【新人賞】 第37回MANGA OPEN、全受賞作を決定した白熱の最終選考議事録を公開!

2015/05/01 00:00

MANGA OPEN] [新人賞

先週ついに、“最後のMANGA OPEN”となる第37回MANGA OPENの最終選考結果が発表されました(受賞結果一覧および総評はこちら!

応募総数334本の中から、1次選考2次選考を勝ち抜いたファイナリストは12作品

森高夕次・東村アキコ両審査員とモーニング編集部が、厳正かつ愛を込めて審査を行った最終選考。なんと東村賞と編集部賞のダブル受賞という波乱も起きた激戦の議事録を、ほぼノーカットでお見せします!


[漫画] 『いりこぎん』
三輪みわまこと(東京都・31歳)


東村アキコ とても漫画が上手なので読みやすかったです。パッと見ただけでキャラクターの性格がわかるくらい絵も上手い。雑誌に載っていても納得の出来でした。今ネットなんかで流行っている、「上手で綺麗な絵」ってあるじゃないですか。そういう絵って、雑誌に載ると目が滑るというか、印象に残りづらいんです。でもこの人はその流行の影響を受けていなくて、作者独自の絵が描けているのがとても好印象でした。特に悪いところは見つからなかったです。

森高夕次 キャラクターに毒を持たせているところとか、世界観とか、これは最終選考に残るのも頷ける作品です。途中まではすごく上手いと思ったし、よく出来ていましたが、僕には最後の展開とオチの意味がわからなかったんですよね。

東村アキコ 姉の結婚が決まってから姉妹間に距離ができてしまって、姉は「いりこを食べなさい」という小言を妹に言わなくなっていたんです。その関係が、姉妹ゲンカによって元に戻ったことを、最後にまた「そのいりこ」と姉が小言を言うようになったことで、表しているんだと思います。

編集部員・O道 はい。東村さんのおっしゃる通りです。

モーニング編集長・島田 2次選考会のときもこの作品は最後の展開の解釈が割れて、揉めたよね。

事務局長・篠原 ビンタのシーンの意味も、少しわかりにくいという話になりました。

東村アキコ ビンタしたのは、姉は妹の性格を知っているので、自分の婚約相手に妹が襲われたフリをしたとわかったからだと思います。

編集部員・T渕 姉は婚約者のことは疑ってなかったの?

編集部員・O道 そもそも彼のことは眼中にすら入ってなかったのかもしれません。

モーニング編集長・島田 だから婚約者が「君はよく僕を疑わなかったね」と言ったあと、姉は「は?」と言うのか。

東村アキコ この「は?」のあとに、姉は妹を叩いた自分の手を見るじゃないですか。あそこの姉の心情を少女漫画的に捉えると、憎かったり、嫉妬したりしながら嫌々ずっと妹の世話をしてきたけど、「こんなにこの子を理解してしまうくらい一心同体だったんだ」と気がついた、という表現なんだと思います。

事務局長・篠原 解説されて改めて読むと、たしかにそう読めますね。

森高夕次 新人作家だから、上手く表現できなくてもいいと思うんですよ。ただ、作者がどういう気持ちでこういう風に描いたのかを聞きたいですね。担当者は何か聞いていますか?

編集部員・O道 最初にネームを描いたときは、今回わかりづらいと言われている最後の部分にも心理ネームはあって、説明的な感じになっていたそうです。それだと漫画としてはあまりよくないと思い、これくらいだったら心理ネームを削ってもわかってもらえるかな? と手を入れていったら、結果的にわかりづらいものになってしまった、ということでした。

森高夕次 読む人によってどうとでも意味が取れる、という作り方はアリだと思います。でも今の話を聞くかぎり、それを狙っていたわけではないんですね。この作品は前半で読者の興味を掻き立てているので、後半ではその伏線をちゃんと回収して、オチを誰にでもわかるように決めないとダメだと思います。途中までがとても良かっただけに、そこが残念ですね。



[漫画(ネーム原作)] 『缶詰列島』
三原久みはら きゅう(鳥取県・34歳)


森高夕次 この人はストーリーテラーですね。原作者として物語を作っていく力がある人だと思いました。ちゃんと世界を作ろうとしているし、力作であることは間違いない。でも今回は、世界観の説明に終始しすぎてしまった。小説だったら、ず~っと世界観の説明が続いていても苦じゃないんだけど、漫画でそうなるとやっぱりキビしい……。よく新人作家が陥りがちな、設定の説明に終始してしまってストーリーが動いていないという失敗をしてしまってるよね。話を動かしながらストレスなく設定を説明できればいいんですけど。この人の課題はそこ。

東村アキコ こんな話が例えば邦画とかであってもいいのかなと思いながら読んだんですけど、設定のリアリティのなさが子供っぽく感じてしまって……。私はSFってそんな詳しくないんですけど、周りの作家さんとかでSFが大好きな人たちって、映画は当たり前に全部観ていて、その上で海外の小説も抑えてたりして作品作りに反映している。それと比べちゃうと、どうしても作り込みの甘さみたいなものが感じられてしまいましたね。でも、SFに詳しい編集者が担当に付いて、SFの部分を良く調べたりして、リアリティーを足してくれれば、この企画は全然アリだと思います。

事務局員・平野 2次選考から担当させてもらっているんですが、たしかに東村先生がおっしゃったように、作者はSFがバリバリ大好きという方ではなく、どちらかと言うと、青少年の思春期の葛藤とか、そういうジュブナイルな物語が好きな方だと思います。森高先生がおっしゃっていた、設定の説明に終始してしまっているというのもまさにその通りで、今「物語を進めつつ設定を少しずつ紹介していく」ということを心掛けて『缶詰列島』をリライトしてもらっているところです。

モーニング編集長・島田 世界観はあるんだけど、まだSFにはなり得てない。どうにも設定が甘すぎる。編集部内の選考では、このネームを誰かもっと緻密な絵を描く人に描いてもらえばいいんじゃないかという声もあったけど、それをやったらこの話はダメだと思うんだよね。今みたいなゆるい絵だと見えにくい設定の穴が露見してしまうから。

事務局長・篠原 なるほど。2次選考ではこの人の描くキャラクターを評価する声もありましたよね。

モーニング編集長・島田 そう、まさに俺がこの作品を評価しているのは「キャラクター」。キャラクターが生き生きしてる。キャラクターっていうのは描く人のものだから、やるならこの人が描いたらいいと思う。で、もっとフワッとした話にして、ファンタジーにしたほうがいいと思う。ファンタジーだよってことをもっと前面に押し出す。女の子のキャラクターが魅力的だから、ジュブナイルな冒険譚みたいにしていってもいいと思う。なんにしろ担当は、この作品がSFなのかファンタジーなのか決めるべき。まぁファンタジーだろうな。

事務局長・篠原 今は本人が描く方向で進めてるんですよね?

事務局員・平野 そうですね。本人に描いてもらおうと思っていて、原稿の練習もしてもらってます。

モーニング編集長・島田 あとは、モーニングで連載を目指すなら、主人公を大人にしてほしい。ワクワクするようなセリフとか感情が出てくるんだけど、子供だから成立するようなのばっかり。話自体は大人が主人公でも成立するものだから、モーニングでやるならば、読者が大人である前提で、ちゃんと大人でも成立するセリフや感情にするべき。



[漫画] 『海ガメたま子ちゃん』
井田万樹子いだ まきこ(大阪府・40歳)


東村アキコ 原稿が下書きのままでペンが入ってないのはおいておいて、すごく面白かったしすぐ連載になりそうな感じでしたね。1話が長いので、もう少し短めにして直してあげると良い感じになるんじゃないでしょうか。

森高夕次 これはですね、僕自身がすごくダウナーになっていたときに読んでしまったのか……どう評価すればいいのかなと正直思いました。ペンが入ってなかったので、ペン入れをすると印象が変わるんでしょうか。あとやっぱりページ数が長いので、短くまとめると読めるようになるような気がします。

編集部員・K藤 担当です。この方は、もともと広告代理店でCMプランナーをやっていたらしく、今は主婦で育児をしながらフリーランスでラジオCM制作などをしています。その合間に漫画を描いてみようと思い、初めて描いた漫画が今回の作品です。まだペンを使って漫画を描いたことがないらしくて、ペン入れするとかなり時間がかかってしまうため、下書きの状態でMANGA OPENに応募されたということです。今はとりあえずペンに慣れてもらうために、原稿を描いてもらっています。ペンで描いてもらったのがこちら2枚になります。

森高夕次 なるほど、ペンを入れるとたしかに印象がかなり違いますね。今回の作品だと、ちょっといたずら描きに見えてしまいましたが、これだと不条理ギャグでいけそうな気はしますね。

東村アキコ 上手いですね! この絵なんてものすごくセンスがあって、このまま単行本の表紙になりそう。未だかつてない業界初の「卵漫画」だし、この絵だったらすぐ売れちゃいそう!

事務局員・吉原 たしかに業界初の「卵漫画」だ(笑)。その発想はなかったです。

モーニング・ツー編集チーフ・三村 ペンで2枚描くのにどれくらいかかっているんですか?

編集部員・K藤 2枚で1週間以上かかってますね。

編集部員・S藤 それはかかりすぎだね!

事務局長・篠原 いや、でも育児が忙しいから仕方ないですよ。合間合間で描いてるんでしょうし。

編集部員・K藤 彼女の計算だと、この作品を全部ペンで描くのに1年かかると……。

事務局員・吉原 それだけ時間がかかるとなるとどうなんでしょうね。やっぱりペンは入れたほうがいいですか? 部内選考では鉛筆描きのままでも味があるかもという意見も出たんですが。

東村アキコ そうですね。ペンで描いたほうがいいと思います。本人が謙遜して多めに製作日数を見積もっているだけで、やってみたらもっと短い期間で描けると思いますよ。これだけ元の絵が上手いので。

事務局長・篠原 先ほど少し話が出ましたが、長さはどうですか?

東村アキコ 私の感覚だと1話6Pとか8Pくらいで良いと思います。この漫画の面白さは話を短くしても損なわれないと思いますよ。



[漫画] 『旨い鍋は宵のうち。』
植村雄一郎うえむら ゆういちろう(京都府・21歳)


森高夕次 この人は才能あるなと感じました。ただ途中までは期待を持たせてくれるんですけど、最後のほうまで描く体力が続かないところが残念でした。途中までが良かった分、最後のガッカリ感が強くなるのは『いりこぎん』と似てますね。絵には雑誌に載って目立てそうな突破力のあるメジャー感がありますし、これからどんどん上手くなりそうな予感がします。担当編集者と協力して、話をまとめる力を付けたほうがいいのではないでしょうか。

東村アキコ 絵がすごく丁寧で好感が持てます。隅々までしっかり描いていてすごいな、と思いました。森高先生と同じで、これだけしっかりと絵が描けているので、後半の話がぼんやりしてしまったのがもったいなかったです。

編集部員・Y江 担当です。この人はまだ学生なんですが、妖怪が好きらしくて日常にちらっと妖怪が出てくるものを描きたいらしいです。本人も物語の最後の展開が弱いことについては自覚していて、今後の課題になっています。

モーニング編集長・島田 すごくていねいにしっかり描いてるね。そこだけでもとても評価できる。でも今どきの作風のちょっと不思議でちょっと良い話っていうのだとインパクトがない。すごく不思議ですごくいい話にしてほしい。この人すごく上手い人だし伸びるだろうなと思うから、主役級のキャラクターを作り出せる力を付けていってほしい。設定にしても、絵にしても。

森高夕次 今の自分の絵に執着しすぎずにもっとメジャーな漫画を見て、特に目と鼻の描き方を練習したらいいんじゃないかと思います。そうするともっと良い絵になるはずです。

モーニング編集長・島田 作家さんでさ、デビュー作はこんな感じでふわっとしてるんだけど、あるとき大化けしてメジャーになったりするじゃない? そういう風になることを目指していけば大化けする可能性は大いにあると思うよ。



[漫画] 『佐藤さんとシオミ』
安住あずみたま(茨城県・24歳)


森高夕次 自分もこの話と同じような経験をしたからかもしれないんですが、感動して目がうるんでしまいました。人の心に訴えかけるものをたしかに持っている作品ですね。絵も上手くて、特に猫の絵が可愛く描けていて素晴らしいです。動物が主人公っていうだけだと、新人賞でよく見る作品だな、っていう印象を受けることが多いんですが、ペットと飼い主の関係性を描かれたものは珍しいですね。とにかく好きな作品です。  

東村アキコ 猫の描き方がすごく上手いし、デフォルメされた画風なのに背景も丁寧に描かれていて読みやすい、ストーリーも感動的で好きです。ただ一点だけ、途中に挟まれる回想みたいなシーンがよくわからなかったですね。実際に主人公の猫に捨てられた経験があるのか、何なのか、そこがわかりにくかったです。

事務局員・上甲 担当です。東村さんがおっしゃったシーンは回想シーンで、猫は前の飼い主にお金がかかるという理由で捨てられているんです。そういうところも含めて、たしかにこの作品は漫画の文法としてはわかりづらいところもありますね。ただ、このシンプルな絵柄でたくさんの感情を描くことができるのはすごいな、と思って、2次選考のときに担当希望して、担当につきました。

モーニング編集長・島田 絵も上手いし、いいと思います。ただ、飼い猫と飼い主が、何の説明もなく最初から会話が通じているのはちょっと突飛な気がするな。もしかしたら、猫は人間みたいな思考をしているんだけど、飼い主とは意思疎通できてない、っていう設定のほうがより感動的になったのかな、とも少し思ったね。

事務局長・篠原 僕は最初に読んだとき、途中までちょっと誤解していて、猫と飼い主はお互いに言葉は発しているけど会話が成立しているわけではない設定だと思ってたんです。言葉は通じないけれどお互いなんとなく察し合っているというお話だと。そしたら途中でこの二人はちゃんと言葉で会話してたんだと気付いて、頭から読みなおしました。その点はわかりづらかったかもしれません。

東村アキコ 『吾輩は猫である』みたいに猫のセリフを全部モノローグにしても成立するとおもうんですよね。モノローグでも読者は違和感なく話に入り込めると思います。

編集部員・T渕 言葉のコミュニケーションが成立していないほうが、ネタ切れせずに、ずっと描けると思いますね。この感じだとこのまま続編も作れるんじゃないですか?

森高夕次 たしかにそうかもしれませんね。欠点はあるにせよ、今回の最終選考作品の中で一番心を動かされるものがありました。僕はこの作品に森高賞をあげたいですね。



[漫画] 『僕の変な彼女』
三浦みうらよし(愛知県・25歳)


東村アキコ 今回のMANGA OPENの作品の中で一番好きです! というより読み切りとしては人生でベスト10に入る作品ですね。読んでて何回も泣きました。世に言う「不思議ちゃん」と呼ばれる女の子が「なぜそういう子になったのか」というのが描かれてて、そこがすごい。私は今までそのことについて、きちんと描かれている作品を見たことがないです。「不思議ちゃん」は生まれつき「不思議ちゃん」だと思われるのが普通なんですけど、そうじゃなくて「不思議ちゃん」になるに至る経緯が感情とともに描かれていて、それがすごくよくわかる、共感できるものになっている。自分でわざと変なことをして「あ、今変なことをしている!」って思い込むところとか、すごく共感できます。きっと変なことをしている人たちって、みんなこの漫画の女の子みたいな感じだと思いますよ。絵もすごくいい。私はこの絵も大好きです。

森高夕次 僕はあまり高い評価をつけていないんですが、この作者は「どこまで確信して描いているのか?」というのが気になりますね。僕は天然でこういう作品を描いているのかと思ったんですけど、もしかすると、全部計算ずくで描いているんじゃないかなと。あと話がちょっと長かったので、構成的に見るとわかりづらい部分があったような気がします。作品自体でみると、この方は非常に将来性のある方だと思います。

事務局員・冨士 この方の持ち込みを僕が受けました。結構前ですが、他の雑誌で賞を取っています。演出とか、表現力がとても高い方だと思います。

東村アキコ この方は100%計算で描いてると思いますよ。

モーニング編集長・島田 俺も東村さんと同じく評価してます。すごく才能があると思うし、人間が普通に生きていることってどんなに価値があるんだろうって思える作品で、読んでて元気が出る話だった。こういうものすごくレベルの高い作品を描いてくる人って、一発屋じゃない?って思うんだけど、一発屋かどうか判断する基準は計算で描けているかどうかだと思う。もちろんこの人は計算して描いていると思うんだけど、やすやすと描いていない感じがいいんだよね。しっかりと考えられているから絵の迫力もすごいんだよ。

東村アキコ トーンとか使わずにこの画面ですからね。この若さで、ここまでセックスときっちり向き合って描いているのもすごいですよね。普通はぼかしたり、雰囲気でごまかしたりしがちなのに。

モーニング編集長・島田 ものすごいエネルギーで自分を覗き込んでいる感じがある。

事務局員・吉原 もし東村さんが編集者だったら、この人に次にどんなものを描いてもらいたいとかありますか?

東村アキコ 人にこの才能を教えたくない(笑)。自分だけで独り占めしたい! 雑誌にも載せたくない(笑)。

事務局員・吉原 (笑)。すごい才能だと思うんですが、それだけにこの先モーニングでどういうものを描いてもらったらいいか、悩みますね。

モーニング編集長・島田 月刊でもいいけど、一度週刊で頑張って描いてみたほうがいいんじゃない?

東村アキコ 私はこの人は何でも描けると思います。マジで何でも楽しんで描けると思う。

モーニング編集長・島田 これは最低でも東村賞は確定ですね(笑)。



[漫画] 『リビング! ブロック! ギャラクシー!!』
谷口千昂たにぐち かずたか(岡山県・25歳)


東村アキコ 何度か送ってきてくれている方ですよね。以前と比べるとすごく絵がうまくなっていて、主人公も魅力的です。途中から洋館に舞台が移って女の子と交流してっていう流れも彼なりに商業性を狙ったものだと思うので評価します。それでもなお掲載されるにはまだ足りないところがありますね。

森高夕次 この人の作品を見ていつも思うのは、先ほど出た洋館みたいな、あまりリアリティのない舞台設定をしてしまうのはなんでだろうっていうことです。そろそろリアリティの濃いものだけを描くっていう縛りを作る段階に入っていると思います。たぶん彼なりに変えてきてはいるんだろうけど、僕には毎回同じような作風のままに見えちゃうな。

事務局員・剣持 担当です。今回は打ち合わせで、レゴブロックのプロっていう設定がおもしろいなっていう話になって、この作品を作ろうっていうことになったんですけど、本人としてはリアリティのあるものに寄せていったつもりなんだと思うんですけど、たしかにまだ足りないのかもしれません。

モーニング編集長・島田 それはすごくわかるんだよね。本人としてはかなりドラスティックに方向転換したつもりなんだろうな、とも思うんですよ。だから、ここまできたら、もう徹底的にリアリティのあることだけの作品、つまり「サラリーマンもの」みたいな縛りで描いたほうがいいんじゃないかな。  

東村アキコ 最初、主人公がなぜレゴブロックのプロになったのか、という話で、その業界のことがたくさん描かれているんだろうな、とか想像してたんですが、結局ブロックは主人公のキャラ付けに使われているだけだった。

事務局長・篠原 レゴブロックはモチーフにはなっているけど、題材と呼べるモノにはなっていないんですよね。

東村アキコ 絵にはすごく味があるから、もっと思い切って描くジャンルを変えたほうが上手くいくような気もします。極端な例を言えば清野とおるさんの『東京都北区赤羽』みたいな、自分の住んでいる町を淡々と描くようなものとか。



[漫画] 『バルトの竜祓い』
横山里沙よこやま りさ(福島県・27歳)


東村アキコ この人って前にドラゴンの話を描いていた人ですよね。主人公もかっこいいし、女の子もドラゴンもかわいいし、言うことないですね。私はスゴく好きです。この作品がモーニングに合うかどうかはちょっとわからないなとは思いますが。  

森高夕次 この作品の完成度が高いのはすごくよくわかるんですけど、読む人の心を突き動かすものがほしいなと。それに、僕は詳しくないんだけど、ファンタジーの世界に類似品がありそうだなとも思います。  

事務局長・篠原 僕が担当です。しばらく描いていなかった作者が、久しぶりに完成までこぎつけた作品がこの応募作です。元々絵は上手かったんですが、今回もデジタル作画に移行して間がないのにやっぱり上手いなと感心しました。キャラクターもみんな味があって面白いし、何よりドラゴンがそこでちゃんと息づいている感じがしてすごくいい。文明と自然の共存という、大きなテーマをあつかっているところも評価してあげたいです。勿論ファンタジーがモーニングに合うのかというのは僕も作者も気にしていて、新作はフィギュアスケートものに取り組んでいます。  

森高夕次 完成度が高くて完璧でストレスなく読めるっていう作品が必ずしもいいとは限らないのが漫画の難しさだと思います。多少傷はあっても人の心を突き動かす何かがあれば、それが作品の魅力になる。でもこの作品にはそういう人の心に刺さる何かが足りないように感じます。  

事務局長・篠原 それは今の彼女の課題の一つです。主人公やその他のキャラの深い感情を表現することへの照れがあるので、作品全体がやや客観的な描き方になるんです。より主観的な表現すること、各キャラクターの感情を掘り下げていくことで、森高さんのおっしゃる「何か」のある作品を描けるようになればいいなと思ってます。

東村アキコ すごくよくできた話なんですが、主人公がただの「いい人」なのは惜しいかなとも思いますね。例えばブラックジャックみたいに、腕はいいけど仕事の報酬がすごく高いとか、もしくはスゴい女たらしとか、そういう二面性みたいなものがあったりしてもいいかもしれません。もっと個性的な主人公だったらさらに面白い作品になりそうです。



[漫画] 『ラジオからきこえる』
敦森蘭あつもり らん(東京都・28歳)


森高夕次 今回の平均点を一気に上げてくれたくらいのお気に入り。ラジオを扱った映画やドラマは結構あるんだけど、それを漫画にしようとすると結構難しいんだよね。でもこの人は、ラジオスターを漫画の主人公に落とし込むっていう難しいことができている。しかもスムーズに読めて、そんなに難しいことをやっている感じはしない。なおかつ荒削りというか、まだ演出がイマイチのところとかがあって、でもそれがいい意味で新人っぽくて、絶妙なバランスで魅力になってる。だから僕はこの作品いいなと思いました。

東村アキコ 「鉛筆(で描いたものの)取り込み」ではあるんだけど、私はこの絵すごくいいなと思いました。細かなところまで丁寧に描いてて好感が持てますね。話もちゃんと読者を楽しませようとしてて面白かったし、大人っぽいしガキ臭くないし、すごくいいんじゃないんでしょうか。女の子も可愛いし、文句をつけるところが特にありません。キャラの服もオシャレだし。しいて言うなら、この先もずっと鉛筆取り込み線の絵でいくのかなってところが気にはなったけど、まぁでもこれはこれで味わいがあっていいのかもしれませんね。

事務局員・平野 前回のMANGA OPENにも出してくれたんですが、それは10Pにも満たない、どちらかというと雰囲気重視の作品でしたが、今回の『ラジオからきこえる』で起承転結のある長編も描ける作家さんだとわかりました。東村先生にも絵を褒めていただきましたが、僕もこの人の絵は、よく島田編集長が「新しい絵を探せ」と言っている“新しい絵”の方向性の一つなんではないかと思っています。絵と同じで、本人もとてもオシャレな方で、今作を描くにあたって、つてをたどってTOKYO FMまで取材に行くなど、非常に熱心な方でもあります。現在連載用の企画を進めようと思っているのですが、なかなか題材が決まらず、森高先生、東村先生にそのへんのアドバイスを頂けたらと思っているのですが。

森高夕次 そこまで取材したなら、僕はラジオものを描いてほしいと思う。ラジオ業界もの。

東村アキコ 私もこれでいいと思います。「ラジオにまつわる人間交差点」みたいな。この人が描くキャラクターって、超個性的ってわけではないじゃないですか。いわゆる「東京の美男美女」って感じでしょ。だからこの『ラジオからきこえる』の主人公がキーマンとしていて、その周りの人々のラジオにまつわるトレンディーな話みたいな。それだったらこの人ならすぐ描けるんじゃないかな。

編集部員・T渕 でもこの人の作品って、たしかにオシャレなんだけど、オシャレさでごまかしている感じもしませんか? そのせいで遠くでオシャレな人たちがオシャレな会話してるっていう風に感じてしまうような。

森高夕次 たしかにそう思うのもわかる。キャラクターがまだ記号的で、弱いからだろうね。

モーニング編集長・島田 俺もこの人はすごく上手いと思うし、森高さんがおっしゃるようにいい感じに伸びしろもあると思う。ただこの人の絵は雑誌に印刷されたらどうなるだろうっていう心配はある。題材的にはラジオもので連載を狙うっていうのもアリかもしれないですね。



[漫画] 『幽霊社員』
りょう(東京都・28歳)


東村アキコ 私はこれすごく評価してます。サラリーマンものですごくモーニングっぽい作品ですよね。モーニングに載っていたら絶対手を止めて読むと思います。この方、相当なプロですよね。上手すぎるくらいですよ。

森高夕次 私もかなり高評価です。「毎日仕事していると生きているか死んでいるかわからなくないか?」という強烈な問いで始まりますよね。ここで一発で「仕事を何のためにするのか」という作品のテーマを読者に印象づける。これはとても上手いと思いました。一つ課題があるとすれば、このテーマに対しての答えを最後まで出していないことです。たとえば「仕事は金のためにやってんだ」というような、人によっては否定したくなるような、独善的な答えを提示しても良かったと思います。それくらい開き直ると、話がすごく面白くなることがあるんです。絵に関してはまだまだ成長の余地があると思いますが、この見やすさは損なわないでほしいです。

事務局員・高橋 担当の高橋です。以前、月刊スピリッツで新人賞を受賞して、読み切りも掲載されています。その後、モーニングに持ち込みにいらっしゃったときに私が担当になりました。当初は幽霊ものが描きたいという話だったのですが、幽霊の他にもう一つ要素がないと厳しいと伝えたところ、この設定を考えてきてくれました。とても連載向けの作品だと思っています。

森高夕次 まず『幽霊社員』ってタイトルがいいですよね。「幽霊社員」って何だろうって読者に思わせることができる。つかみがとても良い。そこに意外なストーリー展開を見せられれば、なおさら良いと思います。

東村アキコ ドラマ化されそうな企画ですよね。あと、脇キャラも良いんですよね。特にもう一人の幽霊として出てくる常務に好感が持てました。早く連載してもらいたいです。

森高夕次 とにかく幽霊社員ってタイトルが売れそうな感じがするんですよ。

東村アキコ でもそれだけじゃ足りなくないですか? 一般名詞だから、Googleで検索したときに上に来ないと思うんですよ(笑)。

編集部員・T渕 「幽霊社員・田中」みたいに固有名詞をつけるといいんじゃないですか。

東村アキコ それだ! 名前入れるのは手ですね。半沢直樹みたいに(笑)。



[漫画] 『学生ループ』
トミー(兵庫県・17歳)


森高夕次 本当に絵が上手いですね。わかりやすい演出とは言えないけど、演出力もあると思います。将来性は抜群ですね。少年誌の世界だったら、もしかしたらそのまま通用するのではと思うほど。この作品は大人向けとは言えないとは思いますが。

東村アキコ そうですね。全く同意見です。ストーリー自体はよくある話ですが、17歳でこれだけ上手い絵が描けるなんてすごいです。なんでモーニングに持ってきたのか興味があるので担当さんに聞いてみたいです。

編集部員・T渕 実は作者は芸術系の高校に通っていて、大友克洋さんや松本大洋さんみたいな漫画が描きたいと常々言っていたら、担任の先生にモーニングを勧められたそうです。だからこの作品はかなり少年誌寄りに見えますが、本人としてはもっと大人っぽい作品が描きたいみたいです。ちなみにこの4月からは芸術系の短大に進学が決まっているとのことです。

モーニング編集長・島田 この編集部が大人向けの雑誌を作っているから、17歳っていうとものすごく若いなって思ってしまいがちだけど、他誌ならデビューしてる人はけっこういる年代ですよ。難しいとは思うけど思いっきり背伸びして、モーニングに載るような大人向けな作品に今から挑戦してみてもいいんじゃない?

森高夕次 そうそう。これだけ才能があるんだから、本人の天才性みたいなものを信じて、もっと精神年齢の高い作品を要求していいと思いますよ。17歳でも大人向けの作品は描ける人はいると思うんですよ。

モーニング編集長・島田 土田世紀さんなんかは応募作の頃から、若くして大人が読むに耐えうるモノを描いていたし、不可能な話ではないですよ。



[漫画] 『ラスト・サッパー』
葉山はやまちーず(アメリカ・30歳)


東村アキコ 絵も上手いし、話も感動的で素晴らしい作品だと思います。途中、お化けが出てくるところが少しわかりにくかったですが、楽しく読めました。完成された作品ですよね。

森高夕次 素晴らしい作品には違いないと思います。ただ、僕の感覚としては、この作品はモーニングにしてはちょっとアート寄り過ぎるというか、芸術性が高すぎるかもという気がしました。こういった作品を載せてくれる雑誌は他にもあると思うんですよね。

事務局員・寺山 担当の寺山です。アートよりの作品にありがちなフワフワした地に足がついていない物語なのかと思いきや、テーマがしっかりしていて、きちんと人間を描きたいという思いが伝わる。そこが面白いところだと思っています。それと、東村さんがおっしゃっていたお化けは、亡くなってしまうおじいさんの奥さんなんです。死の間際の夫に最後の最後で美味しいものを食べさせてあげたいから出てくるんですね。

東村アキコ なるほど。そういう話だったんですね。それはすごくいいエピソードだから、幽霊の正体が読者にわかるような構成になってればより良かったですね。奥さんのエピソードを前半でもう少しふくらませておけば、幽霊の正体がちゃんと読者に伝わって、より感動的な話になったのかなと思います。

事務局員・寺山 アドバイスありがとうございます。

モーニング編集長・島田 アート系とは言え大人の話を描こうとしてるので、まったくモーニングっぽくないわけではないよね。たとえば12Pくらいで連載を狙うのはアリかもしれないな。


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