。この作者は自分との戦いみたいなものをずっと描いていて、カッコイイ部分で勝負していると思うんです。だからこれからはカッコイイの先にある、もっといろいろなことをさらけ出したものを描いてもらいたいと思っています。

THE GATE事務局長 この作風のままだとちょっと難しい部分も出てくると思うんですが、どうでしょう?

ツジトモ 本人次第じゃないですか? このタイプは放っておいたほうがいいと思います。(笑)。


第4回THE GATE奨励賞受賞作『Snow Planet』は、
5/18(木)配信開始の「週刊Dモーニング」25号に掲載!





[漫画] 『ココロギムナジウム』
結先ゆいさきうみ (愛知県・31歳)


一色まこと 「頭のなかのキャラクターがしゃべりだす」という設定が、映画『インサイド・ヘッド』を思い起こしましたが、自分自身と脳内のキャラクターの入れ替わり方が自然に上手く描けていたので、読んでいくうちに気にならなくなりました。この方は人を描くのがうまいですね。身近にいたら嫌かもしれませんが、丸山というキャラクターがいいですね。丸山の「生きられるところで生きればいいんです」というセリフも効いている。良いタイミングでサラっと、こういったセリフを言わせることができるのは、センスと力を感じます。ただ主人公の坂本は上司を殴らない方が良かった。胸ぐらをつかんでしまっては会社を辞める方向になってしまいますが、ここは殴るのをこらえて、自ら辞職する道を選んだ方が、坂本自身の自主性が表現できたし、キャラも立ち、読み心地も良くなったと思います。

ツジトモ 僕は脳内のキャラクターが出てくるのは良いと思いましたが、もっと大人の会話をしてほしかったです。本当の大人の世界では、純粋な悪者がいなかったり、優しさが逆に相手の首を絞めることになってしまったりするものです。そういうことを念頭に置いて、脳内の会話を作ってあげるべきだったと思います。現実の社会では、クライアントに対して、思うところがあっても飲み込まないといけないものですよね。だから、自分の本心をどう伝えるかで主人公は悩むべきだと思います。そこから逃げてしまうのは、主人公も社会人としては正しくないのではないかと思ってしまいました。

THE GATE事務局長 なるほど。全体的にキャラクターの行動が幼いということでしょうか?

ツジトモ そうですね。青年誌に応募する以上は、脳内の住人には、もっと大人の内容について語らせないといけないと思いました。

一色まこと ああ、言われてみれば確かに。そこは全く気づかなかったです。でもこの絵柄で描かれる世界なら、シビアな大人の話じゃなくても楽しめるような気が。

ツジトモ そうですね。ただ、大人の読者が読むものだと考えて描いてほしいとは思います。

THE GATE事務局長 主人公が考えもしないようなことが、脳内の会話で出てくるのであれば、この設定にした意味が出てくるかもしれませんね。寺山モーニング・ツーチーフはどうですか?

モーニング・ツー編集チーフ・寺山 確かに、頭のなかの会話はちょっと幼いところもあったように思いますが、主人公のセリフなどをしっかり描けているので、実力のある方だとは思いました。

THE GATE事務局長 いい部分も悪い部分も明確ですね。担当のS藤さん的にはどうでしょう。

編集部員・S藤 この脳内での会話という設定は、私が提案したものなので、講評をお聞きしていて申し訳ない気持ちになりました……。この方は「pixiv」経由でご連絡させていただいた方で、これは、私が担当になって初めて描いてくださった作品です。この作品には元となった短い作品がありまして、それを読んだときに、セリフ回しもすごくうまいと思い、応募してみないかとご連絡しました。絵の荒さもまだあると思いますし、今回の作品のなかで、他にも直すべきところはなにかあるでしょうか?

THE GATE事務局長 特に、絵について伺いたいということでしょうか。

一色まこと 漫画における絵というのは、内容と伴って生きてくるものだと思います。もちろん、うまいに越したことはないですが、上手ければいいわけでもありません。たとえヘタクソだったとしても、内容が面白ければ、絵柄は味になってしまうものです。本当に面白いものを作ろうとしていったら、絵もだんだん良くなっていくものだと思っています。

ツジトモ 僕は、まず最初にキャラクターをしっかり作ることが重要だと思います。たとえば「真面目なキャラクター」と一言で言っても、見た目が真面目そうなのか、行動が真面目なのか、さまざまですよね。それを伝えるために絵があるんだと思います。絵はその作家さんが考える「真面目」がどういうものなのかを伝える手段ですね。だから、作者のなかでキャラクター像が固まってないと、「真面目」なキャラクターなのに、絵で見ると髪型がボサボサだったりする。逆に、キャラクターはしっかり作れているはずなのに、そういう絵にならないときには、絵の技術が足りていないとわかるはずです。

THE GATE事務局長 たとえば、掃除をする場面から几帳面さが表現できたりするかもしれませんね。

ツジトモ あるいは、几帳面な人はそもそも汚さないとか?

THE GATE事務局長 そうですね。そういう行動からキャラクターを作り出していけるんでしょうね。


第4回THE GATE奨励賞受賞作『ココロギムナジウム』は、
5/25(木)配信開始の「週刊Dモーニング」26号に掲載!





[漫画] 『SWITCHER』
三浦みうらタケシ (神奈川県・38歳)


編集部員・M本 担当です。この方は他誌で原作をされていたこともあります。ですが、やはり自分自身で漫画を描きたいと思うようになり、今回応募されたそうです。ネーム原作の方が向いているのではとも思ったのですが、直接お話しするなかで、描きたい絵が明確に見えている方だと思ったので、今は漫画を描いてもらうべきだと思っています。

一色まこと まず、事前に頂いた質問状のなかで、担当さんが絵柄を気にされていたのでコメントしますが、絵はいいと思いますよ。ただ、主人公とライバル二人の描き分けができていないために、何回も読み直さないといけなかったですね。問題はそういうところで、年齢的なことでは全く問題ないと思います。

編集部員・M本 ありがとうございます!

THE GATE事務局長 一色先生は比較的、高い得点を付けていますが、内容についてはどうでしょうか。

一色まこと 最初から楽しく読めたのですが、最後の2ページで全てが台無しになっています。本人は「何故この能力を授かったか?」の理由を「友人の身代わりに死ぬこと」と納得して入れ替わりますが、自分だけで思うのは勝手だけど、本当に死んでしまったら、それが事実、全てになってしまう。本当ならなくなるのは能力だけで良いはずです。死んだと思わせても何とか生き残って、そんな能力に頼らず自分自身の力で一歩でも立ち上がる……まで描いてほしかった。

ツジトモ 僕は設定の甘さ、というより主人公がどういう考えに基づいて行動しているかがわからなかったです。指定した人と人生を入れ替われる能力を持っていながら、同じ野球部のライバルとしか入れ替わろうとしないのは、なぜなのか……(笑)。別に壮大な話にする必要はないと思います。しかし、身近な人としか入れ替わらない理由を描かないと、この主人公に感情移入するのは難しいと思いますね。

一色まこと なるほど。そこには気づかなかった(笑)。

THE GATE事務局長 主人公の年齢も幼いですし、世界が狭い分、こういう身近なところでしか能力を使わないというのはあり得ると思います。ただ、一度くらい有名人と入れ替わり、大失敗したから身近な人とだけ入れ替わることにした、という方がわかりやすいかもしれませんね。

ツジトモ そういった描写を入れてあげれば、読者目線での理解が深まると思いますね。


第4回THE GATE奨励賞受賞作『SWITCHER』は、
5/25(木)配信開始の「週刊Dモーニング」26号に掲載!





[漫画] 『おやこうぼ』
宮田みやたマサヒラ (東京都・32歳)


ツジトモ 情報はあるけど、なぜ酵母のお話にしたのかはよくわからない。それにこの旅を通して主人公たちがなにをしたいのか、どこへ向かっているのかも今一つわからない。にもかかわらず、その旅をするために、夏休みは妻と従業員に店を任せています、なんて言ってる人のことは好きになれないですよね。

編集部員・K井 旅の目的がはっきりしない、ということですか。

ツジトモ そう。なんか酒飲んで終わりって感じで、なんで旅しているのかわからない。

THE GATE事務局長 では、一色さんはいかがでしょうか。

一色まこと 新人賞って意外と暗いテーマのものが多かったりするんですが、これは最初から最後まで明るい雰囲気でいいな、と思いました。ただ、この話は「酵母やパン」に興味がある読者なら読んでもらえるかもしれませんが、それ以外の読者に最後まで読んでもらえるか? というところでは疑問です。読めば「パン食べたいな」って思わせるパンが出てくるので、食べ物を描くのは向いていると思うんですけど。それから子供の描き方が、表情もセリフもロボットみたいに見えてしまうところが気になりました。子供のセリフが「全部ひらがな」の読みにくさもあって、よりロボット感が出ているのかもしれません。そう思うと、そもそもこの物語に子供が必要なのか? とまで思ってしまいます。

THE GATE事務局長 むしろ「日本一のパンをつくる」って言ってる青年が一人でパン屋をやってるとか、子供の要素をそぎ落としたほうがいいということでしょうか?

一色まこと う~ん。やっぱりこの主人公だと、彼がお父さんであるという必要性をあまり感じなかったですね。

編集部員・K井 それは、こんな父親はいないというか、やはり設定がちょっとありえない、リアリティがないっていうことなんでしょうか。

一色まこと ありえない訳じゃないと思います。でも、主人公はもう少し練った方がいいかもしれません。

ツジトモ まず魅力的なキャラクターがいて、その人が作ったパンを食べてみたいなとか、レシピが書いてあったら作ってみたいな、とか読者に思わせられないといけないと思います。


第4回THE GATE奨励賞受賞作『おやこうぼ』は、
5/25(木)配信開始の「週刊Dモーニング」26号に掲載!





[漫画] 『あかりとひかり』
小川おがわ小春こはる (兵庫県・25歳)


一色まこと 双子のキャラがかわいいです! すごくかわいい! それは良かったのですが、気になったところも多かったのが残念です。話の肝のところで、お母さんの「うまく怒れないよ……」という心理ネームがあるのですが、気持ちはわかるけど、でもここはちゃんと怒ろうよ? の部分です。そもそも「買ってきたロールケーキ」はどこに行ったのか? 返品しに行ったのか? 捨てたのか? そこをほったらかしにして、次に仲良くお菓子作りのシーンにいくのは違和感がありました。希望を言えば、お母さんには双子を連れて返品しに行ってもらい、そのシーンをちゃんと描くことで、もしかしたらこの作品の「核」みたいなものができたのでは? と。そうすれば他の直すべきところが作者にも見えてきたのではないか? とも思いました。ここを描くのはかなり勇気が必要になりますが、逃げずに描いたら、思いがけなく得るものがありそうな気がします。舞台のこの家が「貧乏」設定なんですが、畑があって、野菜があって、お米も作れて、家族がいて、それって貧乏なのかな? 「現金がない」のなら「うちにはお金がない!」にした方がしっくりきたかもしれません。このお母さんには突っ込みどころが多くて、最後に「良い子育てができた」でまとめられると、ちょと違うように思ってしまいます。表情や感情を描くことができるし、読みやすい画面作りができる方なので、次回作に期待します。

ツジトモ 僕も感想はほとんど一緒で、「親の財布から千円取る」っていうことの重大さ、「子どもが物を盗んだ」っていうことだけは、多分、こういう厳しい環境にある家は、絶対に物を盗んだりした時点で終わってしまうよ? というくらいの厳しい気持ちでないといけないはずなのに、お母さんの主な反応が凹むだけっていうところが、弱くなってしまっているのかな、メンタルも貧しくなっているのかなと引っかかりました。やっぱりこういうお話って、「パワフル母ちゃん」が出てくるのには理由があると思うんです。それはどんな環境にいようと、「心は貧しくなっていないよ」「へこたれていないよ」という姿を子供に見せることが、そこまで描くことが、読者にも希望や元気を与えるからなんじゃないかと。そこで怒れないお母さんを描いてしまうと、多くの読者には「大問題だぞコレ」っていう風に見えちゃうんじゃないか。それが、このお母さんが自分の家や境遇を「貧乏貧乏」って言っているのが、大人がそれだったらまずいだろう、そういう大人を見せたら希望を与えるマンガにならないのでは、と最初から気になったところでした。貧しいことに対する、そこに負けない強さが作品のテーマとしてないと、難しいんじゃないかって。

編集部員・S根 担当です。ご指摘されると、お母さんについてはおっしゃる通りでなるほどと思いました。私はまだ親になったことはないのですが、親という目線で、こういう出来事に直面したときにどう思うんだろう? ということを表現されていて感動してしまいまして、新人賞の応募をお願いしました。しかし、親の役割についてはもっと掘り下げて描けますね。

ツジトモ お母さんが大人として「つらいけど頑張ってる」というけれど、この場面では「もっと大事なことが他にあるでは?」という感想が出てきてしまいました。現実の親と比較しても、「貧乏でつらい」という思いが、自分のことだけになっちゃってない? という。本当に子供のことを考えたら、そんなことなんかに凹んでいられない、それがお母さんのすごいところで、現実のお母さんはそこで闘っている気がするんですよね。それを題材として漫画に落とし込むなら、もう少し考えないと難しいと思ったんです。

編集部員・S根 この作家さんは大学で社会学などを学ばれて、まだ漫画作りは始めたばかりという段階なのですが、題材として家庭のことを描きたいということなので、そういった実際の親のすごさや尊さなども留意するように相談してみます。いつも新人作家さんと、次の題材や連載企画を練る上で題材やジャンルをどう選んだものか、と悩んだりするのですが、どんな風にお考えになっておられたのでしょうか?

一色まこと 私が初めて連載を取ったときは、ダメな原稿やネームを何本か描いた後に、「ここだけはいいね」と担当さんに褒められたのが、子どもの話だったんですね。それで「きっと君は子どもの話を描けるんだよ」みたいな流れになって、子供の話を中心に作ってみて連載デビューをしました。結果は面白くもなく、当然人気もなく(笑)すぐに終わりましたが、でもきっかけになりましたね。この作者さんもやっぱり子どもが描けるのだから、それは武器になので、そこをやってみてもいいのかなと思います。余談ですが「キャラクターって何だ?」って、ずーっと私のなかで謎でした。色んな編集者さんが、手を変え品を変えキャラクターについて話すのだけどピンと来なかった。「あなたはキャラクターが描ける」と褒められてもボンヤリした輪郭しかわからないんですね。でもあるとき、単行本3巻くらい描いたときに、つまり600ページくらい原稿を描いたあたりでストンと落ちて来て、すっかり理解できたんです。私は鈍い方なのかもしれませんが、新人漫画家さんもほとんどはわかっていないと思いますよ。それでも編集者の方に思うのは、諦めずに作家さんに言ってくださいということですね。その意味することはすぐにはわからないかもしれない。でも、いつか必ずわかる。数年後、よその雑誌でやっているときかもしれないけど、「ああ、このことだったのか」とスッカリわかる。漫画家を途中で断念した人は、きっとそこまでいけなかったのかもしれないですね。「キャラクターとはなんぞや?」それがわかったらいきなり楽になるんですが。

ツジトモ 本当にそうだと思います。たしかに、漫画家になっている人、なっていない人の差は、そこにあるとも思いますね。一応、わかっている人が漫画家になっている、と言えるような。漫画を描いていると、結局「キャラクターしかいらないな」と思いますから。


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