【モーニングの新人賞】 第69回ちばてつや賞一般部門の最終選考議事録を公開!

2016/06/02 00:00

ちばてつや賞] [新人賞

ちばてつや賞一般部門の最終選考は、ちばてつや先生をお迎えして行われます。

時間をかけて一作一作を丁寧に読んでくださったちば先生のコメントを聞き、その上で作品の担当編集は、自分の担当作品をちば先生にアピールします。

そのほかの各編集部員は、疑問点などをちば先生に質問。活発な議論が交わされます。


【1】 『ぼロボボロ』
瀬和居せわいノキユ(愛知県・18歳)


編集部員・J甲 今まで漫画を描いたことのない方なので、読者のことをまだそこまで意識せずに漫画を描いています。その辺りが今後の課題ですが、独自の絵の表現を持っている方だと思っています。絵が隙間なく入っているので、現状、けっこう読みづらい作りになっています。

ちば先生 そうですね。例えば「ザリッ」という音の表現が入っていても、背景の絵と混ざったりしていますね。

編集部員・J甲 ストーリーもややわかりづらいんですが、まずは背景と人物の描き分けなどの、基本的なことを今後指摘したいと思っています。表現したいことだったり、言葉のセンスを持っている人だと思うので、打ち合わせを重ねることで伸びていってほしいです。

ちば先生 読者を楽しませようという意識を、まだ持ってないでしょうね。例えばモチーフとして「初音ミク」のような人工的な音楽の世界を落とし込んだ感じがしますね。影響を受けたんじゃないでしょうか。

編集部員・T岡 たしかにミュージックビデオのように見えますね。

ちば先生 色がついたり、動いたりすればとてもわかりやすいんだけど、止まった絵だと難しい。絵はどこを切り取って、何を見せたいのかということを、一コマ一コマ考えないといけない。ただ感じてほしいだけのものもあるはずなんだけど、全部を描き込んでしまってますね。本人が描いていて楽しいということはわかるんだけど。

編集部員・J甲 読み手を考えると、画面の中に見せたいポイントがあったほうがわかりやすいということですね。

ちば賞事務局長・田渕 同人誌っぽいものを描いてくる人はいるんですが、本人にその意識はないんですよね。「漫画はわかりやすく描かなきゃいけない」ということも、たぶん意識がない。漫画の描き方の入門書みたいなものを、昔はだいたいの人が目を通して描いていたんですが、最近は読んでない人が多いですね。逆にインターネットで検索すると、もっと高度な技術の解説がたくさんある。つまり足し算とか九九をやらないままに、方程式をいきなり解こうとしている人が多いんです。それでも描けちゃう人が増えたっていうのも、同時に驚きではあるんですが。

ちば先生 感覚だけで描いて、今までにない表現ができるかもしれないよね。ネットやゲームの世界から影響を受けて、新しいものが生まれるかもしれないので、一律に基本をやったほうがいいということは言えないとは思うんだけど。

ちば賞事務局長・田渕 担当がついて、わかりやすくしなきゃいけないことに気付くと、急に成長する人もいるんですよね。

ちば先生 とにかくマイペースで自分だけで楽しんでしまっていると、もったいないですよね。趣味ならいいんだけど、少なくとも賞に応募するということは「私の作品をわかってほしい」と持ってくるわけだから、理解されるにはどうすればいいか考えないといけないね。


※『ぼロボボロ』は公開に向け準備中です。しばらくお待ちください(公開時期は未定です)。




【2】 『卒業して酒と煙草を覚えてしまっても君だけは黒髪のように変わらないでいてね。』
北橋きたはし勇輝ゆうき(大阪府・19歳)


編集部員・M本 担当です。19歳の方です。私は19歳のときにみっともなかったんですが、そもそも青春ってみっともないものだと思うんですね。そういうことを、青春の最中にある19歳の作者が、ある程度の距離感を持って描けるところがすごいです。絵に関しては、背景などの描き方に苦手意識があるみたいです。

ちば先生 たしかに背景なんかの絵はめちゃくちゃなんだけど、読ませるのが上手いんですよね。読みやすいです。かわいくて無邪気な、好かれそうなキャラクターを描いています。いいものを持っているんだと思います。こういう人は、あんまり絵が上手になるとつまんなくなるかもしれない。

ちば賞事務局長・田渕 まさに部内でもその話は出ていました。

編集部員・M本 今後どういう方向に向かうべきか、私の中でも答えは見つかっていません。たしかにあまり杓子定規に上手くなってもいけないと思いますが、基本的なことはできたほうがいいのかな、と考えています。

ちば先生 若い性欲や男女関係の話は、リアルに描くとドロドロしていやらしくなりますからね。絵がいやらしくなくて、いい雰囲気があるんだよね。

ちば賞事務局長・田渕 下手なんだけど、女の子がかわいかったりしますよね。

編集部員・M本 ちょっとエロいっていうのも伝わりますよね。

ちば先生 まだ発展途上ではあるので、これからどういう世界を表現したいのかを考えるといいと思います。同年代のキャラクターを扱ってますが、中年や老人、小さい子どもを交えたドラマを作れるかは、これからの努力次第だと思います。






【3】 『スマホケース』
陣野じんのハル(福岡県)


ちば賞事務局長・田渕 2016年1月期月例賞「モーニングゼロ」に投稿してくれたのですが、かなり評価されて担当がつきました。担当が聞いたところによると、漫画を描きはじめたのは去年くらいからで、初めて描いてみた作品が、本作のキャラクターたちが出てくる「タマオシリーズ」だそうです。

編集部員・M本 「モーニングゼロ」の投稿作も、本作とまったく同じキャラクターたちが出てくるんです。

ちば先生 お父さんも出てくるんですか?

編集部員・M本 そうですね。前作はお隣にヤクザが住んでいて…というお話なんですが、今回はもっと狭い範囲の、家族だけの世界で描いています。

ちば賞事務局長・田渕 編集部では『じゃりン子チエ』北九州版という言い方をされていました。ヤクザやヤンキーが出てくる世界が描ける人は強い、ということで推されていました。

ちば先生 そういうのが好きっていうことが、一つの才能かもしれないね。

ちば賞事務局長・田渕 最近の漫画家志望の人はそういう世界と縁遠い人が多いですね。この方は結婚してから北九州に移り住み、そこが大好きになって漫画を描きはじめたそうです。

編集部員・M本 前回の作品は4コマ形式のストーリー漫画なんですが、「普通の親子ではない」という背景があったんです。主人公の男の子が今こういう風に生きているのはどうしてなのか、という謎の解明がすごく感動的なんですよ。

ちば先生 おでんを持ってくる男の子にも何かあるんですか?

編集部員・M本 主人公の幼なじみみたいな存在なんですけども、前作では彼らは中学生という設定でした。あんまり学校に行ってなくて、夜釣りとかしてるような、そういう男の子でした。

モーニング編集長・宍倉 月例賞の作品もそうだったんですが、生活感を出すのがうまいですよね。安アパートに住んでいるところから、あまりお金ないのかな、と想像できたり。

編集部員・K林 24歳ですが、この若さで人情味あふれるお話を描けるということで、将来性が期待できるという評価もありました。

ちば先生 コマの強弱やテンポ、間の使い方がとてもうまいと思うんですよ。漫才のような、ボケとツッコミをリズミカルに畳み掛ける会話が面白くて、才能があると感じました。これからも面白いギャグを描いてほしいですね。


※6月16日(木)よりウェブ公開予定!




【4】 『ひみつの花園さん』
夕海ゆみ(東京都・25歳)


編集部員・J甲 担当です。第2回(2015年後期)THE GATEにて『三瓶先生の時間』で奨励賞を受賞したときに担当になりました。打ち合わせを重ねたことで、前作よりはるかに読みごたえのある作品を描けていると思います。

ちば先生 話の内容から考えるとページ数も適切だし、いい密度で作品を描いているね。登場する二人の女の子に、「実際にいそうだな」と思わせる存在感があった。モモは、彼女のナナとうまくかみ合わないと思いながら付き合っているんだけど、あるとき花園さんと出会うことで、「自分はナナとは違う人間なんだ」と自覚する。そのあたりの演出が上手かった。ただ、花園さんの顔にどんな傷があったかを、少し見せてもよかったかもしれないね。口に少しトーンを貼るくらいでもいいんだけど。

ちば賞事務局長・田渕 編集部内でも、傷を描かないのが気になったという意見がありました。

ちば先生 小さな傷でもマスクで隠したくなったり、それで悩んで引きこもる兄がいたりと、ちょっとしたことで人間は悲劇的になるというドラマなんだけど、傷自体は最後まで見えなかったから、少し迷ってしまった。

ちば賞事務局長・田渕 ちば先生のおっしゃる通り、ささいな傷ならその通りなんですけど、たとえばすごく大きな傷だったら、兄もショックを受けるでしょうし……。

編集部員・J甲 二次選考でそうした意見を聞いてから、「傷を見せる」という結末についても考えたのですが、見せ方が相当難しいな、と。傷がどんなものか気になったという意見を踏まえても、自分は見せないほうがいいと思いました。

ちば先生 そのあたりをどう感じるかは、読者ひとりひとりの感覚次第だから、たしかに難しいよね。だけど、それを別にしても、この作品の良さは十分に伝わってくるし、傷をあえて正面から描かずに、読者に気を持たせるという意味では、演出もすごく巧みでした。






【5】 『旧友』
みよ まちこ (東京都・21歳)


編集部員・Y江 担当です。美術大学の3年生の方です。漫画を描き始めたのは最近だそうで、さきほど同人誌の話が出てきましたが、投稿作はまさに同人誌用に描いていた作品です。

ちば先生 原稿のサイズが小さいのは、それでなんですね。

編集部員・Y江 そうです。A4サイズで描いています。黒髪の色気のある女の子を描くのが好きで、そこを原動力に描いたようです。

ちば賞事務局長・田渕 女の子の足首とか指とかがすごくエロいんですよね。冒頭にわざわざパンツを見せたり、サービスカットがふんだんに盛り込まれています。

編集部員・Y江 私が「パンツいいですね」って言ったら、「狙ってました」と言っていました。

ちば先生 海に落ちて、ゴボゴボと沈んでいくシーンもうまいよね。泡の描き方がいい。

ちば賞事務局長・田渕 海に対する愛情があるように感じますね。

編集部員・Y江 海に入るのは嫌いだけど、見るのは好きだと言っていました。海辺に住んでいたわけでもなくずっと東京暮らしだそうですが、好きだと言っていた『海獣の子供』の影響もあるのかなと。

ちば先生 だけど、お話がいろいろわからないまま終わってしまうのが惜しいですね。元恋人にフラれたという話も、事実は彼女が言っていたことと違ったわけじゃない。彼に恨まれているわけでもなんでもないよね。どうしてなのか、答えが出ないまま終わってしまう。

編集部員・Y江 結局、友達に会いたかっただけという。

ちば先生 読者を引っ張ってきて、いい世界まで連れてきているのに、途中ですっぽかしちゃったような感じに見えちゃうね。

編集部員・Y江 この作品は、描きながら話を考えていくという進め方で描き上げたようなので、きちんとネームを切っていないんだと思います。

ちば賞事務局長・田渕 女性同士の恋愛を「百合」っていうんですけど、その香りがすごくします。

ちば先生 そうすると、ふったとかふられたとかという男は関係ないんだ。

ちば賞事務局長・田渕 ハル子は主人公に恋心を抱いていて、男をダシにして逢瀬おうせを楽しみたかった、という風に私は解釈していました。

ちば先生 たしかに、ちらっとそういうのも感じたんだけど。百合だとしたら、ネームを切る段階で最後まで描いて、何を言いたいのか決めてから作画に進んだら、もう少しわかりやすく描けたんじゃないかな。

ちば賞事務局長・田渕 百合だとしたら、ハル子が主人公を彼氏のところに連れて行ったのにもちゃんと意味が出てきますよね。「別れた理由を聞いたら忘れられない人がいると言っていました」と、元彼に代弁させてるわけですよね。忘れられない子が主人公だったっていうことを。

ちば先生 主人公のかっちゃんがハル子の気持ちに気づかないまま、というのは爽やかでいいと思ったんです。うまいなぁと。「ただ私と一緒に出かけたかっただけ?」と聞くのは、「まさかそうじゃないよね」という意味で聞いてるんですよね。でもここで、一拍の間がある。この一拍にすごく意味があるんです。その後、ハル子がくるっと振り向いて「うん!」と答える。もし最初から百合だと思って読んでいたら、心の揺さぶりがドーンとくるんですよ。そういうことがもうちょっと読者に伝わるようになれば、もっといい作品になったんじゃないかな。あんまりわかりすぎると逆につまらなくなってしまうから、さじ加減が難しいんだけど。

ちば賞事務局長・田渕 最後のシーンはそうですよね、「私と一緒に出かけたかっただけ?」に「うん」と答えるのは、告白ですよね。

ちば先生 一拍のコマの背中がもの悲しいんですよね。ジーンときます。これは悲しい恋のお話だったんですね。

編集部員・J甲 途中でふたりの関係性がうまく伝わる演出があれば、そう読めたかもしれないですね。

ちば先生 そうですね。だから最初に彼女の家でフラフープやってるんだな、とか、そういうものが全部わかってくるのに、もったいないです。でも冒頭もうまいし、この人にはセンスを感じます。担当編集者がついてしっかりネームを切っていけば、いい作品を描けると思いますよ。


※6月9日(木)よりウェブ公開予定!




【6】 『100個の願い』
蒲郡がまごおり灰鵡はいむ(大阪府・21歳)


ちば賞事務局長・田渕 私が担当です。作者はずっと漫画家になりたかった方で、実際に描き始めたのは半年前ということです。漫画をたくさん読んでもないのに、独自のタッチでしっかり一つの作品を仕上げる力がある方だと思いました。

ちば先生 いい雰囲気で、朴訥ぼくとつとした世界観を持っているんだけど、ストーリーの本筋が見えにくかったです。「この子が主人公で、こういうお話」というのが、8ページくらいまで読まないとわからなくて……。短編の漫画は、最初から「この人を見てね」というのがはっきりしていないといけない。『三丁目の夕日』なんか、参考になるかもしれないね。魔法の帽子と話しているシーンも、最初は帽子がしゃべっているとわからなかったので、ストーリーだけでなく、絵も工夫できるようになると、もっと良くなるんじゃないかな。

ちば賞事務局長・田渕 今後は「読者にとって、わかりやすく描かなければいけない」という意識を持って、伸びていってくれればと思います。他に、気になったところはありますか?

ちば先生 この作品に描かれている世界は、ちょっと作り物に見えてしまう。「どの時代の話なのか」「場所は都会なのか田舎なのか」「物語の季節はいつなのか」、というようなことも描いていれば、描かれた世界にもっとリアリティが出たと思うよ。






【7】 『刺されたら十字をかけ!』
ならねこ(東京都・27歳)


編集部員・K林 初投稿です。かなり文字数が多く、読みにくい作品なのですが、部内選考では個性的なネタや独特のセンスが評価されました。

ちば先生 たしかに読みにくい作品だったね(笑)。ただ、頑張って読むと、セリフの一つ一つはうまいんですよ。作り物の会話ではなく、自然なやりとりができている。心地よいリズムで、文章は上手だと思いました。

ちば賞事務局長・田渕 編集部内でも、読みにくさは指摘されていたのですが、一部の熱狂的な支持を集めて最終選考に残りました。私も、支持をした一人です(笑)。

ちば先生 テンポはいいから、もうちょっとほぐして読みやすくしたら、読み味も変わってくると思います。セリフはできるだけ少ないほうがいいんですよ。漫画なんだから「読ませる」のではなく、表情や雰囲気で「感じさせる」画面作りを心がけてほしいです。







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