モーニングの新・新人賞「第3回THE GATE」、ツジトモ&一色まこと両氏を迎えた最終選考の議事録を公開!

2016/09/15 00:00

THE GATE] [新人賞

モーニングの“超実戦型”新・新人賞、【第3回THE GATE】(最終選考結果発表はこちら!)の最終選考議事録を公開します!



モーニング編集部員全員による2次選考を経て、一色まこと(『ピアノの森』)&ツジトモ(『GIANT KILLING』)両審査員をお迎えし、最終に残った12作の中から各賞を決定した白熱の議論を、ほぼノーカットでお届け!

漫画家志望の方はもちろん、受賞作が気になった読者の方も、ぜひお読みください!


[漫画] 『宝くじが当たったら、母が家を出て行った。』
神波かんなみアユミ (東京都・40歳)

ストーリー

労働を拒絶する息子と、労働を謳歌する親父。二人は6億円の当たりクジと共に姿を消した母を捜す旅に出る。旅の果てに見つけたのは、6億円か、お母さんか、それとももっと大事な何かか?

一色まこと氏より

割とありがちなネタを、これだけ面白く読ませることができるのは、キャラに力があることと、表現できるだけの画力があるからでしょう。憎たらしい息子とその父のキャラクターがいい。ラストに出てくる母も、この家族を成り立たせている器をちゃんと感じるキャラでした。登場人物はこの3人+猫だけ(笑)。残念だったのは、タイトルがネタバレになっているせいで、結構なページ数まで、読んでいる時のワクワク感が薄れてしまったこと。漫画では、読者を笑わせたり泣かせたりドキッとさせるたった1コマのために、それまで何ページも描くことがあります。それがキチンと描けてる方なので少しもったいなかった。

受賞のことば

このような賞を頂けてとても光栄です。ありがとうございました。漫画を描いているときは息抜きに三線さんしんを弾いています。死ぬほどうまいのに誰にもお聞かせできないのが残念です。(神波氏)

担当編集より

物語の佳境で、父と息子それぞれの本音が出てくるシーンが非常に魅力的でした。今後は物語としての新しさ、エンタメ性をさらに高めていけるように頑張りましょう!


THE GATE事務局員・N沢 担当です。神波さんはプロとして、すでに数作品描かれている方です。もともと、エッセイ漫画で、夫の不倫相手に慰謝料を請求する、といったお話を描かれていて、連続ドラマの原案にもなっています。また、他誌でフィクションの漫画が読み切り掲載された経験もあります。モーニングに持ち込みに来られた作品を、少し読みやすくしてもらい、応募していただきました。

THE GATE事務局長 丁寧な絵ですね。まず訊きたいんだけど、神波さんは週刊連載も可能な作家さんかしら?

THE GATE事務局員・N沢 やる気に満ち満ちた方なので、大丈夫だと思います。

THE GATE事務局長 それは頼もしい。一色さんの事前評価だと1位ですね。

一色まこと はい。この作品はとても評価しています。だから、先に一つだけ惜しい点を言います。残念だったのがタイトルです。冒頭部分の内容は、タイトルでわかってしまっているから、ほとんど楽しめなかった。漫画では1コマで読者を笑わせたり、泣かせたりできます。そのために、何ページもかけて前振りをしていたりする。そういう面白さが台無しになっているのは、いかがなものかと思いました。タイトルでインパクトを与えたかったのはわかりますが……。

ツジトモ エッセイ漫画とか、ラノベ的なタイトルですよね。

THE GATE事務局長 キャラクターはどうでしょうか?

一色まこと 父親と息子のどうしようもないキャラクターは、非常に魅力的でしたね。話自体はありきたりかもしれませんが、それを引っかからせることなく読ませるのは、力があるからこそ。お母さんの顔が、最後にやっと出てきたときも、魅力的な表情だと思いました。最後のコマで、家の庭に埋められている「モノ」は、当選金なんですよね? そこは、もう少し明示した方がよかったと思いますが。

THE GATE事務局長 ありがとうございます。ツジトモさんは、いかがでしたか?

ツジトモ この物語の中のお母さんは、普段から頑張って家族を支えていますよね。僕は、お母さんが一人になりたいと言っているのに、その気持ちを尊重しない息子と父親に対して違和感を覚えました。二人は出て行ったお母さんを探しに行っているというよりも、お母さんが持って行ったお金を探している感じですよね。本当にお金持って出て行っちゃえばいいのに、とすら思いました(笑)。6億円がきっかけでドタバタする家族というのを描きたかったんだろうけど、その根っこにある家族愛というのが足りない気がしました。もっとお母さんへの愛を描いたシーンが必要だったんじゃないかなと思います。

THE GATE事務局長 たしかに、お父さんも息子もダメ人間過ぎるので、誰の立場になって読めばいいのかがわかりづらい作品ですね。ただ、モーニングの読者で若い人たちの中には、本当に働いたら負けだと心の底で思っている人もいるかもしれないので、そういう気持ちはすくい取っている気がします。僕もちょっとそんな気持ちもありますし。ははは。編集長はどうですか?

モーニング編集長・宍倉 僕は、この主人公は決して好きじゃないけど、面白く読めました。ツジトモさんと同じで、主人公の価値観はわからなかったけど、少しずつ、お父さんの価値観を理解していく過程が良かったです。無理やり理解するんじゃなく、胸におさまるようにわかっていく過程は上手く描けていると思いました。また、お母さんのキャラクターも、笑顔だけど、ちょっと怖いですよね。そういう人だからこそ、このダメな家族を支えられたんだろうなと理解しました。

THE GATE事務局長 ツジトモさん、逆に、いいところはありましたか?

ツジトモ テンポがいいですよね。オチのつけ方も軽やかです。最後のページなんかは、終わり方としては結構好きですね。

THE GATE事務局長 神波さんは、先日の連載コンペにも100ページのネームを提出してくれていて、そのときも、やっぱりダメな男女が主人公だったんですよね。だから、彼女はそういう、どうしようもない人間の姿を描きたいのかもしれない。だからこそ、最後には救いを用意してほしいですね。


第3回THE GATE一色まこと賞受賞作『宝くじが当たったら、母が家を出て行った。』は、
9月21日(水)発売&配信開始の「モーニング」&「週刊Dモーニング」43号に掲載!





[漫画] 『RUNNER! 鈴原ユキトのRUN…』
紺乃こんのユウキ (東京都・38歳)

ストーリー

35歳サラリーマン・鈴原ユキトは健康診断で医師から「この生活を続けると10年以内に死ぬ」と告げられる。体質改善のため走り始めるも、日々の生活には誘惑が……。前途多難な市民ランナー物語!

ツジトモ氏より

この作品を読むと、走りたくなってきます! こういった作品は、読んだ人が走りたくなったら成功だと思うんです。個人的には、飲み屋のシーンの賑やかな絵が、すごく好きでした。重要なシーンではないですが、登場人物が生きている感じが伝わってきます。ただ、登場人物のセリフに違和感を覚えたところが少なからずありました。もう少しキャラクターに寄り添ってストーリー作りができれば、よりよくなったのではと思います。

受賞のことば

ありがとうございます! 素晴らしい賞が頂けて大変感謝しております。今後も皆様のお目にかかれることを目標に精進していきたく思っております。ヨロシクお願いいたします。(紺乃氏)

担当編集より

「おいしそう」とか「痛そう」とか、身体感覚を絵で呼び起こすのはとても重要だと思います。本作品は読むと思わず走りたくなってしまうほど、「走る気持ちよさ」を丁寧に描いています。作者の描写力に感嘆しました。


編集部員・K田 紺乃さんは主に青年誌で7回くらい掲載歴があって、アシスタントもかなり長くやっているみたいです。この話は主人公が地味なんですけど、細部にまでこだわって描いているおかげで、グイグイと引きつけられました。二次選考のときに希望して担当につかせていただきました。

ツジトモ 今回の中で一番気持ちよく読めた作品でした。主人公が会社の同僚たちと飲み屋でお酒を飲んでいるシーンが好きです。細部までちゃんと描き込んでいるんですよね。画面にすごく活気があって登場人物がちゃんと生きているな、と思いました。ただ、登場人物のセリフはもうちょっと良い言葉があったんじゃないかとも思いました。あと、この手の漫画って読者に読ませて何をさせたいかっていうメッセージがあると思うんですけど…この漫画の場合「走らせたい」ですよね。ちゃんと僕は走りたくなりました。落ち込んでる人が「走ったら元気になるかも」と思わせる力があったので、これが一番よかったです。

THE GATE事務局長 一色さんも高評価です。いかがですか?

一色まこと 正直に言うと、私はあんまりこの作品に引っかかりを感じなかったんです。上手くまとめてありますが、ラストのナレーションはピンとこなかったり。ただ、嫌な感じは一切なく、絵も安定していて漫画が全体的に上手い方だと思いました。

THE GATE事務局長 画力に関してはいかがでしたか?

ツジトモ すごく上手いと思いますよ。ただ、走るフォームとかをもうちょっと頑張って描いてみると、もっと良くなったと思いました。

一色まこと 見開きとかもすごく上手いですよね。

THE GATE事務局長 僕は以前、少年誌の編集をしていたからか、紺乃さんの絵で目が白くなっているのがすごく気になったんです。記号っぽい目を描かれるとちょっと嫌なんですよ。もっと表情を出してほしいという意味で。

ツジトモ えー!? 「目が命」みたいな話ですか?

一色まこと なんか自分の絵がすごく不安になってきました(笑)。

THE GATE事務局長 一次選考、二次選考と何度もこの作品を読んでいるんですけど、実は一次選考で通るかどうかもギリギリだったんですよ。でも、この漫画は何回読んでも気持ちいいんですよね。他の漫画は何度も読むと、逆に粗の方が目立ってくるんですけど。女の子が可愛いからなんですかね?

ツジトモ 僕はこの女の子に違和感がありました。この子、不登校にならないですよ。だって強いから。そういう部分で主人公も女の子も、動機の部分にリアリティがないので、それがあったらもうちょっと物語の締まりもよくなったと思います。編集長はどうでしたか?

モーニング編集長・宍倉 「また冴えない男の話かぁ」と思いました。新人作家の方が描かれる漫画って、こういう主人公が多いんですよ。主人公にはキラキラしていてほしいと思っているので、最初はあんまり期待しないで読みました。でも読んでいくとスラスラと読めて、走る理由も後ろの方に出てきたので、そのあたりはちゃんと考えて作られていてよかったと思います。

一色まこと 描きたいことはちゃんと描けているんですけど、見せ方やアピールが弱いのかもしれないですね。

ツジトモ 結構キャリアがあって読み切りを多く描かれている人って、まとめ上手になる人が多い気がします。そういう人たちの中でも、この人は描けそうな人だと思いますけどね。

THE GATE事務局長 紺乃さんがスポーツもので連載を目指すのは向いてそうですか?

ツジトモ スポーツじゃなくても、登場人物がにぎやかな漫画とかいいと思います。


第3回THE GATEツジトモ賞受賞作『RUNNER! 鈴原ユキトのRUN…』は、
10月6日(木)発売&配信開始の「モーニング」&「週刊Dモーニング」45号に掲載!





[漫画] 『YOUR BOOK』
好村よしむら美咲みさき (東京都・24歳)

ストーリー

環境汚染により人類滅亡が迫る西暦2200年。天才的な頭脳で、人類救済のため新薬の研究をしている兄は、弟を研究所に呼び出す。そこにいた、楽しそうに遊ぶ子供たちは皆、兄のクローンだった——。

一色まこと氏より

アイディアやスケールは今回の中では頭一つ出ていたように思います。次の展開が読めない面白さが最後まであった。天才&ヒールの兄のキャラが秀逸で、独特かつ奥行きのある世界観も光っていた。気になったのは弟のキャラのブレ……というより弱さ。「何かが間違っているぞ」と読者を代弁できる存在、感情移入できる存在だっただけにもったいなかった。天才だが非道の兄に「NO」と突き付ける気持ちよさを一緒に味わうところまで行けたら、もっと読後感の良さにつながったかもしれません。

ツジトモ氏より

天才というキャラクターや、作品が持つ世界観など、挑戦的な作風でしたが、内容もわかりやすくスッと入ってきました。発想もストーリーもいいし、作家性を強く感じます。ただ、天才的な兄というキャラクターは愛情を持って描かれているのに、弟の方はキャラクターの掘り下げがもう一歩という感じがします。また、読んでいて明るくなれる話ではないのが、少し残念ではあります。作者は、壮大なテーマを持って描ける方のように感じたので、今後が非常に楽しみです!

THE GATE事務局長より

こんなにも人生はつらく、世界は汚れているのに人はなぜ生きなければいけないのか? 誰もがいつか直面するテーマを見事にエンターテインメントにした。成功の要因は天才の兄とヒロインのキャラクターだ。好村さんは、今回の応募の中で最も「ヒーロー」を描こうとした。だから大賞です。おめでとう。ありがとう。絵が少し記号的です。90ページ読ませ、単行本を買ってもらうために、もっと美しさといかがわしさと個性を。心が壊れているのは兄なのか、弟なのか、そして人はなぜ……。第3回大賞『YOUR BOOK』。これは今この文章を読んでいる、まさにあなたのための物語。ぜひご一読を。

受賞のことば

ここのコメントを書く妄想を100回くらいしました。こんなに立派な賞を頂けてとてもうれしいです! 慢心せずに次につながるように励みます!(好村氏)

担当編集より

「天才がいる!」と編集部でさんざん僕が騒いでいたので、大賞を取ってくれてホッとしました。それはさておき、この巨大な才能にふさわしい第一歩が刻めたことをうれしく思います。「好村美咲」、この名前は覚えておいて損はないです。


編集部員・H野 好村さんは24歳で、大学院に通いながらアシスタントをしています。5月のコミティアの出張編集部にこの作品を持ち込んでくださって、その場で担当になりました。今回の賞にはちょっとだけ加筆してもらったものを応募してもらいました。

THE GATE事務局長 担当から見た、好村さんの長所はどこですか?

編集部員・H野 話のスケールが大きいところですね。あと、僕が今まで見てきた新人さんの作品で一番感動してしまって……。マンガの編集という仕事をしているので、普段から物語が何のためにあるのかについてよく考えるんですが、この作品に出てくる「物語の登場人物は作者の意図を超えていいんだ」というセリフに、強いメッセージを感じました。オリジナル作品を描いたのはこれが初めてなのですが、24歳でこれだけ描けたら将来有望だと思います。

THE GATE事務局長 画力について、一色さん、ツジトモさん、いかがでしょう?

一色まこと 登場人物の感情が読み手に伝わってくるので、上手いと思います。24歳というのは、多分私が最初に漫画を描いた年なんだけど、皆さん私よりはるかに上手いです(笑)。

ツジトモ 兄弟に関しては意図的に「記号的」に描いているなと思いました。クローンの女の子は柔らかい線で描いて、わざと差を出しているのかな……。

THE GATE事務局長 それは、今言われて気が付きました。普通の人間のほうは記号的に描いて、人造人間のほうはあえて繊細に描くよう意識しているんですかね。

ツジトモ でも、すべて統一されているのかというと、そうとも限らない。ただ、「描けるか、描けないか」でいうと、この人は圧倒的に「描ける人」だと思います。特に、ヒキの温室の絵はすごいですよ。世界観がきちんとあって。

THE GATE事務局長 ツジトモさんの総評はいかがですか?

ツジトモ わりとすんなり読めて、伝えたいこともわかりました。すごく難しい作品に挑戦したなと思うし、言い回しとかも含め、ちゃんと自分の考えを持っている人だなと思います。ただ、弟の扱いに愛がない。作品は、冷徹で好奇心旺盛な、研究者のお兄さんの目線で作られていますね。また、お兄さん自身も「刺激」を求めている、という人物像はわかるんです。でも、弟のほうは空っぽで、面白みが感じられないです……。最後、こういう状況にならないと動けないのか、と。話としてはまとまっているとは思いますが、お兄さんに新たな発見を与えたり、少女を救ったり、どこかで弟が予想外の動きをしたら、読んでいて気持ちがよかったんだろうなと思いました。記号的に描かれた絵も、あんまり好きじゃないですね。せっかく絵が描ける人なので、全体を丁寧なタッチで見たかったなと思いました。

THE GATE事務局長 編集部全体の評価もこの作品が一位でした。編集者は、天才キャラを描いてくれる作家さんがとても好きなんです。でも天才を描くのは難しすぎて、みなさん描くのを嫌がるんです。だけど、好村さんはそれにチャレンジして、違和感のない天才キャラを生み出した。その上、最後にはその天才が出し抜かれるという気持ちよさまで描いてくれました。さらに「人間とは何か」という壮大なテーマを自身の中に持っているように感じられて、将来の大器だなと思いました。90ページは長すぎますけど、応援したくなりましたね。手を抜いている絵とそうでない絵の差が激しいので、そこはすべて渾身の力で描いてほしいですね。

一色まこと 発想もいいし、ストーリーをこれだけ作れるのは、作家としての才能を感じました。ただ、あんまり気持ちがいい作品ではなかったですね。「この世の中、優しいだけじゃ生き残れないんだ」ってことを見せつけるようなクールな天才の兄と、優しく育った天才の弟という対立だったら読み味が変わっていたと思います。アイディアとかストーリーを作る力とかはすごいある人なんだから、弟のあり方をもうちょっと真面目に考えてあげたらなと思いました。たとえば、クローンたちの寿命が3年しかないということに対して、弟はもっと嫌な気持ちを抱いたり、重く受け止めてほしかった。兄のやっていることはすごいかもしれないけど、何かが違っていると自分で気づいてくれたほうが、最後に結び付けやすい。読者の感じる違和感、不快感を弟が代弁してくれていたら、読んでいても気持ちがよかったのかなと。

ツジトモ 弟には読者目線でいてほしかったですね。天才の兄を持つ弟は、世の中にはいっぱいいると思います。そんな弟が、みんなこんななのかというと、そうではないですよね。この話は「世紀末的シチュエーションだから、こんな弟が生まれてしまった」と言うしかないというのが、ちょっと無理があるような気がするんです。

編集部員・T渕 僕の評価では、今回はこれが一位。弟のキャラは最大の欠点ですが、多分作者は、この弟のような人間を描くことに興味が無いんでしょう。きっと、これからもお兄さんのようなキャラを描き続けると思うんです。天才キャラの精度を増していけば、周りの欠点は直ってくるのではないかと思います。今作は、一見器用にまとめられているように見えるけど、実はお兄さんのキャラで一点突破している。それって、逆にすごいなと思いました。


第3回THE GATE大賞受賞作『YOUR BOOK』は、
9月15日(木)発売&配信開始の「モーニング」&「週刊Dモーニング」42号に掲載!





[漫画] 『ウミウサギ』
川島かわしま徹也てつや (栃木県・20歳)

ストーリー

大学生の真穂は、大好きだった祖父の葬式で涙が出なかったことにショックを受けていた。ところが、そんな彼女の前に死んだはずの祖父が現れて……。

モーニング・ツー チーフ・寺山より

セリフ運びやシーンの作り方が、とても上手です。18ページという短いページ数で、祖父の死から生命の尊さを知った主人公の心情が、よく表現できていました。絵も丁寧に描かれていて読みやすいです。ただ、主に主人公の線の引き方が、全体的に単調なのが気になりました。もっと絵に感情を乗せられるようになると、一層読者の心に響く作品が描けるようになると思います。

受賞のことば

今回の受賞大変うれしく思います。今まで支えてくださった方々に感謝します。今後も自分の表現したいものを作品にしていければ幸せです。(川島氏)

担当編集より

独特の雰囲気と絵柄で、読み進めていくうちに静かに心に染み入ってくるようなすばらしい作品です。その特性を大事にしつつ、いろいろな方向性の作品をどんどん描いていっていただきたいです。


THE GATE事務局員・F島 私が担当です。川島さんは昨年のちばてつや賞に応募されて、二次選考で落選したんですが、そこで担当につかせていただきました。独特の絵と雰囲気が持ち味の方です。

一色まこと 表現力が高いですね。絵も上手いけど、特にエピソードがないのに、おじいちゃんを大好きだったことが伝わってくるんです。おじいちゃんと主人公が見つめ合ったり、感情をさらけ出して話すシーンもない。だけど、詩的な雰囲気で読ませてしまうセンスがあります。

ツジトモ 会話のテンポや、間の取り方がいいですね。最後まで詰まらずにすんなり読める。それでいて、僕だったら省いてしまうようなコマをあえて残しておくことで、セリフのあとに余韻ができていますね。お父さんのセリフが、短いのにキャラクターをよく表していてよかったですね。

THE GATE事務局長 ありがとうございます。では、この作品の、「ここはこうしたらもっと良くなる!」という部分はありますか?

一色まこと 「泣いちゃだめだ」って主人公が涙をこらえようとするところで終わりなんですが、私の好みで言うと思いっきり泣かせてあげても良かった。登場人物に感情を我慢させることで、読者もどこかすっきりできないものを抱えたまま読み終えることになりかねない。「泣いちゃだめだ」という気持ちはそのままに、それでも感情があふれ出してしまう、というシーンで終わるのもいいのではと思いました。

ツジトモ 全体的に無駄なくコンパクトに仕上がっているのはいいのですが、おじいさんの孫への思いをもっと掘り下げてもよかったかなとも思います。特におじいさんがなぜこの世に残っていたのか、主人公に自分が死んだことを実感させるためだったのか、それとも気が付いたら残っていたのか、そこがはっきりしていないとおじいさんの意図があいまいになってしまうと思います。

THE GATE事務局員・T本 最近、感情をセリフや表情などではっきり表さずに、雰囲気で表現しようとする作品が多い気がするんです。特に若い方の作品に多い気がします。個人的には、一色さんのご指摘にもありましたが、どこかひとつは読者の心を強く揺さぶるシーンがあったほうが、もっと多くの読者に受け入れられる気がするのですが、どう思われますか?

ツジトモ このお話のテーマとこの淡々とした表現方法は合っている気がするし、このお話にそういう見せ場を加えたらよくなるかどうかは、読む人によって意見が分かれるところだと思います。ただ、今後作品を作っていくうえで、作者の絵柄や雰囲気からあえて遠いところにありそうな題材を選んでみるのもひとつの方法ですね。例えばスポーツみたいな勝負の世界とか。思わぬ化学反応が起きて、今までにない作品が生まれるかもしれません。今後もいろいろな作品をどんどん作っていってほしいです。


第3回THE GATE編集部賞受賞作『ウミウサギ』は、
9月21日(水)発売の月刊「モーニング・ツー」11号および
9月21日(水)配信の「週刊Dモーニング」43号に掲載!





[漫画] 『見えない月』
元鞘もとさや (東京都・23歳)

※鞘は「革」に「肖」

編集部員・H野 担当です。このお話は作者の妊娠と出産の経験を元に作られています。打ち合わせのときから、すでにお腹は大きい状態で、途中でお子さんの出産もされています。

THE GATE事務局長 実話をベースにしているとなると、元鞘さんが今後も面白い話が描けるのかどうか少し心配になります。彼女の経験などで、面白そうな話は他にもありそうなの?

編集部員・H野 旦那さんがかなりユニークな経歴とキャラクターなので、彼をモデルにした話を考えてもらっています。

THE GATE事務局長 編集部内だと画力面での評価が高かったです。背景をこれだけ丁寧に描いてもらえると、とても好感を持ってしまいますね。ツジトモさん、いかがでしょうか?

ツジトモ 妊娠と出産っていうのは社会的なテーマでもありますよね。ただ、それにしても話が重すぎる。主人公が重い気持ちになったとしても、作品全体を重くしないように工夫できたんじゃないでしょうか。あと、絵も、もっと明るく、可愛く描ける方だと思います。救われた後のことをもっと描くべきだと思いました。

一色まこと 実際のモデルがいるとなると言いづらいですが、ストレートに言うと冴えない男女が上手く描けていると思いました(笑)。産むことに前向きになっていく過程がもっとわかりやすかったら、よりよかった。例えば、最後に主人公を救うことになる職場の人のセリフに、私は含みがあるように思えて引っかかりました。あと、旦那さんがすごく他人事な態度なのは、とてもムカつきましたね。彼の態度に変化があればよかったんだけど、最後まで第三者の立場という感じでした。

編集部員・T渕 個人的には読んでいて、すごく救われた気がしました。男性が女性を気遣っているつもりでも、女性にはこういう風に見えているんだなという風に解釈しました。だから自分も奥さんにあんなに怒られたんだなって(笑)。

ツジトモ 旦那さんは、もっと天然なキャラクターだったりしたら、わからなくもないんですが、無神経を通り越して、わざとやっているんじゃないかって感じすらしますよね。

一色まこと 書き手が力不足なだけで、モデルの旦那さんは、もっと自然体で魅力的なんでしょうね。

THE GATE事務局長 審査員のお二人の話を聞いている限りだと、次回作で旦那さんをモデルにするのは、やめたほうがいいですかね?

一色まこと そんなことないですよ。逆に、独特な旦那さんの魅力を表現できたら面白いと思うので、挑戦してほしいです。心理描写や作品の運び方は上手い方ですから、できれば次は、もっと明るい雰囲気で描けたらいいですね。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『見えない月』は、
10月6日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」45号に掲載予定!





[漫画] 『好きなひと』
犬印いぬじるし日好ひより (群馬県・21歳)


編集部員・T岡 私が担当です。3月期のモーニングゼロで初めて漫画を描いて、期待賞を受賞しました。犬印さんは21歳で大学生です。背景などの描写はまだまだ拙いですが、人物の目力や、ふとした時の表情は目を引くものがあります。

一色まこと 掲載するのはちょっとまだ早いのかなと思うんですが、私は好きな作品でした。大胆なコマ割りや、画面を止める力があるので、もう少し漫画の描き方が慣れれば、読者に受け入れられると思います。私はこれを、“少女の性の目覚め”の漫画だと勝手に解釈して面白く読んだのですが、違っていたらごめんなさい(笑)。空想の彼氏と現実の彼氏との間を行ったり来たりする話はよくあるんだけど、実際に生身の異性に触れることで、少女が性に目覚めるというストーリーは、女の子の複雑な内面をうまく表現しているように思いました。最後、「うち寄ってく?」っていうコマは、誘ってるよな~って(笑)。空想の彼氏と安全に恋をしていたのに、リアルな肌に触れることによって、ビビッと電流が通じるというか……言葉で説明できないところを描こうとしているのかなと。少女の感性がよく出ていて、いいなぁと思いました。

ツジトモ 一色さん、絶賛ですね。僕は全然わかんなかったです(笑)。そういう話だったのか~……。現実の彼氏の魅力っていうのが、全然わからなかった。何で、急に現実的になったんだろうって。

THE GATE事務局員・T本 僕もです。現実を知って、妥協したのかなと解釈していました。

ツジトモ おそらく、そういう話ではないんでしょうね(笑)。一色さんの話を聞いて、なるほどなと思いました。

一色まこと キスの後に現実の彼氏を突き飛ばしたのはビックリしてしまっただけで、きっとこのときに「スイッチ」が入ったのかもしれない。

ツジトモ なるほど!

一色まこと 理想として作り上げていた彼氏と顔が一緒で、性格もよければ、手汗とか変なネックレスとか許せちゃう。ここが許せるならもう恋ですよね。絵はこれからですけど、今までの漫画家さんと違った、新しいことができそうな感じがしました。彼女は、感情を切り取って、それを見せる力がありますね。たとえば「あ」っていうセリフの吹き出しがかぶっているところとか、その次の3カットとか、上手いなあと思います。先が楽しみな作家さんですね。

ツジトモ どこかに性を感じさせるコマとかがあったら、男でもわかりやすいのかなと思います。

THE GATE事務局長 この漫画は読むたびに印象が上がってきました。最初は目の下のクマがすごくて三白眼で、ヘンな女の子の話なのかなと思ったんですよね。

ツジトモ 僕も、目の下のクマはジャンキーっぽいからやめたほうがいいと思いました(笑)。

一色まこと 私は、「チューしよう」ってセリフはちょっと、ダサイと思いましたね(笑)。でも、空想の世界の彼氏もこのセリフを言ってしまうくらい、現実の彼氏の存在が大きくなってくる。これって、理想の世界からの「卒業」なんでしょうね。ただ、わかりにくいところもいっぱいあるんです。「ちゃんと私の好きなほうだ」ってセリフを言わせるにしても、もっと読者を納得させられる要素が必要ですよね。人にわからせる、という意識がまだ弱いんだと思います。でも、他の作品にはない「色気」があっていいなと思いました。

ツジトモ 技術とかじゃないんですよ。一色さんにここまで言わせるポテンシャルがあるってことが、すごいですからね。

一色まこと もしかしたら、編集者が教えられない大事なものを持っている気がするんですよ。後に大化けすることを期待しています。

THE GATE事務局長 男性の目線も取り入れることができれば、最強の作家になれる可能性もありますね。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『好きなひと』は、
10月6日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」45号に掲載予定!





[漫画] 『モノノケソウルフード』
神崎かんざきタタミ (大阪府・26歳)


THE GATE事務局員・F島 神崎さんは、コミティアの出張編集部で持ち込みを受け、担当につかせていただきました。そのとき持ち込んでいただいた作品に少し加筆していただき、応募してもらいました。

一色まこと 絵が丁寧だし、きれいに描けているのがいいですね。食べ物も、とてもおいしそうに描けています。ただ、この内容ならもう少し短いページ数でまとめられると思います。あと、「おお!」と心が動かされて、手が止まるシーンがもっとほしかったです。バンドと食べ物と、人付き合いが苦手な主人公という作品のテーマを描くのに精一杯で、まだキャラクターの心情を十分に表現できていないのかもしれません。

ツジトモ 食べ物がおいしそうというのは僕も同意見です。肉もそうですが、個人的にはタレの描き方が絶妙だと思いました。とはいえ、若者がバンドをする、ということが中心なのか、美味しいものを食べるということが中心なのか、どっちつかずになっている気がしてもったいないですね。若者がバンドを真剣にやっているというのが主題なら、もっと本気度がわかる描写が欲しかったです。

THE GATE事務局長 バンドをやるなら本気でやれ、と。

THE GATE事務局員・T本 でも、逆に演奏シーンを排除して、たとえばライブの後の打ち上げのご飯をとことん楽しむっていう漫画もアリかもしれないですよね。

ツジトモ もちろん食べ物重視だっていいんですよ。たとえば大人で仕事もしている人たちが、バンドを趣味でやりつつ、おいしいものを求めて街をゆく、みたいな作品でもいいなと思います。それはそれで人生を謳歌しているキャラクターたちを見てみたいな、っていう気がするんですよ。でも、この作品のキャラクターたちは見たところ若者たちですよね。最後の演奏シーンこそきちんとしていますが、それ以外のシーンでは彼らの音楽に対する向き合い方に真剣さが伝わってこない。そうすると、なんだか彼らが食べているご飯にも興味が薄れてきてしまうんです。ご飯の描き方が上手い分、やっぱりそのへんは惜しかったなあ、と思いました。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『モノノケソウルフード』は、
10月13日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」46号に掲載予定!





[漫画] 『Dance』
ふじ庸太郎ようたろう (島根県・22歳)


THE GATE事務局員・N沢 担当です。藤さんは、現在、理系の大学生です。新人賞への応募は初めてですね。鉛筆で描いたものをスキャンして、デジタルで少しトーンを入れています。なので、漫画の基本みたいなものには、まだあまり馴染んでいないようです。

THE GATE事務局長 次の作品はもう描いているんですか?

THE GATE事務局員・N沢 連絡を取った時点で、すでに短編を描かれていました。それは月例賞のモーニングゼロの方に出しています。描かれている世界観は今回のものに通ずる感じです。

THE GATE事務局長 読者との接点になるキャラクターを置ければ、急に化ける気もしますね。ツジトモさん、どうですか?

ツジトモ 上手いんだけど、真新しさはないです。描ける人になるとは思うけど、まだ憧れを描いている感じだから、そこから脱しないといけないでしょうね。自分の型はこれから見えてくると思います。まだ若いし、一回ちょっと厳しい評価を受けたほうが、モチベーションを高める意味でいいと思います。

一色まこと ダンスシーンをもっと丁寧に、見せ場でバーンと大きく描いてもよかった気がします。あと、1エピソード足りないと思う。足を修理しているシーンとかをもっと踏み込んで描けば、主人公とロボット、二人の関係性が見えてくるかもしれない。

モーニング編集長・宍倉 僕は結構推していたんですが、再読したら少し点数が下がりました……。非常に観念的な話なので、心を動かされづらいですね。

THE GATE事務局長 作家の個性って、学園モノとか、恋愛とかスポーツとか、スタンダードなものを描かせたほうが出ると思います。そこから、感情とか人間の描き方を練習、理解してくれるかもしれないですしね。藤さんは将来が楽しみです。

モーニング・ツー チーフ・寺山 僕は、才能評価で高得点をつけました。漫画としてはまだまだですが、絵を描きたくて、ところどころ思いきったことをしているのは好印象ですね。次の作品ではもっと伸びてくる気がします。

THE GATE事務局長 ギャグなんかも入れてほしいと思っちゃいますね。描くのが苦手でもこういう世界に入れてあげたほうが面白くなるはず。

モーニング・ツー チーフ・寺山 苦手なものをあえて描くのもアリだと思います。描いていて、楽しいことが前提ですが。

一色まこと 『桃太郎』とか、昔話を原作にかっこよく描いてもらうとかもいいですね。

ツジトモ 『金太郎』にしたらどうだろう(笑)。それでもクールにしようとするとか、彼なりの反骨心を見せて欲しいです。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『Dance』は、
10月13日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」46号に掲載予定!





[漫画] 『おとろし』
なだ優貴ゆうき (東京都・23歳)


編集部員・H野 担当です。灘さんは23歳の男性で、アシスタントをしています。映画が好きで、『椿三十郎』と『プレデター』を組み合わせてこの作品を作りました。すごく頑張り屋さんで、ネームもたくさん持ってきてくれるので、これからの作品作りに生きるアドバイスをいただけるとうれしいです。

一色まこと 見せ方がまだまだって感じですね。最初のコマ割りからわかりにくい。トラの登場が予想外だったので、そこはいいなと思いました。あとは、誰の絵も真似していないような雰囲気もいいかなと。主人公も顔つきとか、キャラ的にはいいと思いました。人柱の娘を助けるというストーリーはゲームとか映画とかでよくあるので新鮮味はないんだけど、助っ人の千代丸が加わったので何か起きるのかも! と期待したんですよ。でも、悪い意味で裏切られ、読後感もイマイチ。人手が足りないと言ってるのに、娘をまた無意味な生贄にする、知恵者のいない村の感じとか、千代丸は無駄死にとか、残念でしたね。ラストも。たとえばですけど、主人公は村を去ったかと思いきや、生贄の娘をさらって逃げたりとか、実は千代丸が生きていたとかがあればよかったのに。この作品に限らず、今回はラストが残念な作品が多かったように感じます。

THE GATE事務局長 個性を出そうと工夫しすぎて、バッドエンドやサッドエンドにしがちな新人漫画家さんは多いです。ぜひお二人には、あくまでハッピーエンドを模索するのが漫画家だと伝えてほしいですね。

一色まこと 大抵は読後感のよさを目指していて、ハッピーエンドですからね。ありきたりになることを恐れてしまうんでしょうかね。

ツジトモ そうしてしまう気持ちはわかりますよ。王道の話を描いたときに、最後ズラす、みたいな……。自分の個性をわかっていない分、あがき方、工夫の仕方を間違えてしまうんでしょう。プロとして、読者の期待に沿うとか、キャラクターが完全にでき上がっていて、その通り動いた結果そうなるとかだったらいいんですけどね。

THE GATE事務局長 ツジトモさんが、読者の期待に沿うのが漫画家だという感覚が身についたのはいつごろですか?

ツジトモ 基本、裏切るのは楽しいんですよ。だけど、自分が好きで読んでいる漫画がどうなのかと考えてみると、最後は、望んだ結末になる。それはきっと、ハッピーエンドだったはずです。思っていた通りにストーリーが進んだときの気持ちよさって、確かにあるんです。だけど、それを忘れてしまって、裏切られたときの驚きのほうが印象に残っているんでしょうね。

THE GATE事務局長 読者の予想は裏切るけど、期待は裏切らない。それを早い段階で気づかせてあげられると、伸びますよね。ツジトモさんは、この『おとろし』はいかがですか?

ツジトモ 灘さんは、映画みたいな漫画がやりたいんだなと思いました。たとえば、21Pの2コマ目、3人で出ていくシーンがあるじゃないですか。これをこう描きたい気持ちはわかりますが、このコマは正直あまり効果的ではありません。映画で好きなシーンを漫画で描きたいなら、コマ割りを考えないといけないですね。まずは、自分が見てきた映画じゃなくて、読んできた漫画が、どうコマを割っていたかを学んでほしい。どうやったら、映画でかっこいいシーンや、静かなシーンを、漫画でうまく表現できるのかを考えるのがコマ割りなんです。だけど、彼はそれを映画のままやってるんですよね。馬を走らせるシーンも、止まっている絵が並ぶだけになってしまう。これは、工夫をしなくちゃいけませんね。漫画って、1ページごとに大きいコマがあるんですけど、それにはきちんと意味がある。それが、作品に緩急を生むんです。でも、『おとろし』においては1ページの中の一番大事なコマはどれ? と聞かれても、言えないんですよ。映画にもリズムがあるように、漫画にもリズムがあります。その違いを理解して、漫画的な発想を身につけてほしいですね。

THE GATE事務局長 一色さんから見て、彼のいいところはどこでしょうか?

一色まこと 人の真似してないところでしょうか。あと、トラ。

ツジトモ トラは上手かったですね(笑)。

一色まこと 『椿三十郎』と『プレデター』を組み合わせて作ったっていうのを知らなかったので、ここでトラを出すのは面白いなと思いました。ただ、どうでもいいことなんですけど、トラに襲われた人の遺体が結構食い残されていて、トラはこれじゃお腹いっぱいにならないんじゃないの? とか。あと、トラがすごい大きいんだけど、一太刀で切れちゃうってどんなすごい刀なのよ、とか気になってしまった。

ツジトモ 一色さんの「人の真似をしていないところがいい」って考えとは違うかもしれないけど、僕はいろいろなものを、たくさん真似て吸収したらいいのかなと思ってます。

THE GATE事務局長 僕が少年漫画誌の編集部に在籍時代、たまに新人作家さんに、ネームの模写をしてもらいました。『はじめの一歩』みたいなコマ割りのお手本になるような作品を、構図やセリフの置き場所だけの模写をしてもらうんです。そうすると、人物配置やセリフのバランス、コマの大小とかが身につくんですよ。人によっては、急激にコマ割りが上手くなったりすることがあります。

一色まこと それは面白い練習法ですね。そんなこともあるんですね。

ツジトモ ともあれ、彼には根性は感じましたね。作り込む、描き込むエネルギーはすごいんだけど、それよりも別のところで頭を使ってみてほしい。たとえば、葉っぱ一枚一枚を描いてるけど、逆に見づらくなることに気付くとか、一歩引いて自分の作品を客観的に見られるようになるといいですね。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『おとろし』は、
10月20日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」47号に掲載予定!





[漫画] 『ラブは裏切る、ラブソングは裏切らない』
だんネムル (三重県・24歳)


一色まこと バンドファンの心理として、片思いや勘違いをしてドキドキしたりするのが楽しみとしてあると思うんですけど、この主人公にとってそれは苦い経験になっていて、それが最後まで読んでもそのままで成長していないのが気になりました。これから先、彼女が少しでも変わっていくように描かれていればもっとよくなると思います。途中で吉田という男が出てくるんですけど、このキャラと主人公のやりとりをもっと面白くできると思うし、ここで何かが起きないと、吉田が出てきた意味がないんですよね。主人公の進展が描かれなかったのは残念でした。また、タイトルどおりラブが裏切っているところもしっかり見たかったです。

ツジトモ 主人公と話が弾むキャラが出てくるまでがちょっと長いかな、という気がしました。ここから話が転がっていくところなのでもうちょっと早く出てきて欲しかったです。あと、なぜ主人公のマイナス面ばかり描くのか気になりましたね。もっと可愛く描いてもよかったんじゃないかと思います。

THE GATE事務局長 おそらくマイナス面を描いている意識はないんだと思います。こういう人が好きなんじゃないでしょうか。人の弱さ、繊細さ、というか。

THE GATE事務局員・T本 キャラクター掘り下げの意識がまだまだ足りないのは、服装にも表れていると思いました。働いている時と私服が同じ格好なところとか。もっとキャラクターに対して想像すると、キャラ自身が動いてくる気がします。

ツジトモ なるほど、そういうことかもしれませんね。それにしても、イマドキのバンドマンはカッコイイ。こういうイマドキ感は出ていてオシャレですよね。もっとオシャレに突き抜けてしまってもいいのかもしれません。漫画なので、もっと作者の理想を出してほしいです。編集部の意見はどうでしたか?

THE GATE事務局長 お二人がおっしゃったような意見ももちろんありましたが、絵も丁寧だし、主人公が最後にポジティブになれていたのでそこは評価しています。暗い方向だけになっていなかったのもよかったので最終選考に残りました。担当に聞いたら、次回作は泥くさい家族ものを描いてみたいとおっしゃっているようです。この作品とは違った方向なので、楽しみにしています。

ツジトモ それは楽しみですね。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『ラブは裏切る、ラブソングは裏切らない』は、
10月13日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」46号に掲載予定!





[漫画] 『理想のダーリン』
卍福まんぷくぽんた (大阪府・30歳)


THE GATE事務局長 落書きで描いた男性が現実に出てくるギャグ漫画です。病欠の担当いわく、卍福さんは今後もギャグ漫画を描いていきたいとのこと。編集部でもギャグ漫画だし面白いということで、熱烈に推してくれた人たちもいたので最終選考に残りました。

ツジトモ ギャグ漫画って、理屈じゃなくて好き嫌いで決まるので難しいところではあると思うんです。編集部に好きな人がいると聞いて、僕にはこの漫画が刺さらなかっただけだったんだと気がつきました。

THE GATE事務局員・T本 ギャグ漫画はノリが合うか合わないかで分かれる部分がありますよね。

THE GATE事務局長 僕は最後にヒロインの女の子も落書きになってしまうところを見て笑ってしまいました。

一色まこと とにかく最後まで意外性の連続で、楽しんで読めました。けれど、この作品だとモーニングではなくて、狙う年齢層がもっと下でもいいのかもしれません。青年誌としてはそんなに高い点数になっていないだけで、これが好きな読者は多いように思います。キャラクターも上手いしセリフもいいし、意外性が盛りだくさんで、こんな漫画私には絶対描けないですよ。こういう感覚を持ち続けられることってひとつの才能ですよね。

THE GATE事務局長 もう一度ギャグ漫画を描いて、青年誌読者も笑えるものが作れるのかどうか見てみたいですね。何度やっても年齢のミスマッチがあるようでしたら、他の編集部を紹介してあげましょう。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『理想のダーリン』は、
10月20日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」47号に掲載予定!





[漫画] 『河童と仙人とみつちさま』
天狗谷てんぐだに (鳥取県・33歳)


THE GATE事務局員・F島 天狗谷さんは一次選考で担当につかせていただきました。あたたかみのある絵が特徴の作品で、作者の個人サイトで公開されていました。縦スクロールで読むための漫画として作られています。よろしくお願いいたします。

一色まこと この方は、もう作風が完成されていると思いました。濃いキャラクターが出てこないのは少し気になりますが、これはこれでいいようにも思います。ほっこりする絵柄とストーリーは見ていて癒やされるし、需要はあるはずです。蛟(みづち)の描き方もとても上手いです。もしかしたら、モーニングよりももっと年齢層の高い雑誌のほうがよりおさまるかもしれませんね。

ツジトモ 僕も、作品の完成度としては言うことなしだと思います。強いて言うなら、これはカラーのほうがよかったかもしれませんね。一色さんもおっしゃったように、モーニング向きかどうかはわかりません。いろんなキャラクターが次々出てくる一話が短い連載、みたいなものだったら人気が出るかもしれませんが……いかんせんこの一話では判断できないです。

一色まこと そうですね。この応募作よりもさらに短いページ数でも、それでいて毎回、個性的なキャラクターが活躍する物語を作ってもらえたら、是非読んでみたいですね。今後の作品づくりに期待しています。


第3回THE GATE奨励賞受賞作『河童と仙人とみつちさま』は、
10月20日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」47号に掲載予定!


モーニング

モーニング

モーニング2017年52号
2017年11月22日発売
定価:本体324円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング2017年52号
2017年11月22日配信
スマホ版モーニング月額500円で配信中

[ダウンロードはこちら]

モーニング・ツー

モーニング・ツー

モーニング・ツー2018年1号
2017年11月22日発売
定価:本体546円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

アクセスランキング

  • 第1位

    モーニング・ツー

    天地創造デザイン部

    原作 蛇蔵 原作 鈴木ツタ 作画 たら子

    Webで読む

  • 第2位

    モーニング・ツー

    ハヴ・ア・グレイト・サンデー

    オノ・ナツメ

    Webで読む

  • 第3位

    モーニング・ツー

    ご恩は一生忘れません

    北郷海

    Webで読む

  • 第4位

    モーニング

    コウノドリ

    鈴ノ木ユウ

    Webで読む

  • 第5位

    モーニング・ツー

    デビルズライン

    花田陵

    Webで読む

  • 週刊Dモーニングピックアップ
  • オリジナルWebコミック『独身OLのすべて』

モーニング

モーニング

モーニング2017年52号
2017年11月22日発売
定価:本体324円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング2017年52号
2017年11月22日配信
スマホ版モーニング月額500円で配信中

[ダウンロードはこちら]

モーニング・ツー

モーニング・ツー

モーニング・ツー2018年1号
2017年11月22日発売
定価:本体546円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

  • 月額500円!お得な定期購読なら「週刊Dモーニング」
  • 単号で気軽に買うなら「電子版モーニング」

アクセスランキング

  • 第1位

    モーニング・ツー

    天地創造デザイン部

    原作 蛇蔵 原作 鈴木ツタ 作画 たら子

    Webで読む

  • 第2位

    モーニング・ツー

    ハヴ・ア・グレイト・サンデー

    オノ・ナツメ

    Webで読む

  • 第3位

    モーニング・ツー

    ご恩は一生忘れません

    北郷海

    Webで読む

  • 第4位

    モーニング

    コウノドリ

    鈴ノ木ユウ

    Webで読む

  • 第5位

    モーニング・ツー

    デビルズライン

    花田陵

    Webで読む

こちらもオススメ!

アフタヌーン公式サイトへ