【新人賞】 第66回ちばてつや賞、最終選考の議事録をWeb公開!

2015/01/15 00:00

ちばてつや賞] [新人賞

ちばてつや賞一般部門の最終選考は、ちばてつや先生をお迎えして行われます。

時間をかけて一作一作丁寧に読んでくださったちば先生のコメントを聞き、その上で作品の担当編集は、自分の担当作品をちば先生にアピールします。

そのほかの各編集部員は、疑問点などをちば先生に質問。活発な議論が交わされます。


『コーラを飲んでも歯は溶けない。』
美輪多緒(愛知県・25歳)

編集部員・A
僕が担当です。この方は『3.1415...』という作品で、第63回(2013年度前期)ちばてつや賞佳作を受賞しています。前作はストーリー展開にご都合主義的な部分があるのが課題だと考えていましたが、今作はいかがでしょうか?
ちば先生
同じ団地に住む「大介」「奈緒」「ゆみ」それぞれのいわくありそうな人物が公衆電話を通じて親しくなっていくストーリーはなかなか面白いし、心を揺さぶってくれる雰囲気があっていい。ただ離婚したお父さんの状況を電話の声だけで説明するのは難しいよね。いい話なんだけど読み込まなければわからないのが残念。
事務局長・田渕
絵的なことでいえば、カメラアングルが極端に寄っていたり、ローアングルなんかを多様しすぎですね。全体的に演出過剰で見づらくなっている印象があります。
ちば先生
この人は絵が上手なんだけど、顔がアップになると、時々大人と子供、男と女の見分けがつきにくくなるのが問題。アクセサリーやメイクなどで顔が出ている部分だけでも、誰か分かる特徴をつくるとか、出来ればシルエットだけでわかるように描けるといいね。最終ページの俯瞰図も少々分かりにくいかな。良く読めばいいラストなので惜しいね。漫画はできるだけ読者を迷わせないように、すーっと読めるように意識して描かないと。自分だけの「目」じゃなくて、読者の「目」を考えてほしいな。





『メガネスポーツ』
玉田曜(神奈川県・26歳)

ちば先生
ちょっとストーリー仕立てなんだけど、ギャグならギャグで徹底した方がよかったかな。「野球」と「メガネ」というネタだけど、主人公が、メガネとは関係なく運動能力が低いし、かといって練習もろくにしていないし、あまりつながりがない印象だったね。どこで読者を笑わせようとしてるのか、泣かせようとしてるのか、感動させようとしてるのか……そこらへんがないままに作者が描いちゃったから、曖昧な読み口になってしまったかな。
編集部員・B
僕が担当です。この作品は打ち合わせをしていないのですが、ちば先生と同意見で、中途半端だなと思いました。僕としてはもっとギャグを盛り込んだほうがよかったのでは、という印象です。
ちば先生
このままの描き方だと、甲子園を目指しても、読者は感動しないし、主人公が健気ともあまり思えない。切り口を間違えたのかな、という印象がちょっとあったかな。この作品はきっと作者は楽しんで描いていると思う。楽しんで描いたものが、読者にとっても楽しければ最高だけど、作者のひとりよがりで終わってしまうことが多い。とっても大変だけど、プロは自分が苦しんで、読んでる人を楽しませなきゃいけないんだよね。
事務局長・田渕
ただ、伸びしろがある人ではありますよね。
ちば先生
そうですね。画力については、色んなキャラクターを描き分ける力があると思いましたよ。





『WAKE ME UP!』
呉昕庭(ゴ シィンティン)(京都府・22歳)

編集部員・C
この方は2014年前期の第65回ちば賞にて『はなぢの思い』で奨励賞を授賞された方です。台湾からの留学生で、現在も日本の大学に通っています。
ちば先生
『はなぢ』の人だね、覚えてます。この方の絵やキャラクターから情熱は感じるんだけど、読んでいてわからないことがたくさんあって、引っかかってしまった。何故パシリの回数を300回にこだわるのか、何故領収書をとるのか、なぜそれを燃やすのか。みなさんはどうでしたか、よくわかるお話でしたか。
編集部員・C
担当です。作者の意図としては、母親が息子に対して「自分の一年目の命日まで一生懸命ひとりで走って、健康でいなさい」という思いがあるからなんだと思います。聖が領収書を燃やすのも、天にいるお母さんに報告するという意味だと思います。はじめは20ページのネームが出てきたんですが、文字も台詞もいっぱいで設定書を読んでいるような感じだったんです。この方の一番いいところはキャラクターの勢いと熱量で押していくところですから、ある程度は説明を省略して動きのシーンをメインに広げてください、とリクエストをしました。
ちば先生
20ページを54ページに広げた良さはすごく伝わってきます。男の子がのびのびと走っている絵は魅力的だし、走り終えたときの充実感もうまく表現していて演出力もあるんだけど、お話で読者にわかってもらいたいところは抜けちゃっているかな。作者の目だけじゃなく、読者の目をもって描くこと、「読者を迷わせない」工夫を大切にしてほしいですね。
モーニング編集長・島田
あと、この作品は少年漫画っぽくなかったですか?
ちば先生
そうですね。
モーニング編集長・島田
主人公の顔の造形も少年誌っぽいなと思ったんですよね。少年が主人公でもいいんですが、大人がこの作品を読んだときに、大人の視点が寄りすがる筋があまりないような気がします。この主人公が成長して高校生や大学生の物語になっていくんだとすると、モーニングでもありなのかな、とは思うんですが。
編集部員・C
今後、作品を描いていくうえで、大人を描くことにギャップを感じていくかもしれません。けれども、この作品は子供の心情を描こうとした作品です。大人の視点を入れず、大人っぽくしないことを貫いた姿勢を評価したいと思っています。





『ヲタヤン小林』
大内優(東京都・30歳)

事務局長・田渕
ヤンキーがゲーム音楽を演奏する話ですね。編集部内での人気も高かった作品です。
ちば先生
「ヲタク」をかくしてツッパる主人公・小林の心意気と可愛げ、友人・栗原の男気、部長の妖しい魅力などが、優れた画力・演出力に支えられて、最後までグイグイと読まされた。BGMが聴こえてくるような迫力のある絵も描けるし、アップとロングや、見開きの使い方も上手い。非常に手慣れた人ですね。
編集部員・D
担当ですが、なにか問題点や改善点などありましたらアドバイスをいただけますでしょうか?
ちば先生
小林のキャラクターはとてもいいんだけど、栗原との差が伝わりにくい。ルックスの良さでモテているんだろうけど、その部分がちょっと伝わりにくいかな。絵的な部分も含めて演出を考えられるといいね。あとはゲームで遊ぶ人には面白さが伝わるのだろうが、自分はやらないのでピンとこない部分があった。そういう人にも伝わるようにしていかないとね。ただ「面白い世界を見せよう」という意欲を感じた。その姿勢はとてもいいですね。さらにキャラクターを通して、読者に何を見せたいのか、伝えたいのか、絞り込んでいけるといいですね。





『台風一家』
西山貴史(東京都・27歳)

編集部員・E
『台風一家』はちば賞らしい作品かな、というのが編集部の評価としてありました。骨太で、ちゃんと短編として成立しています。
モーニング編集長・島田
この人はどういう人? はじめて投稿してきたの?
編集部員・F
今回が初投稿で、2次選考から私が担当しています。今まではヤングジャンプにずっと投稿していたようで、ヤングジャンプ月例新人漫画賞で3回受賞しているので熟れた作品が描けています。ただ、意外性はあまりないかなあと感じました。表情や風景の描き方など、小さな演出は上手いのですが、独特の「味」のようなものをもう少し加えられたらと思っています。
事務局長・田渕
20代だし、テクニックはあるけど味を出すのはまだ難しいかな。絵に関しては読者を迷わせることなく読んでいける人だと思います。
モーニング編集長・島田
ここ10年くらいの新人賞投稿作品って、「実は死んでました」という話がすごく多いんですよね。それで、ちょっとハートウォーミングな終わり方をする。でもこの主人公でいくらでも話が作れるなって感じるのであれば、即OKなんですよ。ただ、それだけの画力や構成力はあるのに、関心がキャラクターにいっていない作品が多いんですよね。この作品も絵は相当達者なんですけど、話の印象は残るけどキャラクターの印象が全然残らないんです。
ちば先生
この作品はキャラクターの魅力じゃなくて、お話の設定の面白さで勝負しちゃったからかもしれないね。
モーニング編集長・島田
そこが罠なんですね。「実は死んでました」という話がそんなにたくさん新人賞に来てるとは誰も想像しないで描いてくるわけなんですよ。自分では「いい話がつくれたぞ」という感覚があるから、つい、その話をまわすことに夢中になってしまっている気がしますね。話は破綻していても、オチなんかなくても、このキャラクターすごい面白いなっていうほうが実はいいんですよね。
ちば先生
この方は自分のつくったお話の設定をいかにしっかり組み立てるかに腐心してしまったってことだね。





『いがぐりの恋』
石田純平(神奈川県・38歳)

ちば先生
この作者は非常に絵を描きなれていて、背景を入れるべきところと、省略すべきところの緩急がとてもうまく読みやすい。まったく迷わずに読めました。とても評価が高いのですが、気になったのは、少女が気持ちを寄せる先生の存在感がもう少しあった方がよかったのかもしれないこと。もしかしたら、子供達だけの世界で完結すべきお話ならば不要な要素なのかもしれないけど、絵やセリフなどでもいいからちらっと先生のキャラクターが出てくると、よかったのかもしれない。例えば、ニワトリが始末されないように先生が解決方法を示唆するとか、そういうのがあってもよかったのかもね。
事務局長・田渕
なるほど。主人公にとって先生が、敵う相手かどうかというのがもう少しわかった方がよかったということでしょうか。作者に確認してみないとわからないのですが、おそらく意図的に描いていないんだと思うんですよね。
ちば先生
そうでしょうね。いずれにせよ今指摘した点については、そうすべきかどうか含め、非常にレベルの高い論点だと思います。
モーニング編集長・島田
今回の応募者の中で、一番達者ですよね。
事務局長・田渕
とても充実した内容をあっさりした絵で見せられるから心が掴まれますよね。
ちば先生
私もやられましたね。





『泣き虫とうさん』
サイ(埼玉県・48歳)

事務局長・田渕
担当です。自分の成長とともに親がちょっと小さく見えてしまう時期を描いた話なのですが、その点をちば先生の採点表のコメントでも評価していただけたようで、うれしいです。
モーニング編集長・島田
部内選考でも人気で、私はすごく評価していますが、ちば先生はこのお父さんのキャラクターについて、どのような感想をもたれましたでしょうか。というのも、ちょっとお父さんのキャラに現実味がないのではという意見もありまして。
ちば先生
子供っぽいお父さんというキャラクターですが、ここまでわかりやすくする必要があったのかなと、ちょっと引っ掛りました。たとえば、ひよこが死んだときにお父さんは号泣するけど、気がついたらポタポタと涙が落ちている位でよかったのかもしれない。また、主人公が泣くところも抑えてほしかったかな。ちょっとオーバーで、少し作り話に見えてしまった点が非常に惜しかった。そこらへんにリアル感が欲しかったですね。それと、主人公である息子が母親に、何故あんな男と結婚したのかと聞くシーンがありますが、さらっと母親は答えるけど、この子何言うのかしらという一拍があってから答えてもよかったのかもしれない。「タメ」が全体的もっとあるとよかったのかもしれませんね。とってもいい話なのでもったいなかったかな。ただ、非常に力のある方だと思います。たった36ページでしっかりしたドラマを描いている力量は見事でした。






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