【新人賞】 第67回ちばてつや賞、2次選考の議事録を公開!

2015/06/11 00:00

ちばてつや賞] [新人賞

ちばてつや賞一般部門の2次選考は部内選考会です。

モーニング編集部員全員で議論を行います。その場で、自分の気に入った作品を最も熱を込めて説明した編集部員が、その新人作家の担当編集となります。

参加者全員の投票で上位となった作品が、最終選考へと進みます。



『ぬめぬめして』
水越翔大(京都府・26歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・T岡 吸血鬼の話ですね。第36回(2014年前期)MANGA OPENの『葉緑体人間』という作品で奨励賞を受賞された方の新しい作品です。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 私が担当をしています。ネームが出てきて、主人公の妻のキャラクターなど、2回くらいやりとりして手直しをお願いしましたが、基本的には作者が描きたいというものを描いてもらいました。これが2作目なのですが、あらためて思ったのは、この作者は物語を作れる人なんだと思います。登場人物のセリフもいいものが多いし、人間はチャーミング、サイコーに味がある。前作から指摘されていた画力の問題ですが、毎週締め切りを設けて、絵の模写をしたものを提出してもらっています。その甲斐あってか、上達したんじゃないかと思っています。ガッツがあって、非常に将来性のある人だと思います。

モーニング編集長・島田 バツグンに漫画が上手くなったんじゃないの? あまりネームの修正をしていないと聞いて驚いたな。たしかに絵は上手くなりつつあると思うしね。前作はインパクトはあるものの冗談みたいな設定だったけど、今回のだったらOKでしょう。ちば先生に見てもらうべきレベルに達していると思う。演出力があって、話を読ませる力を強く感じるな。それに、「ぬめぬめして」というセリフの使い方がよかったんじゃない?

モーニング・ツー編集チーフ・三村 打ち合わせしていて楽しいのは、いいシーンを作ってほしいと依頼したら、こちらの予想を越えたいいシーンを作ってくるし、サービス精神が旺盛なので、セリフの一つ一つを錬ってくる。

モーニング編集長・島田 「ぬめぬめして」なんかも彼のアイデア?

モーニング・ツー編集チーフ・三村 ええ。「ねらちぼんぬ」なんかもそうですね。

編集部員・F士 私も「ぬめぬめして」がたまらなかったですね。また、吸血鬼が言葉が通じないという設定が上手いと思いました。そして、それが最後のオチにつながっているのがさらにいいですね。

ちば賞事務局長・田渕 「ぬめぬめして」……たしかにいい響きですね。人に読んでもらうとさらにいい。まさに声に出して読みたいセリフだね。




『草魂 KUSA-SOUL』
松野雄作(埼玉県・23歳)

【ストーリー】 重度の喘息を患いながら甲子園を目指し挫折した青年が、再び甲子園を目指す! 草野球で!!

編集部員・K持 第66回(2014年後期)ちばてつや賞で、元彼女が自殺したことがトラウマとなった主人公が同級生と出会って……のような内容の作品を投稿して2次選考落選された方です。会ってみたらマジメなんだけど面白くて、非常にバイタリティあふれる人でした。20歳という若さで立ち上げた会社を経営しながら漫画を描いています。で、休日は草野球をこれまた熱くやっている。漫画の技術はまだまだ上達すると思いますが、気持ちの熱さは随一だと思って担当をさせていただいています。好きな草野球で作品を描いてみようということで挑戦してもらいました。

モーニング編集長・島田 前作に比べて絵は非常に上手くなってるよね。

編集部員・K藤 以前、この方から持ち込みを受けたことがあって、それが第66回ちばてつや賞の投稿作だったんですけど、今回はすごく絵がよくなって、ケレンミたっぷりのいいものになったと思います。

編集部員・T本 絵は熱くて派手でいいんですけど、草野球がテーマなんで、ちょっと話が小さくまとまっちゃったような気がします。

編集部員・S原 絵が上手くなってるのかもしれないけど、画面の構成が荒くて、すべてのコマで誰がどういう状況で、何をしているのか全然わからなかった。本人は野球をやっているから、読者もわかるだろうと思っているようだけど、自分だけが理解しているのではなく読者にわかるように描く必要があると思いました。

編集部員・K渕 たしかに寄りの絵が多いですよね。人物のバストアップばかりでメリハリがない気がします。話のスケールが小さいとは思わなかったけど、とにかくどんどん作品を描いて練習したほうがいいんじゃないかな。

編集部員・Y原 読者が懸命に読み込まないと情報が入ってこない漫画、つまり読みにくい漫画を描く癖が直らない人は、好きな漫画家の作品を丸写ししてみるといいと思います。

編集部員・S原 野球はこの作者の得意分野でしょうから、描きたいのはわかりますが、野球以外のものを描いたほうがよさが出るような気もします。

ちば賞事務局長・田渕 原稿から察するに器用な人ではないと思うんです。でも、地道にコツコツ積み上げていく人ならではの「ウリ」になるものがあるはず。言葉は悪いけど、ドンくさい印象の画面だからこそ、読者の心を打つというような。野球漫画は、これまでやり尽くされていますが、この作者しか出来ない新機軸を見つけられるといい。

モーニング編集長・島田 ものすごい素晴らしい絵が描ける可能性を秘めた雰囲気の絵ではある。ただ、どうしても新人の人は自身の周囲の話、つまり半径3メートルの話を描きたがるし、それが描きやすいんだろうけど、もう少しそこから離れたところで、大きな話に挑戦してみたほうがいいかも。この絵の雰囲気は大きな話が合うような気がするな。




『天国に一番近い場所』
平沢ゆうな(東京都・29歳)

【ストーリー】 自殺幇助が合法化されて15年がたった日本。主人公・坂上葵は安楽死を希望し自殺幇助を行うNPO「サルーテム」を訪れる。しかし、安楽死したはずの葵はまだ生きていて——。

編集部員・Y江 持ち込みを受けた作品です。ほとんど直さず、賞に出してもらいました。漫画を描き始めてから2~3作目だそうです。人の死というテーマの重さを描ききれていない部分もありますが、ご意見うかがえればと思います。

編集部員・M月 話に破綻もあるのですが、非常に頑張ってチャレンジしているのが伝わります。ちば先生に読んでもらって、ご意見をうかがいたい作品だなと思いました。

編集部員・F島 絵はかわいいですが、最終的に主人公が死ぬしかないという悲しい話ですよね。もう少し主人公の人生に選択の余地があってもいいかと思いました。ただ、さきほど編集長が言った「半径3メートル」の話ではない大きなテーマを扱っていて、そこは好感が持てると思いました。

モーニング編集長・島田 いや、こういった話こそ、半径3メートルの世界でしょう。

編集部員・F島 ……。

ちば賞事務局長・田渕 編集部員のコメント読むと「何で最後に主人公を殺さなければならなかったのか」という意見が多かったですね。話が急展開するのかも期待して読んだが、結局何も起こらずに終わってしまった。ものたりない読後感でした。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 ただ、非常に将来性のある作者だと思いますよ。世界観には、やや破綻した部分もあるかと思いますけど、ありえそうなことをあることとして、信じられるように巧みに伝えている。作者の知性を感じました。絵も上品に見えますし、非常に可能性がある作者なんじゃないかなと思います。

ちば賞事務局長・田渕 テーマは重いけど、器用に描ける技術があるんだと思う。ただ、ワンアイデアで上手くまとめてしまったような感じがあるんだよね。こういう新人は少なくない数いるから、そこから頭ひとつ抜け出すために、どうすればいいか検討したほうがいいかも。




『新入社員ゆとり教育』
夏目理名(東京都・27歳)

【ストーリー】 上杉ななんは、国際ブランドの化粧品大手企業・華正堂に勤める、入社4年目の頭脳明晰・容姿端麗なスーパーOL。そんな彼女が、ある日、華正堂社長の令嬢の教育係を任され!?

編集部員・S根 2年前くらいにMANGA OPENにネーム原稿を応募して1次選考で落選した方ですが、その後コツコツやってきました。かなり明るい話を描いてくれまして、まさに「読めば元気になる!」漫画に違いありません。作者は描きたいことがハッキリしていて、とにかくバカな話が描きたいんです。エネルギーがあって若々しい。みなさんいかがですか?

編集部員・T橋 これは非常に面白かったです。絵もかわいいし、もう、連載で読みたいなと思っちゃいました。

モーニング編集長・島田 それは、モーニングの読者のことを考えての連載ということ? それとも自分の好みで読みたいということ?

編集部員・T橋 自分の好みではありますが。

モーニング編集長・島田 読者が読みたいものじゃないと意味がないと思う。価値判断が自分の好みだけでは、ただの趣味でしょう。

編集部員・S根 でも、この作品は若い読者には受ける気がするんです。おバカな内容で、どんなに疲れた時でも気構えずに楽しく読めますし。

編集部員・T幸 ただ、登場人物の目が死んでいるというか、見ていられないんですよね。キャラクターの目は重要だと思うのですが。絵はもう少し工夫したほうがいいような気がします。

ちば賞事務局長・田渕 (漫画制作ツールの)「コミポ」で作ったみたいな無機質な絵なんだよね。ただ、内容的には個人的には好きなものではないけど、このプラスチックな軽いノリは受ける気がする。意外と編集部員内で評価が高くなかったのが驚いた。

モーニング編集長・島田 たしかにプラスチックな印象。今のモーニングの対極にあるような、緩くて読みやすいものだよね。モーニングには向かないような気がするが、世間的には今は受けるかも。

編集部員・S根 作者はツイッターで1コマ漫画をアップしているのですが、それが、800ツイートされるとかで注目はされています。

モーニング編集長・島田 今は媒体がたくさんあって、我々のところでは、モーニング、モーニング・ツー、Dモーニング、Webのモアイがある。これからは、作品ごとにどの媒体に合っているかも考えて作っていってほしいということです。さっきの話でも言ったけど、「僕は面白かった」なんて意見はプロの言うことではないんだよ。

ちば賞事務局長・田渕 ちばてつや賞はモーニングだけじゃなくて、モーニング・ツーやDモーニングの次を担う作家・作品を探す賞です。

モーニング編集長・島田 だから、議論の際に、どの媒体に載せるのがいいかという目線をもって話をしてほしいんだよ。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 私は、S根からネームを見せてもらったりしていたので、担当はモーニング・ツーへの線も考えているのかと思っていました。ただ、この作品はとっかかりがないというか、どっかから引っぱってきたネタをただ描いているように見えるんだよね。軽いだけというか。

編集部員・S根 ええ、そうですが、担当としては、この軽さを生かして、この作品はネットのようなライトユーザーが多いところでは最適だと思っています!

モーニング編集長・島田 これは語り口とかキャラの明るさを評価するべき作品なんでしょ。ただ、作品を貫くワンアイデアがないのが問題ってことだと思う。それがバシッと決まればいいんじゃないかな。評価すべきは、いい感じで情報が少ないんだよね。モーニングはついつい情報量を増やしてしまうからさ。この作者は文字が嫌いな感じすらあるところが逆にいいんだよな。

編集部員・M本 絵は上手くなっているんだけど、無機質にもなってきている、そこは問題でしょうね。

ちば賞事務局長・田渕 たしかに印刷には耐えられないかもね。

編集部員・K林 しかも絵をコピーしちゃってますよね。同じ顔、同じ表情が随所に見られます。これはやめたほうがいいんじゃないでしょうか。

ちば賞事務局長・田渕 同じページにコピーした絵があるしね、なんて大胆な(笑)。

編集部員・S根 いやいや、これはデジタルの可能性にかけた挑戦的な行為でして(笑)……いや、すみません、はは、たしかにそうですね。




『誰も知らないブルース』
糸吉了一(千葉県・24歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・F沢 今回、一番面白く読めた作品でした。作品が成立するには、テーマ、アイテムなど複数の要素が必要なんだなと思い始めていますが、この作品には、「男女同権」、「アイデンティティー」、それに加えて「ダンス」という要素があったんで、エンターテインメントとして成立しているなと思います。最近、律儀に一コマ一コマに吹き出しを入れている漫画が多い中で、語り口も抑制が利いていて、かみくだくように語っているところが気持ちよく読めました。モーニング本誌で試してみてもいいような作品かと思っております。

編集部員・T岡 私はモーニング本誌向きの作品ではないように感じました。上手くまとまってはいるものの、何か心に残るものがあるかと言われれば、特にないような気がします。

編集部員・O道 日曜日の昼下がり、誰もいない編集部で読んで号泣しましたよ、私。ままならない日常から逃げ出すのではなくて、折り合うように受け止めている……こうあるべきという、世間から押しつけられるようなプレッシャーを上手く受け止められない人には、突き刺さる話です。絵もいいし、すごい才能を感じました。

モーニング編集長・島田 せっかく、これくらいの話を作れるのに、なんで高校を舞台にしちゃうのかと思う。これが大人が主人公の話ならいいのにな、と思って読んでました。まあ、新人の方は自分の知ってる世界しか描けないだろうから、仕方ないのかもしれないけど。

ちば賞事務局長・田渕 おそらく漫画家志望者に「自分の知っている世界を描きなさい」と指導している人が、どこかにいるんですよ。「知らないものを背伸びして描いてもすぐばれるから」って。だから、いわゆる「半径3メートル」の世界の話を描く人が多いんじゃないですか?

編集部員・K藤  でも、主人公の男女が、ダンスの舞台ではなく、誰も見ていない体育館のウラで踊るあたりの演出なんかはすごく上手いから、高校生が主人公でない大人の作品も描けるんじゃないかと思いますよ。

編集部員・K井 私は、高校が舞台になっていてもいいじゃないかと思います。誰しも16歳だったことはあるわけですし、そこで描かれているものが、大人が読むに足るものだったら問題ないわけでしょう。私なんか、かつて失ったものを突きつけられたような気がして、非常に感動を覚えましたけど。

編集部員・K本 いや、描かれている内容も子供っぽい話だと思いますよ。男と女の役割が上手くいかないあたりとか、ダンスを舞台でない校舎裏でやるあたりも含めて、人間が描けているというより、少年・少女のたわいのない話のような気がしちゃって、少女漫画の世界のように読んでしまいました。

ちば賞事務局長・田渕 漫画の描き方が非常に上手くて心地よく読めるんだけど、喫茶店でかかっているBGMみたいにサラッと気持ちよく流れて、読み終えて何も残らないところがある。

編集部員・T山 ただ、こういう作品がきっちり面白く描けるわけですから、担当がついて、きっちり打ち合わせした上で、いいテーマが出てくれば、より面白いものが出来る可能性があると思います。




『最果てより』
春ノエオ(北海道・16歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・T岡 話にややご都合主義的な部分も見られますが、16歳という若さのおかげか、非常に独特の世界観を持っている気がします。父親の狂気、泣きながら殴っている主人公の描き方など、この作者にしか描けないものが出てきている。長い目で見て判断したいと思っています。

編集部員・H野 僕も、若いし才能ある人だと思います。

ちば賞事務局長・田渕 たしかにキャラクターへの想いはすごいものがありますよね。こんな風に人物を描ける人って、なかなかいないよね。

編集部員・T内 作風から想像すると福満しげゆきさんとか宮崎夏次系さんの影響を受けているような気がします。振り返った親父の眼球の小ささとかね。ただ、もしそうだとしても、単なる物まねではないオリジナリティーもある。この作品自体は荒削りで評価は高くありませんが、今後に期待したいと思います。




『就活先生』
枕本早起(徳島県・28歳)

【ストーリー】 教師という職に限界を感じ、就職活動に精を出す勝大吉(かつ・だいきち)。面接に次々と落ちる日々を過ごしながら、生徒が起こす問題に係わっているうちに、教師としての大切な何かをつかみ始める。

編集部員・F島 私が担当している方の作品ですが、以前開催された編集部内のネームコンペに提出したものです。就職活動を続ける教師が、その使命に目覚めていくという内容のものですが、ネームを原稿にしましたので、ぜひ、ご意見ください。

編集部員・K林 教師ものを読むと思うんですけど、主人公の教師が中学なり高校なりの生徒とやりとりでドラマが生まれてくるものが多いですよね。その際、生徒という子供の意見で納得するようなことがないんですよね。そうすると、読者もそうですけど、我々のような大人が教師ものを読む意味ってどこにあるのか、何を楽しみに読めばいいかわからないんですよね。

編集部員・Y根 僕はまったく違う意見を言いたいな。教師という仕事は、それはもう、大切で高貴な非常に意義のある仕事なんですよ。教育というものは人間にとって最上級に大事なもので、人間と人間の間をつなぐ教師は最高な職業なんです。教育は人間の基本ですからね。この作品の問題は、そんな重要な教師という仕事を捨てて転職活動を続けている人間が主人公だということ。そんな人間、誰も相手にしないでしょう。

モーニング編集長・島田 いや、そんな人間が、教師という仕事の重要性に気付くというのが、この話のテーマなんでしょう。それなら、いいんじゃないですか?

編集部員・F島 もちろん、それがテーマです。この主人公が最終的に転職して教師以外の職業に就いたとしたら全く意味のない話になるじゃないですか。

編集部員・I院 そりゃ、そうだ!

モーニング編集長・島田 教師ものの応募作ってかなり多いけど、現在の教育現場がどうなっているのかをリアルに感じさせるものって、驚くべきほどないんだよね。相当取材した人の話を聞いたことがあるけど、現実はものすごいことになってるわけ。それが読めるものだったら、教師ものにも可能性があると思うんだけどね。

編集部員・Y原 でも、モーニングで教師ものってどうなんですかね? 読者層を考えると難しいような気がしますけど。この作品に関して言えば、いい人しか出てこなくて幅を感じないし、正論ばかりが出てきて、それで何となく上手く話が進むので、ちょっとどうかなと思っちゃいましたけど。

モーニング編集長・島田 教師ものでも、キャラクターが上手く作れれば可能性はあると思う。たとえば、『GTO』みたいに魅力的な主人公を、まず作って、そのキャラクターがもっとも上手く動くことができるような話を現実の教育現場を取材して当てはめていけばいいと思うな。




『さらば闇よ』
仁禮健太(福岡県・24歳)

☆2次選考通過作品
※作者名の「禮」の字は正しくは「ネ豊」と表記

編集部員・O道 前回(第66回・2014年後期)のちばてつや賞の2次選考で落選した方です。その時に私が担当になりました。連絡したらすでに新たな作品を描いているとのことだったので、それを少しだけ直して、今回応募してもらいました。前作に比べると格段に、読み手のことを意識して、どんなふうに読まれるのかを想像しながら、丁寧に描いてくれたと思います。

モーニング編集長・島田 とにかく、美少女戦士のキャラクターがいいよね。元気でスパッとしていて。こういうキャラを描けるのは、天性のものなんだろうね。ただ、全体的にやや古い印象を受ける作品ではある。でもキャラは良かったな。

ちば賞事務局長・田渕 強い女の子のキャラクターを出して、エンターテインメントにしようとしている点は評価できると思います。で、最後に読み手の思い込みが解体されて、再構築されるような仕掛けがあるしね。

モーニング編集長・島田 美少女戦士の仕草が良くなかった? 男っぽいっていうかさ。ただ、こういう格好いいキャラクターを男主人公として描けないものか、と思っちゃうんだよな。この作品でそれをやれっていう話じゃないんだけど、カリスマ性のあるヒーロー感覚のある男主人公の作品が読みたいな。

ちば賞事務局長・田渕 編集部内のオッサン二人が評価しているのですが、若い人の意見も聞いてみましょう。

編集部員・H野 話が読者の予想を裏切って進むので、読んでいて先がどうなるかわからないのがいいと思います。それに、作者の「この話を描かなければならない」という衝動を強く感じる作品ですね。モーニング向きかと言われれば、ちょっとわかりませんけど。

ちば賞事務局長・田渕 ネームセンスもいいし、主人公の佇まいも格好いい。ページをめくる原動力となるものが強烈にあるし、先行する漫画作品をマネして描いた感じがしないのが評価できるよね。

モーニング編集長・島田 話自体はわかりづらいところがあるように見えるんだけど、意外にわかりやすい。誰のセリフがすぐわかるしね。

編集部員・T岡 ただ、ラストはもう少し話を着地してほしかったと思います。それと、出てくるクリーチャーの造形がどうかな~と思いますけど……。

モーニング編集長・島田 この造形って、(以前モーニングで連載していた横山キムチ氏の)『ねこだらけ』でしょ!(笑)

編集部員・T岡 う~ん、見た目はかわいくていいんですけど、もうちょっと何とかならなかったのかなと。




『スキマ記録係』
里桃子(埼玉県・22歳)

【ストーリー】 起業に失敗した主人公は、新進小説家の妹から小説のアイデアにするため、喫茶店で客の会話をメモし、送るという仕事を依頼される。最初は気が進まない主人公だが、あるカップルの話を聞き……。

編集部員・K本 私が担当ですが、作者は2年前くらいにコミティアで出会った方です。第66回(2014年後期)ちばてつや賞では2次選考で落選でしたが、絵は背景含めてもっと頑張ったほうがいいと話をして、話も意外性のあるものを描けるように、登場人物も大人を出してみようということで努力してもらいました。この作品自体は、さきほども話に出たような「半径3メートルの話」の域を出ていないのかもしれませんが、だいぶ上達してきているんじゃないかと思います。

編集部員・O村 話自体はニッチなものですが、着眼点はいいし、話を上手くまとめられる人だと思います。作家である妹の凄みを描写できるのは大人を描けるということなんでしょう。懸念は絵が地味なのと、話もやや地味なところで落ち着いてしまっている。そのへんが今後、どうなのかというところでしょう。

編集部員・S根 話の前半は世界観の完成度も含めて素晴らしいんです。それが、後半になっても何も起こらなくて、他人の会話を盗み聞きしていた主人公に意外な結末とか山場を描いていないと、この作品を読む価値が見いだせないんじゃないかと思います。

編集部員・K本 作家である妹は、小説のネタとして、兄に他人の会話を盗み聞きさせて、作品を仕上げたわけですけど、出来上がった作品は、兄が盗み聞きしたことが全く生きていないSFだったというふうには描いているんですけどね。

編集部員・S根 あ、それはわかるんです。喫茶店での話を聞いてSFみたいなものが出来たというところに、飛躍がありますよね。その間に何があったんだろうというのがとても気になるんです。そこに主役が寄与してないと意味がないというか。

ちば賞事務局長・田渕 話の描き方として、どんでんがえしがあからさまな部分があるよね。兄に盗み聞きされている男性が出てくるんだけど、前半はいかにもその人物が嫌なヤツとして描かれすぎているので、「後で改心するんだろうな」と読者に悟られてしまうんだよ。わかりやすい2時間サスペンスドラマとかだと、犯人役はいかにも犯人という表情でいいんだけど。この話なら、もう少し巧みにやったほうがいい。

編集部員・F沢 さきほどから大人と子供という話が出てきてますが、この作者の前作は覚えていて評価はしてます。ひとつ気になる部分があって、喫茶店で兄に会話を盗み聞きされている女性が、タバコを吸っていることを意中の男性に隠していることでドラマを作ろうとしているあたり。それだけでは話は引っ張れないんじゃないかな? タバコ吸ってるなんて、すぐバレるだろ! と思っちゃいましたね。

編集部員・K本 それは作者とも話をしていて、キスくらいまでいけばバレるけど、ふつうに話しているだけでは気づかれないだろうということで落ち着いたんです。

編集部員・F沢 なるほど、ちょっと気になったもので。




『終電ちゃん』
藤本正二(神奈川県・32歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・T山 コミティアの出張編集部で持ち込みを受けました。話のオチがついてなかったので、そのあたりを修正してもらい応募してもらったものです。よろしくお願いします。

編集部員・K本 編集部内の評価が高いようなので、あえてという意見ですが、絵はあまり巧みとは思わないんだけど、作者のやりたいことが明確でいいなとは思います。ただ、こういういわゆる「いい話」が好きな人に向けたあざとい話のように思えてしまう。お決まりの話というか、テンプレートな感じがして、中年読者にとってはよくわからない話だろうし、モーニング向きではないような気がして、今後、どんな作品を生み出すようになるのか、これ以上面白い作品を作れるようになるのか、あまり将来性を感じられないような気がする。

編集部員・T本 いや、これはキャラの中身もいいし、なにより企画が優れていると思いますよ。このまま連載としてモーニングで毎週12ページくらい読みたいと思わせるくらいのものでしょう。ただ、キャラの造形に関してはもう少しオリジナリティがほしいです。

ちば賞事務局長・田渕 「終電を擬人化する」という企画を聞いただけでは、絶対にモーニング向きじゃないような気がするんだけど、出来たものはしっかりしているし、モーニング向きなものになっていると思うんだよね。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 いや、私は逆にモーニングに合わせて作らないほうがいいような気がしてます。この設定でいろんな電車や列車が出てくるほうが可能性があると思うんだけど。

編集部員・K林 これは、終電に絞ったところが秀逸なんじゃないですか? 電車を擬人化するなんて企画はいっぱいあるけど、まさか終電を漫画にするなんて。そこか! と思いましたよ。

編集部員・S根 漠然と終電ちゃんではなくて、いろんな路線があって、地域差も含めて、各路線の終電ちゃんの話が展開するというふうにしないとモーニング向きではないような気がするんですけど。

編集部員・T山 作者は今後の展開として、各路線に終電ちゃんがいて活躍するという話を考えています。

編集部員・Y作 企画は皆さんが言うとおり秀逸ですし、私もすげーぞコレと思って期待して読み始めたんですよ。そしたら、エピソードが定型のありがちな話で、途中でなんなんだよ! と思ってしまった。終電じゃないと成立しないエピソードを持ってきてほしかったです。

ちば賞事務局長・田渕 そうかな~。ストーリーもいいと思うけど。終電ちゃんの電車に登場人物の女性のお母さんまで乗っていたんだという歴史の重さ。4世代とか5世代にわたって人間は終電に乗っていたんだなと思って、読み終えて、家に帰る時に終電に乗ったら、しみじみきちゃいました(笑)。終電ってやさしいし、厳しい。世の会社員たちは終電のために懸命に走ったりしているわけですから、モーニングに載ったら人気取れると思いますよ。

モーニング編集長・島田 この作品はキャラものだから、それを求める必要があるのかわからないけど、ちゃんとした話を作ってほしいかなとは思ったよ。これくらいのクオリティーの話だったら、2~3話くらいで飽きられちゃうんじゃないかな?

編集部員・K持 まあ、でも、この作品を読んだ読者の人たちが、終電って楽しいな~と思えたらいいんじゃないですか?

編集部員・I院 それだね!




『優等生の問題』
和山友彦(東京都・20歳)

☆2次選考通過作品

ちば賞事務局長・田渕 編集部内の評価は2位ですね。

編集部員・K林 とにかく上手いなあと。水に濡れちゃうと変身しちゃう設定など、良くも悪くも漫画っぽいんですが、性格がきっちり描き分けられているから気にならない。キャラをここまで描き込めるのに、年齢が20歳? コマ組みも上手いし、なんか老成してて驚きです(笑)。

編集部員・T幸 揚げパンとかコネタの使い方にも笑わせられました。あと、目線の使い方がとても上手いと思いました。 

編集部員・K林 そう、主人公は変わる前も後も眼鏡かけているのに、目の表情から逃げていないんですよ。特に変身後の性格なら、レンズの反射で目を描かずに逃げちゃう人が多いと思う。

編集部員・S根 「この男がカッコいいんだ」という確固たる信念が作者にあるんですよ。もしこのまま連載するとしたら「キレること」が突破力になって学校の外に出ていく話にしてはどうでしょう? 島田編集長の制約も外れるし。

モーニング編集長・島田 うーーん。若くて絵が上手くてコマが割れて演出がキレるって、今までもたくさん見たんだよね。これをもってして才能がないとは言わないが、何が描けるのか、現状ではさっぱりわからない。俺には評価のしようがない。

編集部員・O道 体の線とか眼鏡を上げる時のしぐさとかに、登場人物への愛情を感じます。

ちば賞事務局長・田渕 こういうキャラって女性に人気出るかどうかが勝負だと思います。そこを獲得すれば男も付いてくるというか。編集部内の女性票は集めていますね。

編集部員・Y原 絵が上手いのに、小手先の技術に頼らず、隅々まで手を抜かずに描いているところが好きだし評価できます。ただ、僕はこのままだと雑誌の中や広大な漫画市場で目立たないと思いました。器用な人だから何でも描けそうだけど、逆にいろんな可能性がありすぎて、何を描いてもらえばいいのか迷うというか。漫画家・伊藤潤二さんの作風に似ているところがあるので、怖いほうに振っても印象的な絵が描けると思う。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 僕はヒットする可能性がある作品だと思います。このキャラが好きで好きでたまらない感じが出ている。他にも主人公に並び立つキャラが登場すると、さらに良いのかも。




『ライトマイガーデン』
カモシダ(神奈川県・30歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・M本 良い人や良い話を無自覚に描いちゃう人が多いんだけど、この人は一味違います。主人公の女の子が人を寄せ付けないオーラを出しつつも、読み手の共感を誘う部分など、描けそうで描けない。先の展開も読めなかった。完成しているとは思わないけど発想力がある人ですね。担当希望です。

編集部員・K渕 私も担当希望です。このままで誌面に出してモーニングの読者と握手できるのかわからないんだけども。漫画の定型からはみ出た話なのにするする読めるし、台詞ひとつひとつの切れが良い。1回目読んだ後、またすぐ読みたくなって再読したんだよ。わからないとかじゃなくって。この人は絶対に世に出ていく人だと思うし、それならモーニングから出てほしい。

編集部員・Y作 それぞれの登場人物が、作者の言葉じゃなくてキャラとしての言葉をしゃべっているのが抜群に良い。

ちば賞事務局長・田渕 そうですね。そして、どの登場人物も作者の分身であると思います。それを出すのはとても恥ずかしいことだし、恥をかいてやろうという覚悟も諸手を挙げて評価したいです。

編集部員・S木 僕は逆に、本人じゃなくて周囲にこういう人たちがいて、モデルにしてるんじゃないかと思いましたけど。

ちば賞事務局長・田渕 リアルで会ってる友人にこんな赤裸々な話ができるかなあ? よしんば、そうだとしても個性的な人間に出会えて本音を聞き出せるというのは、たいしたもの。人間力は才能です。




『社会見学』他6作
シヌマ征(愛知県・24歳)

【ストーリー】 長い時間をかけて社会からドロップアウトし、暗殺さえ請け負い実行していた少年2人の前に、「人を殺しました。どうしたら怖い人になれますか?」と言う、8歳の幼女が現れた。

編集部員・T岡 全体を通して、とても「お洒落」だなあと。心引かれるんだけど、お洒落なものに警戒心を抱いてしまう僕なので、意地悪な言い方をあえてすると、キャッチーな要素をカタログ的に見せられているだけのような気がします。

ちば賞事務局長・田渕 自分の画力で到達できる表現と、最小限の手数で印象的なシーンを見せようとしている。良い意味でのあざとさを感じるので、私は評価します。

編集部員・K林 才能があるのは間違いないけど、今のままの画風でデビューは難しいでしょうね。

ちば賞事務局長・田渕 もし自分が、この人の友達ならKDP(キンドルダイレクトパブリッシング=Amazonがやってる電子書籍の自費出版)で出したらって勧めるかな。ネット世界やデヴァイスの画面なら、こういうライトで素人臭い絵は、かえって受け入れられるし、人気出るかもね。もちろん立場上は言えませんが。て、言ってるけど!

編集部員・S根 週刊連載がしたいって書いてあるのを評価したいですね。「悪い人って何だろう」という哲学的な問いを掘り下げていくのも面白かったです。




『ハルジオン』
天川蛍(埼玉県・21歳)

【ストーリー】 自分の殻に閉じこもって、学校に友達もいない渡部(わたべ)。ある少女との出会いによって勇気をもらい、遠くから眺めているだけの女の子に声をかけることに。

編集部員・T山 第36回(2014年前期)MANGA OPENで奨励賞を獲った人です。僕が担当させていただいていますが、この企画は全て本人から出てきたものです。絵的にもかなりの進歩が見られるので皆さんの意見を聞いてみたいです。

編集部員・F沢 登場人物の年齢にふさわしい健全な自意識があるのが、とても好ましく思いました。いくつかファンタジーっぽいデフォルメ描写がありましたが、描こうとしている内容に合っていて印象的でした。どういう媒体が合うかと聞かれると、ちょっと困ってしまうところもあるんだけど、才能はあると思います。

編集部員・T橋 この人がどのように世に出ていくか、自分にはまだ見えてないんですが、レベルアップしているところは評価してあげて良いかと思います。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 キャラクターの顔は、まだまだ行けるだろうと思います。このノリの話をずっとやっていてもしょうがないから、どんどん色々な題材にチャレンジしてほしい。あと、封筒の宛名の字がめちゃ大きいのは元気があっていい!(笑)




『スラィリー・マミー!』
山田裕太(東京都・26歳)

【ストーリー】 アメリカが誇る偉大なミュージシャン、スラィリー・ワンダー……に見た目が似ている母が、「スラィリーのあの曲は、ワタシが夢の中で一緒に作曲したの」と言い出した。勘弁してほしいと思う息子。しかし、コンサートでスラィリーが母の名を呼んで……。

編集部員・O村 コミティアに出張編集部を出した時に、朝イチで持ってきてくれて担当しています。ツカミの部分の意外性だけで、読み手を引っ張っていってるところに地力があると思っています。これも高校生が主人公ですが、お母さんの側にも踏み込んでるので、島田編集長が言う学園ものの話で終わっていないと思っています。

ちば賞事務局長・田渕 いかにも朝イチで持ってきそうな作風ですね。「自分! やる気! あります!!」みたいな(笑)。

編集部員・T原 ここまでスティービー・ワンダーというネタを使い倒すかという、半分あきれた意味で高評価です。でも、なんというか借り物ですからねぇ(笑)。自分でインパクトのあるキャラを作り出せれば良いのですが。




『黄金鳥』
ミヤマサンゴ(東京都・52歳)

☆2次選考通過作品

ちば賞事務局長・田渕 ちばてつや賞というものの凄みを感じました。こういう人が送ってきてくれるんだなあと。まだまだ世の中には凄い才能があるなあと。年齢が高めの方なので、作風を変えたりして受け入れられやすい形にするのは難しいかもしれないけど、知識と経験からしか羽ばたかない想像力はあるものだなあと。何とか世に出してお金に替えたいですね。

モーニング編集長・島田 編集部でそれほど評価が高くなくて驚いた。俺は今回これが大賞になってほしい。こんなスケールの大きい話に飢えてたんだなあと気付いたよ。ずーっと狭いところに閉じこめられてたところに、ぱぁーっと大地に出してくれた思いで、ものすごく気持ちがよい。新人賞だけでなく、今のモーニングにも欠けているものは、このスケール感だと思った。巨鳥を画面上では小さく描いてるんだけど、十分大きいとわかる。絵で巨大なものを表現する力がある。モーニングは週刊連載が基本だと言い続けているけど、こういうものなら数週に一回とかでも載せたいと思ってしまう。

編集部員・T原 52歳でこんな凄いタマがいたのかと、内容が大人なのに、迫力で押してくる漫画ってなかなかないし。キャラに愛嬌とか親しみやすさとか持たせられるのか、もう少しこの人の幅は見たいかなと思います。

編集部員・O村 僕も凄い作品だと感じたんですが、大勢の人が求めるものをつくることができるのか、というか、こういう人にそんなオーダーをしても良いのか? という迷いはあります。

編集部員・F島 最後に赤ん坊が巨鳥にさらわれるじゃないですか。主人公は、巨鳥の爪のお守りをあげて目印にすることで、自分を忘れた女に復讐したんでしょうか? だとしたらめっちゃ嫌な男だなあと。

編集部員・O村 それは、自然は人間の理解を超えているということが言いたいのでは?

ちば賞事務局長・田渕 もしかするとF島の言う通りかもしれないけど、この作品世界では凡百なヒューマニズムは通じないことがはっきりしているし、善悪の向こうにあるモノを描こうとしてるなら、むしろ「凄み」ではないかと思います。




『square scape』
高木政幸(京都府・31歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・Y江 担当希望です。スケールの大きい設定に見えて、実は細部が詰め切れていないのは事実ですし、いろいろ未完成な現段階ですが、ここまで読ませてくれることに大きな可能性を感じました。デリへル嬢が「せめて手だけ繋ぎたい」と言うなど、印象に残るシーンを意識的にちりばめているのも良かった。

編集部員・F島 ゲーム的な設定が肝になる話は多いですが、この世界では「外出の権利」を通貨としてやりとりしているところが新鮮でした。

編集部員・Y作 SFとしてふわっとしていないところが心ひかれて担当希望です。年齢や描いているものを見ても、自分が編集者として一番得意なタイプなので、ぜひ組みたいです。

ちば賞事務局長・田渕 背景や仕上げがしっかりしているので執筆歴が長い印象を受けますが、登場人物の顔が、どれも虚ろなところが不安です。こういう顔しか描けないから、設定を陰鬱な世界にしたんじゃないかと勘ぐってしまったり。

編集部員・Y江 たしかに、主人公が外に出て、徐々に時に晴れやかな顔に変化してくれれば、より良かったと思います。




魚石ぎょせきのはなし』
ふじたりょうこ(東京都・24歳)

【ストーリー】 祖母が亡くなり、古道具屋を開いた主人公。ある夜、水がはねる音で目を覚ますと、家の奥にあった石の中で魚が泳いでいた。石に耳をあてると妙に肉付きのよい人魚と幸せそうに泳ぐ自分が見えた。

編集部員・F島 なんか癒やされるなあと。他人がまねできないような気がします。

編集部員・K林 美大だろうなあと思ったらそうだった(笑)。趣味が良いというか。

編集部員・Y原 つげ義春さんが、こんな話描いてませんでしたっけ? 既視感がある話と世界観のような気がします。

ちば賞事務局長・田渕 作者の年齢で、この滋味みたいなのが出せるのは才能だけど、メジャーになっていくためにどういう道筋があるかを探ってほしいですね。




『girls-talk of 29』
荒井瑞貴(長野県・29歳)

【ストーリー】 20代最後のガールズに贈る、切なく笑えるショートストーリー集。売れないラーメン屋の店主と腹が減りすぎたゾンビの交流を描いた『最後の話』にキュンとさせられた編集部のボーイズ&ガールズ、多数。

編集部員・K井 ゾンビがラーメン屋に来る話が凄く良かった。他のネタは悪ふざけが子供っぽいのもあったけど、いくつか光るネタがあったので評価したいと思います。

編集部員・K林 実はこの人は他誌で連載経験があるんですね。つまり一度、世の中に問われて、それほど売れなかったという経緯が。

モーニング編集長・島田 長い間モーニングで看板張ってた某ショートだって、初期のころには何度もボツ出しをして、ネタが出るまで作家と担当が幾晩も徹夜とかやってたんだよ。努力と執念で、ゾンビラーメン級のネタがアベレージになっていけば十分ありかもしれない。

編集部員・K井 今なら紙以外の方法もあると思います。たとえば子供に台詞を朗読してもらって、その音声をナレーションとして付けて、ネットで配信するとかすると面白いんじゃないでしょうか?

ちば賞事務局長・田渕 たしかにネタの純度は大切! K井の言うような新しいパッケージングの提案は、これに限らず、みんなで試行錯誤していいと思います。




『君とロック』
杏ナオキ(北海道・30歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・T本 終わり方が鮮やかで暗くないし、陽性のエネルギーに満ちている人間を描ける能力があると思いました。スポンジギターのアイデアも笑わせてくれました。

ちば賞事務局長・田渕 1次選考の時から、これはT本枠だと話題になってた(笑)。私は逆に「この人こんなに瑞々しくて良いんだろうか」と心配になりました。汚れたオッサンでごめんなさい。

編集部員・T原 私の漫画読んでください! という作者が発している熱さが心地よい。でも熱さ一辺倒だけじゃなくて、冷めたキャラも描けるところに期待できます。

編集部員・H野 僕も担当を希望するんですがラストのセリフが目茶苦茶かっこよくて感動しました。主人公が成長しているところも良いなあと。




『オロサカ』
金聖鎭(韓国・39歳)

☆2次選考通過作品

編集部員・O村 この方は締め切りギリギリに持ってきてくれたんですが、作品を拝見してアドバイスしたら、韓国に一度帰って修正して送ってくれました。向こうでも絵にまつわる仕事をしているそうですが、漫画家になるために日本で来て暮らすという決意をしている人です。

編集部員・S原 初めて漫画描いたということですが、そうとう漫画を読み込んでいて日本の漫画の文法をつかんでいるし、コミカルな部分も上手い。企画とか原作とかあれば一気に売れるかも。

編集部員・S根 ものが違うなあと。人の佇まいとか経験値が違うなあと。強烈に劇的な天才を感じました。

一同 出た! S根ワード(笑)。

モーニング編集長・島田 前から思っているんだけど、韓国や中国の人が描くものって人間観が違うよね。迫力が違う。

ちば賞事務局長・田渕 私個人は安全で快適な環境が大好きだけど、都市がそうなるほど、こういう絵と空気感を描ける人が減っていくのかもしれませんね。20世紀のニューヨークじゃないけど、緊張感が育てる感性もあるんだと思う。『黄金鳥』の人だって高度成長期の粗削りな日本をくぐってる故に世界と人間に迫力があるのかも!?


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