モーニングの新・新人賞「第2回THE GATE」、ツジトモ&一色まこと両氏を迎えた最終選考の議事録を公開!

2016/06/09 00:00

THE GATE] [新人賞

大賞受賞作『ドメスティックハピネス』「モーニング」「週刊Dモーニング」18号に掲載)、一色まこと賞受賞作『女心と秋の遭難。』(同19号に掲載)、ツジトモ賞受賞作『もうすぐ夜が明けて……』(同21号より26号まで5号連続掲載)などの意欲作が目白押しとなった、モーニングの新・新人賞【第2回THE GATE】(最終選考結果発表および審査員総評はこちら!)。



モーニング編集部員全員による2次選考(議事録はこちら!)を経て、一色まこと(『ピアノの森』)&ツジトモ(『GIANT KILLING』)両審査員を迎えて行われた最終選考会の議事録を、ほぼノーカットで公開します!

漫画家志望の方はもちろん、受賞作が気になった読者の方も、ぜひお読みください!


[漫画] 『花を追う』
ハルヨシタケ (大阪府・19歳)

ストーリー

主人公はちょっと地味めな女子高生。そんな彼女にある日突然の変化が起こる。クラスのムードメーカーで少し気になる男子・笹原ささはらの頭の上に、彼の「理想の女性像」が見えるようになってしまったのだ。自分を笹原の理想に近づけてゆこうとするうちに、笹原に対して淡い期待を抱き始めるのだが……。

担当編集より

ファンタジックな設定一つで、乙女の恋心が痛いほど伝わる作品になっています。アイデアが素晴らしいです。


一色まこと 短いページで、これだけの作品を構成できているのは素晴らしいです。15ページ目まではすんなりと、何の問題もなく読めました。でもラストの16ページ目で、それまでに出てきた男の子とそっくりの男の子が登場したので、同じ人物なのか違う人物なのかわからず混乱してしまいました。さらに男の子の上に出現していた「理想のビジョン」が、15ページ目までは女の子だったのに次のページでは突然男の子になっていて、ますますわからなくなってしまいました。絵も色っぽいし魅力的なのに、この最後の1ページが惜しいですね。

ツジトモ 物語が進むにつれ、女の子がいきいきしていく様子がとてもかわいらしくて好感が持てました。ただ、男の子の上に見えている「理想」が何なのかよくわからなかったのは私も同じでした。どういう仕組みなのかを全部説明する必要はありませんが、それでももう少し読者に歩みよった方がいいと思います。

編集部員・K田 担当です。2次選考から担当につかせていただきました。この作品で、男の子の頭の上に浮かんでいるのは、広い意味での理想なんです。つまり、15ページまでの部分で浮かんでいるのは付き合いたい「理想の彼女」であり、16ページに出てくる男の子の上に浮かんでいるのは彼がなりたい「理想の自分」なんです。

ツジトモ そうだったんですか。作者の方としては一貫したルールで描いているつもりなのに、読んでいる側には途中でルールが変わっているように見えるから、迷っちゃったんだと思います。「理想」が何なのかは限定していたほうが読みやすいのではないでしょうか。

一色まこと やっぱりこのままの設定だとわかりづらいので、16ページ目の理想像も15ページ目にあわせて「理想の彼女」を描いた方が混乱せずにすんだと思います。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『花を追う』は、
「週刊Dモーニング」25号に掲載されました。





[漫画] 『サイダー』
山田やまだ理人りひと (長野県・28歳)

ストーリー

炭酸の入った飲み物が苦手な女子高生・森島もりしま。ある夏の日、ちょっと気になっている同級生の男子、高木に出くわした。森島がのどが渇いていると言うと、高木は「飲む?」と飲みかけのラムネを差し出す。思わず受け取ってしまった森島は、ひと口飲んでみるが……。

担当編集より

透明感抜群の絵が素晴らしいです。キャラクターをもっと掘り下げて描ければさらに面白くなると思います。


THE GATE事務局員・福島 2次選考から担当につかせていただいています。この方は、とにかく透明感のある絵が特徴で、涼やかな目元の人物など特に魅力的だと思っています。2次選考では絵の評価がとても高く、ストーリーについてはやや淡白だという意見もありました。そのあたりも踏まえてご講評をいただければと思っています。

ツジトモ 絵はきれいだし、間接キスにまつわる青春の甘酸っぱい感じとか、夏のジメジメした感じとかを描こうという意欲は感じました。でもなかなか目指すところまで表現できていないような気がします。ストーリーも、高校生で間接キスしてそれで終わりっていうのは、ちょっと幼すぎる気もしました。

一色まこと 透明感があるっていうのは私も同感です。とても絵が上手いですね。でも少し表情が硬いようにも思います。サイダーを渡す男の子や、受け取った女の子の表情が、ちょっと怖く感じてしまいます。そのせいもあると思うんですけど、ヒロインとしては女の子に可愛げが少し足りなくなってしまった印象です。たとえば最後のページで、モノローグで終わらせるんじゃなくて、ベタですが、間接キスしたこと自体にものすごく頬を赤らめるとか、ツンデレの”デレ”の部分が少しだけでも見えたら。見た目のかわいさだけじゃなくて、キャラクターとしてのかわいさも出して欲しかったです。

THE GATE事務局員・福島 一色さんが表情が硬い気がする、とおっしゃっていましたが、ツジトモさんは特に絵について気になったことはありますか?

ツジトモ 顔のアップがとても多いな、という印象を受けました。書き手によって、背景を描くのが好きな人と嫌いな人がいるし、背景が描かれていないからダメというわけではないんです。でもあまりにも引き、つまりロングショットの絵がないと、漫画全体がとても狭苦しく見えてしまう。それは本当にもったいないです。

THE GATE事務局長・篠原(選考会当時。あだ名はシノケン) 新人作家さんにとても多い傾向ですよね。一色さんは、普段「引き」と「寄り」についてどういうふうに意識されていますか。

一色まこと アップは表情、ミドルは動き、ロングは状況や情景を見せる……と新人時代に学びました。どの場面をどう見せるかは描き手の好みなんですが、ストーリー上、どうしても会話主体でアップが多めになるシーンでも、読者の頭の中に、登場人物がどういう場所にいるのかというイメージが残るように意識しています。

ツジトモ この方も、ほんの少し気を付けるだけで作品全体の印象が大きく変わると思うんです。たとえば、キャラの頭頂部が枠線で切れて見えなくなっているコマが多いんですが、顔を描く時には頭部全体をコマの中に入れてみるようにするだけでも印象が全然違うと思います。もしくは靴が何回描かれていたかとか。つまり人物の全身が描かれていたか気にしてみるのも一つの方法ですね。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『サイダー』は、
「週刊Dモーニング」21号に掲載されました。





[漫画] 『女心と秋の遭難。』
きはらゆりこ (兵庫県・27歳)

ストーリー

小学校の遠足は山登り。下山中にいつの間にかクラスメートとはぐれてしまった女の子たちと先生一人。そんな状況だが乙女たちは恋バナを始め、辺りはどんどん暗くなり……。女生徒たちの安否と女心の行方はいかに!?

一色まこと氏より

遭難した子供たちが語る恋のエピソードのひとつひとつがとても可愛らしく、外れがない! 一緒に遭難した先生は完全に聞き役で頼りないのですが、恋する女に年齢は関係ないんですよ。恋してる方が偉い(笑)。オチの一転して現金な態度になるという展開も、ベタゆえに面白かったです。キャラクターはとても活き活きと描けているので、今後は背景をすっきりさせるなど、全体の画面作りをより意識して欲しいですね。これから大きく成長されていく方だと思うのでとても期待しています。

受賞のことば

「じゃーん! こっそりこんなのも描いてみました~」と担当さんをびっくりさせることだけを目標にワクワクしながら描いた話です。賞をいただき、自分が一番びっくりしています。(きはら氏)

担当編集より

とにかく人に愛されるキャラクターを描ける方です。突き抜けた明るさがある。てらいなく描く度胸と、それでいて押し付けがましくならない愛嬌があると思います。


一色まこと 登場人物たちが本当にかわいくて、とても楽しく読めました。遭難中にもかかわらず王子様に助けられたいという女子のメルヘン的な願望と、最後にガラッと態度を変える現金さが上手く描けています。女の子たちが恋に落ちた瞬間をそれぞれ語るエピソードには笑いました。最後のイケメン外国人に助けられるというシーンも、ベタですが突き抜けていて良かったです。好みの問題になりますが、最後のシーンを、今まで話題に出てきた恋の相手、つまりクラスメイトの男の子たちが心配しているシーンを入れても良かったかなと思いましたが。でも、それだと普通すぎるのかな…とも思いますし、これはこのままでいいんだと思います。

ツジトモ すごく面白かったです。人間をきちんと描けているので、一読者として楽しく読めました。この1ページ目なんて、目の描き方は一緒なのに、全員表情が違うんですよ。口の開き方とか、首の角度とか、絶妙に表情を変えている。これだけですごさがわかる。しいて言えば最初に出てきたモブの子供たちをもっと丁寧に描けば、奥行きが出た気がします。でも、ここをこうしたら良くなるとかはあんまりないです。この作品はすごく良く出来ています。

編集部員・H野 一色先生に伺いたいんですが、たとえば一色先生の『花田少年史』は子供が主人公ですが青年誌で描かれていたものですよね。青年誌は基本的に主人公が大人であることが多いと思うのですが、この作品のように子供を主人公にした場合、どうしたら大人が読むものになりえるのでしょうか。

一色まこと 『花田少年史』はたしかに子供が主人公ですが、対象読者はあくまで大人でした。かつて子供であった大人、子供がいる大人に向けて描きました。大人から見た子供と子供から見た子供は違うと思うし、子供の視点では私には描けないですね。問題は、誰に見せたいと思って描いているのかではないでしょうか。

THE GATE事務局長・篠原 2次選考の場では、先生と子供たちの精神年齢があまりにも近すぎるという意見がありました。それについてはどう思われましたか?

一色まこと 「恋をしている女の子」と「恋をしてない女の人」だったら、恋している女の子の方が格が上です(笑)。だから、この時ばかりは子供たちが先輩なんですよ。恋バナをしている女の子は、自分のことをものすごく大人だと思ってしゃべっているので。なので今回の子供たちと先生の距離感はこれでいいと思いますよ。もっと先生のキャラクターを目立たせたいのであれば、恋していない先生を子供たちが囃し立てるようなコマがあっても良かったかもしれないですね。

ツジトモ 男目線で見ると、女性が集団になったらこんな感じかなのかな、と思いました。「いそうだな、こういう女の先生」と素直に思えたので、あまり気にならなかったですね。

一色まこと あと、先生がいないと子供たちだけで遭難することになるので、お話に危険な感じが出てしまう。イケメン外国人に「乗せて」というシーンも大人のキャラクターがいるからできる。この作品を、読者が安心して笑えるのは大人の存在があるからなのだと思います。担任の先生じゃなくて保健の先生のような少し外した設定にしたら、より自然な感じになったかもしれませんね。

THE GATE事務局長・篠原 読みにくい箇所かいくつかあると思ったのですが、改善できるとしたらどの部分でしょうか?

ツジトモ ペンのタッチで斜線を入れているような描写を綺麗にしたり、線をもう少し整理したりは出来ると思います。そうすれば見栄えが良くなって、読む人を選ばなくなるのではないでしょうか。

一色まこと これからの方だと思いますので、どんどん描いていけば相当上手くなると思います。非常にうらやましいです。


第2回THE GATE一色まこと賞受賞作『女心と秋の遭難。』は、
「モーニング」&「週刊Dモーニング」19号に掲載されました。





[漫画] 『私は看護師!!』
風花ふうか (福岡県・19歳)

ストーリー

2年目新米ナース・熊谷くまがやさち子は日々激務に追われていた。この忙しさには早く慣れなきゃいけないが、看護師には慣れていけないこともある。

担当編集より

パッと見たとき、お仕事の紹介漫画かな? と思いましたが、後半のセリフや表情など、すべてがグッときました。


THE GATE事務局員・冨士 担当です。作者の方は看護学校に通っていたそうなんですけど、今はもう辞めてしまっているみたいです。この作品は、自分の経験や友達などへの取材に加え、足りないことは自分で調べて描かれたそうです。前半はナレーションが多くて単なるお仕事紹介漫画っぽいんですが、後半のクライマックスあたりの「人の死に慣れちゃダメだよ」というセリフやキャラの表情に感動し、担当を希望しました。

一色まこと 私は後半のクライマックス付近のナレーションをなくした方がいいと思いました。ずっとナレーションできてるので、逆にここはナレーションは使わずに、キャラのセリフ、行動で表現した方が際立つし、読者の目を止められるかもしれません。例えば、ナレーションなしで、主人公の看護師が泣きながらも「慣れなきゃ」「慣れなきゃ」と、モノローグででもいいので、呟きつつ作業をするなんていうシーンにすると、医者の「人の死に慣れちゃダメだよ」というセリフがより活きたんだろうなあと思います。そのあたりは少しもったいなかったですね。

ツジトモ ナレーションってセンスが問われると思うんです。それが並んでいるだけで読む気をなくしてしまう漫画もありますけど、この漫画に関してはテンポよく読めるように作られていたので、そこは評価しています。お仕事紹介漫画としてならナレーションはこの使い方で問題はないです。ただ、この漫画は後半の感動シーンの方を見せたいんだと思うんですけど、仕事に対するつらさや愚痴に話の比重が傾いてしまっていて、患者を「見送ること」というテーマの感動を上回ってしまっている印象を受けました。ただ、先ほどの作者の紹介を聞くまでは、間違いなく病院で長く働いている方だと思っていたので、そうではない方が取材の上でこの作品を描いたのであれば、他の仕事でも上手く描ける才能がある方だという風に感じています。あとは一色先生がおっしゃったように、セリフを減らすことで見せたいシーンを際立たせる方法もあるので、今後の課題にしてもらえればと思います。描きたい作品の内容にもよりますが、ナレーションを多用しすぎると、慣れちゃってそのやり方でしか描けなくなってしまうこともあるので、気をつけて欲しいです。セリフで表現できないことをどう表現するかというのが漫画の見せ所の一つだと思います。それを理解した上でナレーションを使えるようになってくると、作家としてのオリジナリティが出てくるのではないでしょうか。

THE GATE事務局員・冨士 キャラクターついてはどうでしたか?

ツジトモ キャラクターのリアクションが個性的ではあるんですけど、若い方が描いたにしては、ちょっと古いかなとも感じました。あと、読んでいくうちにキャラは何歳くらいかわかったんですけど、パッと見では何歳かわかりませんでした。前半部分でどういうキャラクターかわかるように描ければよりよかったと思います。

THE GATE事務局員・冨士 ありがとうございます。

THE GATE事務局長・篠原 こういうところは担当と打ち合わせをしていけばガラッと変わるかもしれませんね。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『私は看護師!!』は、
「週刊Dモーニング」24号に掲載されました。





[漫画] 『たたずみっぱなし』
安島あじま藪太やぶた (埼玉県・31歳)

ストーリー

工事現場のガードマンとして働く日和ひよりは、一日2回、楽しみにしていることがある。それは朝と夜に工事現場の前を通る女性・まいと挨拶を交わすこと。日和は彼女に惹かれながらも、アルバイトの自分では釣り合わないとはなから諦めていたが、ある夜、転機が訪れる——。

担当編集より

情景を丁寧に描いていて、画面の見せ方がうまいです。魅力的なキャラを描けるとさらに伸びると思います。   


編集部員・Y江 担当のY江です。このかたは何度か新人賞に出してもらっていますが、今回初めて最終選考まで残りました。前に描いてもらった先品が、すごく暗い作品だったので「自分の身近なもので明るいテーマで描いてみませんか?」 というお話をして今回の作品ができました。キャラクター、ストーリーを作るとき、方向性がなかなか定まらず悩んでしまうそうなので、何かご意見頂ければと思います。

ツジトモ こういうお話は、キャラクターがすべてだと思います。主人公の頑張りが足りていない気がしました。仕事をしているときも、ヒロインの女の子にだけ笑顔を向けているし、頑張っているのはデートのときだけになってしまっています。ひとつひとつのシーンをひっくるめて、全力で頑張っているキャラクターがいないからグッとこないのではないでしょうか。これはエピソードがどうってことよりも大切な部分だと思います。暗い漫画を描いていたというのも頷けます。でも、すごく頑張って描いているのは伝わりますので、全員は無理でも誰かひとりくらい、突き抜けて明るい人を作ってみるといいのではないでしょうか。

一色まこと 私はこの漫画に魅力を感じてはいます。ただ、この主人公がどうしても応援できないんです。たとえば、ヒロインとのデートのシーンで「俺が並んでいるんでどこかで休んでいてください」って言ったあと「無理をしよう、ポイントを稼ごう」という心理描写があるんですけど、「こんなことも無理しなきゃできない男なのか!」と思ってしまったりして、主人公を好きになれませんでした。でも、この作品は構図などの見せ方が上手くてスルッと読ませるんですよね。すごく上手いと思います。あとは本当にキャラクターだけだと思うので、そこさえもう少し粘って描いてもらえれば、化ける人なんじゃないかと思います。

THE GATE事務局長・篠原 見せ方や構図が上手いということですが、具体的にどういったところですか?

一色まこと この主人公の行動を、奥行きを使ってしっかりと描けているところです。画面を大きく使えているんですよ。そうすることで世界観をしっかりと作れているし、これはなかなかできることではありません。そういう才能を活かせるように、キャラクター作りを頑張ってもらいたいです。

編集部員・Y江 この漫画の主人公は作者自身を投影して描いているところもあると思うんですが、キャラクターについて作者にアドバイスするとしたらどんなことでしょうか。

一色まこと 作者本人が「こんな人間でありたい」と思える人物を、願望を込めて描くのも一つの方法です。私はよくそうやって描いてます。

ツジトモ さっき一色さんがおっしゃっていた「こんなことも無理しなきゃできないのか」ということに関係してくるんですけど、この主人公、デートが終わった後、ヒロインに笑顔をみせないじゃないですか。あそこでもう「終わったな」と思いました。そこを頑張れないと何もないキャラになってしまいます。実際、現実で好きな女の子を見つけたとき、そんな態度は取らないと思うんです。そういったことを考えながらキャラクターを作ればいいのではないでしょうか。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『たたずみっぱなし』は、
「週刊Dモーニング」25号に掲載されました。





[漫画] 『あの子の食事情』
Re:へんしん (福岡県・24歳)

ストーリー

ぶっきらぼうなせいで、付き合った女の子にすぐにフラれてしまう高校生・かじは、屋上で転校生の女の子・花園はなぞのが「花」を食べているところを目撃してしまう。彼女は特定のものしか食べられない特殊な体質、「異食体質」だった。花園のことが気になり始める梶だが、秘密を知ったことで避けられてしまい——。

担当編集より

「手作りの食事」というテーマで、気持ちのいい話を描き切っています。漫画としての完成度が高いです!


編集部員・K田 担当です。この方は働きながら漫画を描かれていて、主にネットで活動されています。本も1冊出されているんですがそれはホラーテイストの話です。今回は今まであまり描いたことのない明るい話なので、ストーリーを考えるので手一杯でちょっとキャラクターが弱くなってしまったのかな、と思います。

一色まこと 文句なく最後まで読めた作品でした。読ませる力はあるし、アイディアもあります。でも、良くも悪くも引っかかりがなかったです。食べ物ではない花を食べるというシーンは最初の見せ場だったのに、何をしているのかよくわからないシーンになってしまったのが残念でした。お弁当箱に花が入っているのに、手づかみで食べているのもあまり魅力的ではなかったです。主人公がクールなキャラで、感情をあまり表に出さない人物だから、ヒロインに興味を持って花をプレゼントしようと思った理由もよくわかりませんでした。もう少し主人公に熱が欲しかったですね。

ツジトモ 僕もどこか同じような印象ですね。アニメ調の絵がダメという話ではないのですが、今回の話に限って言えば、あまり合っていなかったのかなと思いました。また、人物の設定を一貫させることに意識がいってしまって、この主人公がなぜ花を育てようとしたのかがわかりづらくなってしまったのだと思います。ちょっとぼんやりとしたシーンが多かったですね。人物を描くのが上手いので、もう少し画面と人のバランスや見せ方を考えると良い作品になると思います。

編集部員・K田 キャラクターを作るにあたって、どういったところを意識すればいいんでしょうか。熱のないキャラクターが出てきたとき、単純に「熱を持たせましょう」と言っても仕方ないですよね。

ツジトモ 「熱がない」と一言で言っても色々と種類はあると思うんです。どこか冷めて見えるキャラがいたとしたら、口数が少ない、作者自身があまりそのキャラに興味がない、など様々なパターンがあります。そこの掘り下げをしっかりとできればキャラクター性が出てくると思うんです。冷めている様に見えるこの主人公にも、ヒロインに花を作るようになったのは彼女への気持ちを確かめたいからやっているからなのかなとか、心境の変化はあるはずで、そういうところを読者にもわかるように描ければもっと話が動くと思いました。

THE GATE事務局長・篠原 こういう上手だけど淡々としたストーリーの話にとっかかりを付けるためにはどう打ち合わせしたらいいと思いますか。

ツジトモ 今回の話だと、特異体質をどう扱うかですよね。それによっていじめられてしまう展開になった方がドラマ性は生まれるでしょうし。

一色まこと 最初のシーンの花の食べ方が、もっとキレイで優雅だったら、主人公が一瞬見とれてしまうような素敵なシーンになって、彼女にもある種のカリスマ性が生まれたかもしれないなと思います。そうすれば、とても明るくとっかかりのある作品になったかもしれません。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『あの子の食事情』は、
「週刊Dモーニング」21号に掲載!





[漫画] 『ドメスティックハピネス』
二宮にのみや志郎しろう (千葉県・26歳)

ストーリー

牛丼屋に置いていかれた三人の子どもたち。母親を探すため家にもどると、そこには家族を捨て、旅に出ていた父親がいた。

一色まこと氏より

キャラクターがとても魅力的で思わず10点満点を付けてしまいました。細かな表情、仕草が抜群でコマ割りも上手い。弟の「可愛くなさ」も絶妙。ものすごく漫画が上手な方ですね。キャラクターが立っているので、このお話で描かれている数時間の出来事だけでなく、その前に何があったか、この後どんなことが起きるのかを想像せずにはいられなくなってしまいました。審査員であることを忘れ、一人の読者として楽しませてもらえた作品です。大賞にふさわしいと思います。

ツジトモ氏より

漫画の力、あるいはフィクションの力というものを感じました。シナリオだけだと悲惨な物語に見えるけど、笑える漫画だから、「まぁいっか」と思ってしまう。ひとりひとりのキャラクターにものすごい生命力を感じます。この物語の続きを是非読んでみたいです。読者を楽しませるという意味で、一番の作品だと思いました。独特な雰囲気を出しているので、それを活かしつつ、このまま育っていってほしいです。

THE GATE事務局長・篠原より

魅力的なキャラクターの仕草や表情、会話のテンポの良さはすごい武器だと思います。それだけでどんなお話も楽しく読ませられてしまう。この元々持っていた良さに加えて、今作は前作に比べ作画のレベルが格段に上がっているのに驚きました。これからもどんどん上達していくのでしょうね。今後は一発ネタではなく、愛着を持って描き続けられる設定やキャラを見つけて、ぜひ連載を勝ち取ってほしいです。

受賞のことば

まさかの大賞に今現在、調子に乗っております!! 後輩に人生訓などをのたまっております!! 調子乗りすぎんよう気をつけて次の漫画に励みます!!(二宮氏)

担当編集より

漫画という媒体でしか表現できないものがある、と改めて感じさせてくれた作品です。連載を目指して、ガンガン描いていきましょう!


THE GATE事務局員・長沢 1年ほど前に持ち込みを受けて担当になりました。その後、前回の第68回ちばてつや賞一般部門に『リボルテック谷口』という作品で応募し、佳作をいただいています。その作品は一度死んでしまった女子高生が人形として生き返った後のドタバタ劇を描いたものです。今回応募していただいた作品は、牛丼屋で作者が実際に見かけた鬱々とした家族がモチーフになっています。このお話にかぎらず暗い雰囲気のお話を描くことが多い方です。

THE GATE事務局長・篠原 それでは、まず10点満点をつけられた一色先生から講評をお願いいたします。

一色まこと  最後まで、すごく楽しく読ませてもらいました。登場人物を形作る一本の線ですら、そのキャラクターにとって、絶対に必要なものだと感じられるようでした。とても好きな作品です。審査のことを忘れ、最後までひとりの読者として読むことができました。最低な父親が出てきますが、その憎らしさもとてもいい。実の息子のことを可愛くない、と言い切っても許されるのは、このキャラクターがしっかりと作られているからだと思います。最後に「出てけ」と主人公たちに言われるのも、読んでいて非常に気持ちよかったです。ひどい状況に置かれた人たちだけど、彼らのことをこの先も見たいと思いました。キャラクターを描くのが本当に上手くて、つい10点満点をつけてしまいました。

ツジトモ このお話はシナリオだけだと、悲惨なシチュエーションなんですが、それが物語として楽しめるのは、マンガの力というか、フィクションの力なんだと思いました。どんな悲惨なことでも笑い話になっちゃうような家族もいれば、たった一言で壊れてしまうような家族もいる。このお話で描かれる家族は前者ですよね。キャラクターそれぞれにすごく生命力を感じます。お母さんが家を出てっちゃうんですけど、たぶん、いつか帰ってくるなと思いながら、読者は読み終えると思います。そして、帰ってきたらまた何かドタバタ劇が起こるんだろうな、という物語のその後までも想像できますね。シリアスな状況であっても、それを笑い飛ばせれば幸せな物語になる。そういう物語の力、キャラクターの力、そしてフィクションの可能性を感じました。とても面白かったです。

THE GATE事務局員・長沢 二次選考の際に部内で話し合ったときには、テンポや間、緩急みたいなものが足りないと指摘を受けました。一方で、この方は勢い良く描き切るところが持ち味のようにも思えます。今後、どういったふうにアドバイスをするべきでしょうか。

ツジトモ 本来は間をとって起承転結をしっかり作っていくべきだと思います。そうするとオチが重要になってきますが、この方はダラダラと会話が続く垂れ流し感が魅力ですよね。オチがパッとしなくても会話劇で十分に面白いと思えるので、今後の作品についてはわかりませんが、この作品についてはそのままのほうがいいんじゃないでしょうか。

THE GATE事務局長・篠原 なるほど。ありがとうございます。ところで、これは何作目なんですか?

THE GATE事務局員・長沢 これで5作目くらいになると思います。描くたびにどんどん上手くなっているように思います。

一色まこと この作品って一日のなかの数時間の話ですよね。なのに、その前後を感じさせるだけの力がある。そういう漫画は滅多にないので、ほんとにすごいと思います。これ、何話かだけでも、連載できないですかね!?

モーニング編集長・宍倉 週刊連載で読みたいという感じですか?

一色まこと そうですね、短くてもいいから、今回のような会話が続いていくお話を読みたいです。このキャラクターの表情を見ていると、すごく短くても十分漫画になる気がしちゃう。もう少し描き続ければ、次にはすごい作品ができる気がします。

THE GATE事務局長・篠原 この方は上達が非常に早くて、前回のちば賞の作品と見比べても断然上手くなっていますね。

ツジトモ そもそも、この話は読者を笑わせようとして描いているんですか?

THE GATE事務局員・長沢 どうなんでしょう……。運命には抗えない、というのが彼の創作のテーマのようです。ただ、前回も今回も笑える感じではありますね。暗さのなかにコメディがあるという感じです。

ツジトモ じゃあ、意図したことを描けているのでいいんじゃないでしょうか。これからどんどん上手くなっていくと思います。読み始めたときはどういう展開になるのか不安でした。でも、物語中盤で出てきたポカポカという書き文字のタッチで、これは悲惨な話じゃないんだなとわかって安心して読めました。やはりどこかに笑いを入れることを武器にしてほしいですね。


第2回THE GATE大賞受賞作『ドメスティックハピネス』は、
「モーニング」&「週刊Dモーニング」18号に掲載されました。





[漫画] 『メーデー』
松ノ木まつのきセブン (福岡県・18歳)

ストーリー

月が地球に向かって落下するという予測が、国連から発表された。建物の補強工事に勤しむ主人公・蒼生あおいは、発表から1ヵ月が経ち、幼なじみの世良せら奈々ななに再会する。大学もやめ、「将来の不安がなくなってむしろ楽になった」と口にする二人に、蒼生は納得がいかない。

モーニング編集長・宍倉より

終末観漂う暗くなりがちな物語なのに、読後感は心地よい作品でした。まだセンスとしか言いようありませんが、柔らかさと明るさのある絵、生き生きとしたセリフは、この先作者の武器になると思います。主人公たちを描くことで何を伝えたかったのか。どこか摑みどころがなく歯がゆさを感じたのも事実。作者の思いは言葉になりづらい漠然としたものかもしれませんが、もう少ししっかり核を摑んで、彼らのセリフに落とし込んでいたら忘れられない物語になったと思います。

受賞のことば

まさかこんな大きな賞を頂けるなんて、とても嬉しいです! ありがとうございます。つたない作品ですが、必死に描きました。どうか見てやって下さい。(松ノ木氏)

担当編集より

事態に絶望することのなく生活を続ける主人公たちは、友達になりたいと思うほどに魅力的。何気ないしぐさやノリを丁寧に拾い上げ、紙に落とし込む作者の感性に脱帽です。


ツジトモ 全体的に高く評価しています。癖のある漫画を描こうとしている姿勢と、絵を含めた世界観の完成度が素晴らしかったです。この世界でちゃんと人間が生きているのを実感できました。とても線が多い絵ですが、無理をして描き込んでいるのではなく、楽しんで描いていることも伝わってきます。ただ、主人公が冷めた感じで、どこか他人事っぽいですよね。心に刺さるセリフがなかったり、無駄と思われるエピソードがあったりもします。おそらく、絵の雰囲気に流されすぎているんではないでしょうか。一つのテーマや「このコマが描きたいためにこの話を描いた」というところがもっとあると、印象は変わってくると思います。

一色まこと 額に入れてもいいくらい一枚一枚がイラストとして完成されていますが、私は少し読みづらく感じました。楽しんで描いているのは伝わってくるのですが、ただ描きたいことをつらつらと描いている印象を受けました。セリフが整理しきれていないので、一読したときに読み飛ばしたくなる読者もいるかもしれません。月が落ちてくるという緊迫感がある状況での友情の描き方なんかはすごく良かったです。ただ、そうかと思えば、いきなり呑気になったりもする。この人の世界観ではありますが、少しついていけない場面がありました。でもこの年齢で、プロと比べて遜色のない絵と独特の世界観を持っているのはすごいです。これからが楽しみな作家さんですね。

編集部員・K田 担当です。急に呑気になるというお話がありましたが、もともとは月が落ちてくるにもかかわらず呑気に暮らしている人たちの話でした。ですが、打ち合わせの過程で、もっと事件性を持たせるようアドバイスしたことが裏目に出てしまったのかもしれないです…。放っておくのも大事なのでしょうか。

ツジトモ 18歳ですよね、この方は。だからこういった事件が起きてものんびりしているのがかっこいいんですよ。僕もそうでしたからわかります。ただ、軸というかテーマが描かれていないので、この「呑気さ」みたいなものが、今はまだ若さの表れでしかないんです。その軸は何かといえば、主人公なんだと思います。この作品は主人公のキャラクターで引っ張っていく漫画になりきれていないんです。周りのキャラクターの方が物語を動かしています。主人公はただそれを見ているだけ。主人公という軸がバシッと決まっていないので、無駄と思えるようなシーンの羅列という印象を受けてしまいます。ただこれは描き続ければ整理されてくる部分だと思います。今はある程度好きに描いてもらって大丈夫なのではないでしょうか。

THE GATE事務局長・篠原 かなり読みにくさがある作品だとは思います。好きに描いてもらいつつ、読みやすさという部分はいつも指摘してあげるのが良いのではないでしょうか。そうすれば、読者のストレスは減ってくるはずです。

一色まこと もちろん漫画はどんどん描いていくべきだけど、たとえばペン画に色をつけてイラストに仕上げてみるといったようなことをしてもいいように思います。この方は独特のセンスを持っているので、他の漫画家さんと同じように成長する必要はないかもしれません。

THE GATE事務局長・篠原 ファンが付きそうな絵ですよね。

一色まこと そうそう。大人向けの絵本のように、オールカラーの漫画を作れるんじゃないかと思います。それくらい絵に力があります。


第2回THE GATE編集部賞受賞作『メーデー』は、
月刊「モーニング・ツー」6号および「週刊Dモーニング」22・23合併号に掲載されました。





[漫画] 『もうすぐ夜が明けて……』
まどおさむ (千葉県・29歳)

ストーリー

男・男・女、児童養護施設の幼なじみの三人。彼らは過去の記憶、そして理不尽な世の中と戦いながら、絶望のその先を見つけようと懸命にあがく。

ツジトモ氏より

198ページを読ませる力というのは、とてつもないものです。これを描き切ったというところが、評価の最大のポイントです。また、この作品を読むと少なからず感じるネガティブな気持ちに対して、読み終えた後に残った余韻のほうがはるかに大きかった。これは評価せざるを得ないという感じです。この人が描く漫画のなかへ導いてもらい、そこを浮遊しているような感覚でした。この余韻の残し方は、とても素晴らしいと思います。読み進めるうちに、どんなラストが来ても受け入れようと思うようになりました。確かにキャラクターの描き分けができていなかったりはしました。また、主人公たちがもっと周囲に助けを求めたり、何かやりようはあったんじゃないかとも思います。ただ、読み終えた後に、それだけ色々なことを考えさせる作品は、評価されて然るべきです。

受賞のことば

このような賞を頂いて本当に有難く思います。自分の願いのような想いを、誰かに伝えたくてこの作品を描きました。誰かに何かが伝わるよう、これから頑張ります。(窓氏)

担当編集より

本当に感動した作品でした。「伝えたいものがある」というのはとても素晴らしいこと。今後は「伝わりやすさ」を高めていきたいですね。一緒に頑張りましょう!


ツジトモ 評価の難しい作品ですが、素晴らしかったです。198ページを読ませる力は並大抵のことではありません。読み進めるにつれて、作家さんへの信頼というか、この作家さんが描くものだからどんな結末になってもいいと思えました。重苦しくて読んで、いい気分になるわけではない。登場人物の描き分けや、人物の名前がわかりづらかったりといった課題もあります。けれど、読んだ後に残る余韻の残し方は審査どうこうでなく立派な作品でした。ただ三人のうちの一人、図書館に勤務する男性が、周りに引きずられていって現実に飲みこまれてしまったところは他にやりようはなかったのかなと思いました。作中では、彼だけが明るく振る舞えているのですが、そういう人間であれば過去は別として周りにもっと人がいるのではないか、周囲の人を巻き込めなかったのか。そういった疑問は残ります。ですが、とにもかくにもそんなことを考えさせる作品だったというところが評価の一番のポイントです。

一色まこと この方はいずれすごい漫画家さんになると思いますが、私はこの作品に関してはあまり好きになれませんでした。暗い話だから嫌なのではなく、登場人物に客観性がなさ過ぎるように思えて引っかかってしまいました。自殺してしまう田中は医大を落ち続けるんだけど、途中で他の道は考えなかったのか……とか、最低な社長に追いつめられ耐えられなくなって、もう死のうとなった時に一発ぶっ飛ばして欲しかった……とか。それができるなら死にはしないんでしょうが、たとえ田中がやれないとしても、社長がギャフンといわされるところが一コマも見られないのは腹立たしい。レイプされてしまった彼女に関しても、なぜ妊娠するという最悪なシナリオを恐れ、想像しなかったのか? 半年近くもあったのに病院に行くなど、何も手を打たなかったことが引っかかりました。彼女が少女だったらわかるけど、小説家を目指しているような女性が、気付いたらどうにもならなくなっていた……なんて。何かそういったところにリアリティが感じられず少し引いてしまい、作品にのめり込めなかったです。もう少しやれることがあったのにすべてを不幸と片付けて何もしないなんて。「闘えよ!」とも思ってしまいました。

THE GATE事務局長・篠原 一色さんがおっしゃったことは全くその通りだと思います。ただこの作品は、理不尽な状況に置かれている人たちは不幸にならざるを得ないというわけではなくて、今この世界で、理不尽さを抱え込んで闘えなくなっている人がいることを改めて読者に思い出させてくれるのではないでしょうか。人生がもやもやしていて、不幸と言えば不幸。けれど、それでも生きていて良いんだと肯定してくれる漫画だと思うんですよ。

一色まこと それでも漫画なんだから、結果は同じでもいいから、やはり一度でいいから拳をあげてほしい!……と思いながら読んでいたので、ラストの「生きていて」が私には活きてこなかったのかもしれません。ただ、この作者は暗い画面がとにかく上手く、「描きたい」という思いや熱は誰よりも強く感じました。この迫力は作者のとがった大きな武器だと思います。この熱い198ページは認めないわけにはいきません。

ツジトモ 一色さんのおっしゃっていることはその通りだし、そうであるべきだと思います。私も基本的にジメジメした漫画は嫌いです。漫画やエンターテインメントの役割を考える上で、もっと闘っている人が出てくる漫画の方が、読者に元気や勇気を与えるんじゃないか、とも思います。だけどごくまれに、その範疇に収まっていないけど、心に刺さってしまう作品があると思うんです。森の描写を次々と見せられて作品の世界に連れて行かれるような感覚や、この世界に漂うような独特の感覚を、この作品を読んで味わえました。好き嫌いとはまた別の違ったところで感動させてもらったと思います。


第2回THE GATEツジトモ賞受賞作『もうすぐ夜が明けて……』は、
「モーニング」&「週刊Dモーニング」21号より5号連続で掲載されました。





[漫画] 『三瓶先生の時間』
夕海ゆみ (東京都・25歳)

ストーリー

三瓶さんぺい先生は美人だ。しかし、そんな美人の授業を休み続けている男子が一人。学級委員の二階堂はその男子生徒・森永が授業をサボり続ける理由を探り出す。そう、三瓶先生には秘密があるのだ。

担当編集より

最後の最後に待ち受ける驚き……「とにかく読者を驚かせたい」という作者の意志を感じる作品。


編集部員・J甲 2次選考から担当につかせていただいています。まずこの方にしか描けないような、独特の雰囲気のある絵に強く惹かれました。ストーリーも最後にどんでん返しを作っていて、読者を驚かせようという意欲を感じました。もちろん絵の面でもストーリーの面でも未熟なところはあると思うので、お二人のアドバイスをうかがいたいです。

一色まこと 絵について言うと、雰囲気があってかわいいし、作者の個性がよく出ていると思いました。そして、ラストには確かにびっくりしました。そこは成功していますね。ただ、キャラクターがどの人もあまり魅力的ではないように感じました。三瓶先生は常識人のようでいて結局生徒に手を出しているわけだし、男の子は割と簡単に大事な秘密を洩らしちゃう。どの人にもいまひとつ感情移入しづらかったのは残念でしたね。

ツジトモ 僕も絵についてはかわいらしくていいなと思いましたが、登場人物の描かれ方が気になりました。男子生徒からも女子生徒からも好意を抱かれるはずの先生がいまひとつ魅力的に描かれていないので、キャラクター設定の説得力が薄れているんです。主人公の女の子も三瓶先生のことが好きなはずなのに窓の外を見ていて授業は真面目に聞いていないし先生のことも見ていない。登場人物のキャラクターを物語の最後まできちんと保つことができたら、もっと感情移入もしやすくなるのではないでしょうか。

編集部員・J甲 ありがとうございます。もう一つ、この方はトーンを使用せず原稿に色を塗ってからそれをスキャンしてモノクロのデータにするという珍しい手法を使っているのですが、その点はどう思われますか。

一色まこと そうなんですね。言われるまでは薄墨なのかなと思っていました。確かに珍しいやり方ですが、濃淡のバランスもいいしそのままでいいと思いますよ。

ツジトモ 同感です。むしろ絵で気になるのは『サイダー』の方と同じく、人物の顔に寄った絵が多いことですかね。登場人物の可愛さを演出しようとしたんだと思いますが、その人物がどういう状況にあるのか、ということも読者にとっては重要な情報なので、引きの絵を効果的に使えばもっと読みやすくなると思います。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『三瓶先生の時間』は、
「週刊Dモーニング」26号に掲載されました。





[漫画] 『好きな人の殺し方』
ULTRAウルトラ CLUTCHクラッチ (鹿児島県・29歳)

ストーリー

クラスメイトのハルオに告白したものの、まだ返事を聞けていない女子高生のユキ。ある日、彼女のもとに神の使いを名乗る少女・ミコが現れ、こう告げる。「ずうっと上の丸い神様に会いにきて」。その言葉に従い、ハルオとともに学校の屋上へと向かったユキは、ある“錯覚”に気付いてしまう——。

担当編集より

女の子の横顔がとても素敵です。読み返すたび、細かい演出に気づかされて感動しました。


THE GATE事務局員・長沢 担当です。この方は普段、高校で数学を教えているそうです。過去には他社の新人賞で受賞経験があります。この漫画自体は、だいぶ前に描いたネームを新たに描き直したものだそうです。このお話のなかでは「錯覚」という言葉がキーワードになっていますが、作者自身は、読者にそういう仕掛けのようなものを提示したいと考えているようです。

ツジトモ みんな「仕掛け」たがりますよね。それはよくわかるんだけど、実はそういう仕掛けってあまり重要じゃないと思います。今回だと設定はうまく描けていると思います。ただ、気づく人はすぐ気づくだろうし気づかない人はそういう伏線を読み飛ばしちゃうから、あまり意味がなかったりする。内容については、よくある話なんだけど、それを自分なりに描こうとしているのが良かったです。ただ、ものすごく目新しいかというとそうでもなくて、錯覚をテーマにするなら、もっと遊べたんじゃないか、とも思いました。でも、こういうお話は嫌いじゃないです。ありがちな話を読ませる力があるので会話劇とかをやるのに向いている方な気がします。

一色まこと 私は最初から面白い作品だなと思いながら読んでいました。でも、神の使いが錯覚によって、学校や世の中を調整しているという設定には無理があったかな。この「神の使い」の使い方が難しかったかもしれませんね。あと、神の使いが結構長い間、舞台上に居ましたが、もう少し早い段階で退散して、主人公と錯覚が生み出した男の子の二人だけにしてあげてほしかったですね。主人公の女の子が自分の意中の相手が錯覚だと気づいたときに、葛藤する描写がなかったのも気になりました。友達から連絡が入っているときのリアクションにもそういう冷めたところが見えて余韻を消してしまった感じがしました。でも、錯覚が消えたときの女の子の表情はとても可愛くていいなと思います。この方は、屋上での会話シーンがわかりづらいというのが最大の欠点で、ほかについてはかなり上手くまとめていると思いました。作品の持つ空気感や絵のタッチなどはとても魅力的だと思います。

THE GATE事務局員・長沢 ありがとうございます。ご指摘いただいた点をもとに次の作品を描いてもらおうと思います。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『好きな人の殺し方』は、
「週刊Dモーニング」22・23合併号に掲載されました。





[漫画] 『看板作家』
看板かんばん持子もちこ (千葉県・25歳)

ストーリー

どこかの雑誌の看板作家になることを夢見ながら、看板持ちのアルバイトにいそしむ新人漫画家の主人公。撤去されるのを避けるため、わざわざ人が看板を持って立つ看板持ちというものは、すなわち「人間であることそのもの」が仕事。それゆえ何をするでもなく暇な彼女は、看板を持ちつつ漫画のネタを考え始めるのだが……。

担当編集より

画力等の技量は一旦置いて、看板持ちというネタだけでこんなに面白い漫画が一本描けるんですね。感動しました。


編集部員・H野 担当です。二次選考から担当になりました。もともと、自分のホームページで4コマなどを描いていたところ、ウェブの漫画サイトから声がかかり、記事などを書いているそうです。掲載歴としては、ヤングチャンピオンで二回ほど読み切りが載ったことがあります。今回はTHE GATEのコンセプトに惹かれて、応募されたそうです。

一色まこと 看板持ちの仕事について、人が持っていなきゃいけない理由などがわかって面白かったです。看板と手をひもで結ぶことで、より暇な状態を目指すとか、そういうくだらない話もいいと思います。人間であることそのものが仕事だというセリフもいいですね。でも、少し話が長いなと思いました。自分の漫画が完成して、担当にダメ出しされるシーンで終わらせてもよかったような気がします。その後は繰り返しなので蛇足に感じてしまいました。くだらないことを言っている漫画だからこそ、作中漫画のなかでは正統派な熱い漫画を入れると、メリハリがあっていいかなとも思います。あとは、絵柄がのっぺりしているので、読んでいて少し退屈さを覚えました。

編集部員・H野 作者曰く、仕事の退屈さを伝えるためにわざと淡々とした絵を描いたということです。

一色まこと なるほど。だからなんですね。本当に退屈な気がするんですよ。狙いなら成功してますね。

ツジトモ 主人公は漫画家を目指す人ですから、暇や退屈さに対して抗ってほしかったです。確かに退屈さを表すのは上手くいっているとは思いますが、読者側としてはしんどいです。背景も淡々としているし、やはり、暇と言いつつ、読者が楽しめるものを提供するべきでした。それはキャラクターの動きによっても作れるものだと思います。このキャラクターがやると、退屈なバイトも面白くなるんだなと思わせて欲しかったです。

編集部員・H野 僕はすごく面白い作品だなと思っているんですが、確かにどこか足りないというか、熱くなれない部分を感じていました。ご指摘いただいた点をもとに新しい作品に取り組んでもらいます。


第2回THE GATE奨励賞受賞作『看板作家』』は、
「週刊Dモーニング」26号に掲載されました。


モーニング

モーニング

モーニング2017年51号
2017年11月16日発売
定価:本体324円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング2017年51号
2017年11月16日配信
スマホ版モーニング月額500円で配信中

[ダウンロードはこちら]

モーニング・ツー

モーニング・ツー

モーニング・ツー2017年12号
2017年10月21日発売
定価:本体546円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

アクセスランキング

  • 第1位

    モーニング・ツー

    デビルズライン

    花田陵

    Webで読む

  • 第2位

    モーニング・ツー

    マッドキメラワールド

    岸本聖史

    Webで読む

  • 第3位

    モーニング・ツー

    アニメタ!

    花村ヤソ

    Webで読む

  • 第4位

    モーニング

    終電ちゃん

    藤本正二

    Webで読む

  • 第5位

    モーニング

    コウノドリ

    鈴ノ木ユウ

    Webで読む

  • 週刊Dモーニングピックアップ
  • オリジナルWebコミック『独身OLのすべて』

モーニング

モーニング

モーニング2017年51号
2017年11月16日発売
定価:本体324円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング

週刊Dモーニング2017年51号
2017年11月16日配信
スマホ版モーニング月額500円で配信中

[ダウンロードはこちら]

モーニング・ツー

モーニング・ツー

モーニング・ツー2017年12号
2017年10月21日発売
定価:本体546円(税別)
発売中

[詳しくはこちら]
[単行本の情報]
[作品の情報]

  • 月額500円!お得な定期購読なら「週刊Dモーニング」
  • 単号で気軽に買うなら「電子版モーニング」

アクセスランキング

  • 第1位

    モーニング・ツー

    デビルズライン

    花田陵

    Webで読む

  • 第2位

    モーニング・ツー

    マッドキメラワールド

    岸本聖史

    Webで読む

  • 第3位

    モーニング・ツー

    アニメタ!

    花村ヤソ

    Webで読む

  • 第4位

    モーニング

    終電ちゃん

    藤本正二

    Webで読む

  • 第5位

    モーニング

    コウノドリ

    鈴ノ木ユウ

    Webで読む

こちらもオススメ!

アフタヌーン公式サイトへ