【モーニングの新人賞】 第68回ちばてつや賞一般部門の最終選考議事録を公開!

2016/01/21 00:00

ちばてつや賞] [新人賞

ちばてつや賞一般部門の最終選考は、ちばてつや先生をお迎えして行われます。

時間をかけて一作一作を丁寧に読んでくださったちば先生のコメントを聞き、その上で作品の担当編集は、自分の担当作品をちば先生にアピールします。

そのほかの各編集部員は、疑問点などをちば先生に質問。活発な議論が交わされます。


【1】 『パフューマン』
かけい昌也まさや (東京都・37歳)


ちば先生 これはとても読みやすかった作品です。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 作品について説明させていただきます。作者は第35回(2013年後期)MANGA OPENに映像作品を応募して奨励賞を受賞した方です。現在は映像作家としてフリーで活動をしています。今回の作品は“匂い”をテーマに打ち合わせを重ね、出来上がりました。荒削りな部分もあるかと思いますがストーリーと絵についてぜひご評価を伺いたいです。

ちば先生 ストーリーは意外性があってとても面白かったです。主人公は安居やすいさんの容姿ではなく、シナモンの香りがする匂いに惹かれるんですが、それがよく分かる描き方ですね。友人は男臭くて、だらしなくて——、でもそんな奴に安居さんをとられてしまうという話の展開がすごく面白い。

ちば賞事務局長・田渕 2次選考では、「主人公が最低すぎる」という意見が出ていました。安居さんに恋していたけど、別のいい匂いの女性が出てくるとすぐに「僕と結婚して下さい」と、コロッと変わってしまうという。

ちば先生 うーん、そこまで酷い奴だとは思わないけど。この女性からもシナモンの匂いがしたのかな?

ちば賞事務局長・田渕 多分、安居さんのような自分好みの匂いがしたんだと思います。

ちば先生 そういうことだよね。安居さんにがっかりする気持ちもよく出ていたし、怒る表現もすごくよかった。だけど、ラストは少し安易だったね。主人公はいい会社に勤めているようだけど、仕事も地位も全部捨てて、味覚、嗅覚が鋭いから両親のもとで料理の技を磨く、みたいな終わり方がよかったかもしれない。でもそれ以外はすごく面白かった。自分が太ろうが不健康になろうが安居さんに好かれるためだったらという主人公が、健気で本当に応援したくなる。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 ありがとうございます。






【2】 『VLAANDEREN』
吉田よしだまん (茨城県・22歳)


ちば先生 人間が繰り返し戦争ばかりしているという風刺を込めて作った作品なんだろうね。でも自分が言いたいメッセージを上手く言えてないね。文字では語っているんだけど、説明ではなく感じさせることがまだできていない。

編集部員・K林 担当です。作者は大学4年生、この作品が1作目です。漫画家になりたいという強い思いでちばてつや賞に応募してくれました。編集部内では「よく61ページを描き切った」という評価でした。

ちば先生 本当に「努力賞」ですよ。

編集部員・K林 彼自身、まだ漫画の描き方を分かっていないですし、キャラクターの表情も乏しいです。描き方のイロハができていないんです。もちろん、次回作に期待したいんですが、人物の表情がほとんど描けていないので、それをどう学んでもらうか考えています。どうしたら漫画らしい表情や表現になるのか、アドバイスをいただきたいです。

ちば先生 登場人物は兵隊だから同じような格好をするのはしょうがないけど、みんな同じように見えてしまう。こういう世界にも参謀みたいなおじいさんがいてもいいと思うんだよね。他にも食料を運ぶ労働者がいたりと、いろんな人間が出てきてほしい。老人、若者、赤ん坊といったように、世代の違う人間や、デブだとか痩せだとか筋肉質だとか多彩なタイプの人間を描けるように、写真や身近にいる人を見てスケッチしたらいい。まだ若いだけに、これからが楽しみです。長い作品を最後まで描き続けたのは、才能だと思います。

編集部員・K林 そうですね。まだこれからなので、ちば先生にまた読んでいただけるよう頑張ります。






【3】 『夏の悪友』
はら九五きゅうご (東京都・26歳)


ちば先生 世相を表しているというか、いじめの問題を扱う作品で、切実でつらい状況を描いていますよね。

ちば賞事務局長・田渕 顔の見えないものではなくて、悪いボスが一人いていじめているという設定なので、すごく陰湿ではないんですが。

ちば先生 たしかに、みんなからいじめられてるわけじゃないもんね。

編集部員・T岡 担当です。作者はキャラクター二人の人間関係を描くのは上手なのですが、キャラクターの役割や背景もしっかり描けると、より魅力的な作品になると思いました。キャラクター同士が絆を深めるだけでなく、パーソナリティを深められるような題材を探しているのですが、ちば先生のご意見を伺えればと思っています。

ちば先生 若い人たちは自分の経験を描きますよね。今作の場合、家族が全く出てこないのが気になります。家に訪ねていけば両親がいるかもしれないし、おばあちゃんやおじいちゃん、それに飼い犬がいるかもしれない。そういう描写がちょっと入ると、生活感をリアルに表現できると思う。「学校生活はうまくいってないけど、猫には好かれてる」とかね。背景にチラッと見えるだけでもいいから、道具立てを丁寧にやると人間性が出てくる。若い人にオススメしたいのは、いろんな映像をみたり、本を読むこと。そうすると人間観察ができる。いろんな人間がいる中で、主人公はコイツしかいない、という説得力のある表現ができるようになるといいかな。

編集部員・T岡 ありがとうございます。

ちば先生 それと賛否両論あるかもしれないけど、私の感覚からいうと、主人公の眼を「魚の腐ったような眼」として真っ黒い玉にしてしまうのはどうかなと。これだけリアルな絵なんだから、普通の眼を描きながら少しクマをつけることで表現したり、眼に力がないことによって読者に「本当に眼が死んでるな」と思わせることはできると思いますよ。すごく充実した夏休みを過ごした後も、眼が同じというのも気になります。

ちば賞事務局長・田渕 眼以外のところで生気が戻っているのを表現しようとはしていますね。

ちば先生 それは感じます。雲が晴れて空が見えてきたりして、今まで空を見なかった奴が空を見るようになったんだな、という。その辺りはよく描けていると思いますよ。


第68回ちばてつや賞入選『夏の悪友』は、1月28日(木)配信開始の「週刊Dモーニング」9号に掲載され、その後ウェブでも公開予定です。




【4】 『リボルテック谷口』
二宮にのみや正明まさあき (千葉県・26歳)


ちば先生 この「リボルテック」というのはどういう意味なんですか?

編集部員・N沢 担当です。海洋堂の「リボルテック」という可動式のフィギュアのことです。

ちば先生 それは若い人はみんなが知ってるものなの?

編集部員・T岡 いや、フィギュアに興味がある人が知っているくらいだと思います。

ちば先生 知ってる人はすごく面白いかもしれないね。僕はそれを知らなかったから、初めは「リボルテックって何なんだろう?」と少し戸惑いました。言葉の意味が理解できると、この作品の面白さが分かってきました。

ちば賞事務局長・田渕 作品と一緒にちば先生にリボルテックの資料を送ればよかったんじゃない?

編集部員・K林 資料を見ないと作品の意味が分からないっていうのは、漫画としてはあんまりよくないかもしれませんね。

ちば先生 あと、「リアル」と「超現実」のどちらとして読んでいいのか迷ってしまいました。両親はリアルな人間の顔なのに、娘の腹話術人形みたいな顔を見て「よく生き返った」「よく助かった」と喜んでいたり、小春が手を取っ替え引っ替えして遊んでいるところを見て先生が「こら、授業中だぞ」と叱っていたりするでしょう。「え、これで親は喜ぶのか?」とか「えっ、注意するところそこなの?」とか、いろいろ引っかかって。

ちば賞事務局長・田渕 たしかに、その辺りはリボルテックを知っていても分かりにくいですね。

ちば先生 作者が「こう読んでほしい」っていう方向で演出すべきでね、そういう意味ではちょっと演出に失敗しているね。

編集部員・N沢 この方は苦労してきた経験があるからか、作品を暗い方向性にしたがるんです。救いのない話を描くので、できれば明るいものを描いてほしいとお願いして、この作品が生まれました。

ちば先生 それはいいアドバイスですね。でもこういう話にしてはキャラクターの絵が少し重いですかね。ここまで斜線を入れなくてもいいと思います。劇画調じゃなくて、もう少し丸っこい絵でもいいかもしれませんね。たとえば藤子不二雄Ⓐさんはそういった絵で『笑ゥせぇるすまん』のようなスリルのある話も描いたりするでしょう。丸っこい絵でそういう話を描くと、ぞっとするわけだよね。最初から暗くて重い絵だと、そんなに驚かない。

編集部員・N沢 なるほど。

ちば先生 キャラクターはちゃんと描き分けられていますし、背景の描き方もなかなか上手いです。とても素質のある人だと思うので、斜線を使わないで、主線だけでキャラクターが表現できるように練習するといいと思いますよ。






【5】 『うつくしい子ども』
春田はるたりょう (東京都・28歳)


ちば先生 非常につらい話ですね。絵も話もリアルで読んでいてつらくなります。母親はアル中というか、精神的な病気なんだろうし、「ごめんねごめんね」と言いながら子供を傷つけるところもリアルだね。

編集部員・Y江 私が担当です。漫画を完成させたのは3作目だそうです。働きながら制作しているので、かなりざっくり描いたと仰っていました。

ちば先生 ちょっと疑問に思ったのは、この徳ちゃんという男が、ただの近所のおじさんなのか親戚なのか、主人公とどういう関係かという点ですね。なんでこの子を、こんなに可愛がってくれるのかな。この女の子は可愛いし、何か下心があるんじゃないの?って変な勘ぐりをしてしまう。

編集部員・J甲 出会うきっかけは、なさそうな二人ですよね。

ちば賞事務局長・田渕 この店の上にアパートがあって、女の子はそこに住んでるんだと勝手に思ってたら違いましたからね。

ちば先生 家から離れているのになんで知り合ったのか、疑問に思っちゃったな。しっかり描かなくても、ちょっとでいいから関係性を匂わせてほしかったかな。例えば、ちょっと遠い血の繋がりがある人で、母親のことも知っていて「あんな家にいるなよ」「そこから離れろ」とか言ってくれる人であって欲しかった。だけどいい男だよね、この徳ちゃん。口数は少ないんだけど優しい。

編集部員・Y江 2次選考会で、弟に対しては「物語のために作られたキャラクター」といった意見がありました。作者自身も、「弟がいないとネームがまとまらない」と思って入れたようです。

ちば先生 弟の死っていうのはショックだよね。お姉ちゃんに全幅の信頼を寄せていて、このお姉ちゃんがいる限りこの子は死なないだろうと思っていたら、簡単に殺しちゃって、ちょっとびっくりしました。でもよく描けていると思います。作品として描く場合に、自分の思いがどうしたら伝わるかが大事なんですが、これはよく伝わってきますよ。「大人には逃げ道がある」というセリフがありますが、ここを言いたかったんだろうなと。重いですが、とてもいい話だと思います。


第68回ちばてつや賞入選『うつくしい子ども』は、1月28日(木)発売の「モーニング」9号に掲載され、その後ウェブでも公開予定です。




【6】 『ODD FUTURE』
中島なかじまゆう (東京都・23歳)


ちば先生 タイトルはどういう意味ですか?

編集部員・J甲 タイトル自体は、作者が好きなアーティストの曲名からとっています。ODDが「奇妙な」とか「おかしい」という意味なので、「おかしな未来」くらいの意味でしょうか。

ちば先生 この作品は何作目くらいですか?

編集部員・J甲 コミティアで持ち込みを受けたんですが、オリジナルで描いたのは1作目だという話をしていて、これはすごいと思って担当になりました。

ちば先生 1作目ってすごいね。いいものを持っていると思いますよ。ただ1回読んだだけではよく分からなかった。漫画って流し読みするものでしょう。いっぱい人が出てくるし、セリフが多いし、1コマの中に情報がたくさん入ってる。だけど2~3回読むとどんどんいいものが出てきて、気持ちが伝わってくる。セリフなんかも上手いしね。キャラクターの描き分けも上手い。今後が楽しみですね。

編集部員・J甲 読みにくさが気になるということでしょうか?

ちば先生 よくジュースに例えるんだけど、「濃縮ジュースのまんま」という感じだね。とてもいい味なんだけど濃すぎて、ちょっと水で薄めると美味しいという。人生も語ってるし、グズグズ生きるキャラクターもいい。「馬鹿は力の入れどころが違う」って言うけれど、こういう奴はよくいるよな、ということを感じさせるいい話なんですよ。もうちょっと情報を分散して、薄めてあげるといい。読みやすさっていうのは大事だからね。

ちば賞事務局長・田渕 主人公の顔の造形はどうですか? 自分をイケメンじゃない、ダメな奴と卑下しているような風貌でリアルではあるんですが、主人公なので三枚目に近い二枚目半でもいいんじゃないかと思ったんですけども。

ちば先生 たしかに二枚目じゃなくても、主人公だとすぐに分かるといいね。だけど私はこの顔がいいと思うな。

編集部員・J甲 たしかにここまでダサくしなくてもいいかもしれませんが、主人公はダメ人間だというところから入って、実は周りの人が評価していたっていうお話だから造形が難しいんですよね。

ちば先生 だけどすごくいい演出力を持っているんだよね。この二人はいい人生を見つけたな、ということを説明するでなく感じさせるラストもいい。とても才能がある方だと思います。






【7】 『無刻さん』
左藤さとう真通まさみち (東京都・35歳)


ちば先生 なかなか個性的な絵で、いい味を出していると思います。

編集部員・K田 他誌で数作品読み切りが掲載された経験のある方です。気になっているのは個性的な絵柄です。キャラクターの骨格が明らかにおかしかったりするのですが、多くの人に読んでもらうためには今後どうしていくべきか、ご意見を伺えればと思っています。

ちば先生 ひょっとすると味になるのかもしれない。紙一重なんですよ。変な顔だな、と思ってもそのキャラクターの生き様だとか言動で顔が好きになることもある。絵のタッチも含めていい味のような、泥くさいようなすれすれのところで勝負しているので、もしかしたら独特の世界を作る人かもしれない。絵に温もりがあるので私は好きですけどね。のどかな顔をしていながら、親に売られたっていうかわいそうな子供が出てきてとてもつらかった。母親の体が弱いから帰らなくちゃいけないんだけど、その母親が自分を仕方なしに売ったんじゃなく、積極的に売り飛ばしたっていう話でしょう。それが人間なんだよ、ということを言いたいんだろうと思いますし、話の内容からするとこの絵が合ってる。あんまりリアルだとつらすぎる話ですよ。いい味を出してると思います。自身が描きたいキャラクターでのびのびと何本か描くといい。

ちば賞事務局長・田渕 今回の作品の中だと一番プロに近い方なんですが、次のステップに行くにはどうしたらいいでしょうか?

ちば先生 廓の人間関係みたいなものはチラッとしか出てこないけど、調べて描いてるでしょう? そういうシリーズみたいなもので描けたらいいかな。

編集部員・K田 資料を読み込むことをきちんとやられる方ではあります。

ちば先生 いいね。時代劇を描くというのはすごく大変なことだし、廓の中というのは独特の世界だからね。セリフも調べないといけないし、今の若い人たちがなかなか描けない世界だから。私は杉浦日向子という人が好きですけどね。江戸に生まれたかったっていうくらい、江戸が大好きな人でね。あの人の短編なんかを読むと、すごく勉強になると思いますよ。







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