【新人賞】 第36回MANGA OPEN、全受賞作品および最終選考議事録のWeb公開がスタート!

2015/01/16 00:00

MANGA OPEN] [新人賞

応募総数402本から2度にわたる選考を経て、最終選考に進んだ14本を、森高夕次・東村アキコ両審査員と、モーニング編集部が厳正かつ愛を込めて審査!

3時間にわたる議論の末に、第36回MANGA OPENの各賞が決定しました!(全受賞結果の一覧はこちらをご覧ください!)

未来のモーニングを支える才能をめぐる議論、選考過程をほぼノーカットでお届けします!


『葉緑体人間』
水越翔大(京都府・26歳)

事務局長・篠原
最初の作品は『葉緑体人間』です。森高さんのほうがやや評価が高いようですが?
森高夕次
「哲学的な感じ」と「SF的な感じ」を、伊藤潤二風に描いているところが、潔くて良いと思います。この人の本来持っているオリジナルの作風だけでは、この作品の「哲学的な感じ」と「SF的な感じ」を読者に伝えることができなかったかもしれないので。でも、このどこかで見たことのある感じ、から将来抜け出せるかということを考えると、僕は積極的に才能評価はしないです。とはいえこの作品自体は、そんなに悪くないと思います。
東村アキコ
私も伊藤潤二先生の影響を受けているのは、むしろ好感が持てます。何の真似もしていない人だと、どういう漫画を描きたいのか分からないしね。私もいろんな人の真似をしまくって描いてきたわけだし。ただ、この人はSFとか全然詳しくない、もともとSFの人じゃないんだろうなっていうのがバレバレだから、そういうSFに詳しい友達に聞くとか、自分でちゃんと調べたほうがいいと思います。だから、他のジャンルの作品を書かれた時は、また読んでみたいかな。
モーニング・ツー編集チーフ・三村
この作品は2次選考から私が担当させていただいているのですが、まず主人公の顔が面白くて、腹がよじれるほど笑ってしまいました。とはいえ個人的に面白くても、この主人公のキャラクターで、万人受けを狙うのは難しいので、そこが課題なのかなと思っています。また、作者本人は藤子不二雄先生がとても好きで影響を受けているせいか、この作品のように、大きい視点から人間というものを見る、という傾向にあるようです。
事務局長・篠原
先ほど東村先生から、作者はSFに詳しくないんじゃないか、という指摘がありましたが、そのへんはどうなのでしょうか。
モーニング・ツー編集チーフ・三村
そうですね。本人はむしろ、SFよりも笑いを重視するという方向でこの作品を描いたみたいです。ただ、笑いに徹し切れていなかったところもあって、2次選考会でも、この作品の演出ははたしてギャグなのかどうかで意見が割れました。
モーニング編集長・島田
両先生にお聞きしたいのですが、この作品がギャグではなくて、ロジカルな裏付けがきちんとある漫画だったら見方が変わってきますか?
森高夕次
僕はこの作品は哲学漫画だと思っていて、現段階では、哲学的にもSF的にもそこまでの出来じゃないのを、笑いの要素でごまかして成立しているように見えます。僕個人としてはこの作者には哲学の方向に行って欲しいです。
東村アキコ
「笑ゥせぇるすまん」みたいになればいいのかな。
モーニング編集長・島田
俺はこの作品はきちんとやれば、SFになる気がするんだよ。SFって結局思考実験だから、もしこうだったらっていう発想が面白い人が向いてるんだけど、最近はSFの作品が少なくなってるよね。特にきちんと裏付けがあるSF。でも、裏付けの部分って編集者の受け持ちでもあるから、担当さえつけばこの人SFでも行けるんじゃないかな、って思うんだけど。
森高夕次
僕は、この作者の人は、時事芸人になればいいと思う。つまり、もっとニュースウォッチャーになって、今世間で起こっている事件をこんな感じで皮肉る作品を次々作って行けばいいんじゃないかなあ。
東村アキコ
例えば、小保方さんの事件とかを、皮肉って描いたらすごくいいかもしれませんね。
森高夕次
絵柄もそんな感じなんですよ。この絵柄でエンターテイメントをやっても、もしかしたら受け入れられないかもしれない。





『とっておきの日。』
天川蛍(埼玉県・20歳)

事務局長・篠原
では次の作品は、『とっておきの日』です。これは東村先生からお願いいたします。
東村アキコ
とにかく読みにくいなと思いました。セリフもモノローグもたくさんあるし。そしてよくある感じの話なので、その読みにくさが解消されても、もしかしたらあんまり面白くないかもしれないな、とも思いました。ただ、「お話を盛り上げよう」とか、「読む人を楽しませたい」というようなサービス精神は感じられました。トーンもすごく細かく貼ってるし。絵に関しては、真面目なんだなと思いました。20歳だし、これから上手くなる可能性は十分あると思います。
森高夕次
完成度自体は高いと思うんです。ただ、エンターテインメントを作ろうという気概は感じられません。おそらくSNSなどで、「この作者の気持ちわかります~」みたいに共感を呼ぶんでしょうけど。あまり人生経験のない人が、いきなり「死」というテーマに向かって漫画を作っちゃったっていう印象をうけます。起承転結をつけて、きちんとお話を作ろうとしたという感じには見えませんね。ただし、逆にそこがとても今風なところであり、こういうふわっとしたつくりの作品がすごく共感を呼ぶということは往々にしてあるんです。ただ、エンターテインメントを作ろうとしていない作家を評価するということは、新人賞としては、ちょっと後ろ向きかな、と思います。僕としてはあくまでも、こういう作品もアリですよ、という感じでの評価にとどまりますね。
事務局員・寺山
2次選考から担当になったのですが、今回の投稿作の中で、一番切実に漫画が描きたいんだろうな、という作者の熱量が伝わってくる作品でした。森高先生のおっしゃる通り、まだエンタメにはなっていないのですが、おそらく作者に描きたいものがちゃんとあるんだろうな、と思ったので担当になりました。今後どうやったらエンタメを作っていけるのかということを意識的に考えてほしいな、と思ってはいます。
事務局長・篠原
両先生のご意見もだいたい2次選考で出た意見と同じですね。東村さんは、若いアシスタントさんなどをたくさん見られているとは思いますが、こういう感じの人が変わっていくのを見たことはありますか。
東村アキコ
私、少女漫画の新人賞の審査員もやるんですけど、少女漫画だと、こういう感じで絵を描くのも、仕上げるのも好きで、真面目でっていう方はたくさんいるんですよ。私のアシスタントにもこういう作品を描いている人はたくさんいるんですけど、毎回見て思うのは、なぜ恋愛をさせないのかと。ただ、最初の内は描けなくても長年やっているうちにキスシーンとかが開き直って描けるようになるっていう瞬間もあったりするんですけどね。
森高夕次
僕は、新人賞の応募作品で生と死をみつめる作品を描いて送ってくるっていうのは、得意分野が無いっていう証拠だと思うんですよ。
モーニング編集長・島田
株の投資でも何でもいいから、この人は何かネタというか、テーマが必要だと思う。変わったことを考える人には思えないからね(笑)。
東村アキコ
でも、担当さんがお題を提示したら、この方は真面目そうだから、ちゃんとできると思うんですよね。
モーニング編集長・島田
そう。それがないと、こういうJ-POPみたいな作品になっちゃう(笑)。でもJ-POPって売れるでしょ?これでめちゃくちゃ絵が上手かったら、こういう話でも売れると思うんですよ。
森高夕次
この人は、たくさんの人の気持ちをつかむ可能性はあるんですよ。単に死のうか死ぬまいかという会話をずっとしているだけで、この人にしか分からない情報が何もない。でもこれは、一般化しているものをてらいなく描けるという強みなのかもしれない。ただもう少し何か得意分野を示してくれないととも思うんですが。
モーニング編集長・島田
やっぱりテーマや企画が無いとダメだと思う。この人にしかできない考え方が表わせていないから。
東村アキコ
もし私が20歳くらいの時に、担当さんに高校野球の取材してみたら、なんて言われてたら、もしかすると『おおきく振りかぶって』みたいな話を描いていたかもしれないなとも思うんです。だから、本当に担当さん次第で、大化けする可能性は十分にありますよ。





『花法主』
野﨑慎一郎(京都府・46歳)

事務局長・篠原
次は、両先生ともに評価の高い『花法主』です。まずは東村先生から。
東村アキコ
めっちゃ絵が上手いし、トーンを貼らずにカケアミを使っているのも、この人の味が出ている気がします。
編集部員・O道
私は2次選考から担当になったのですが、この作品は前任者が持ち込みの際に見た作品を、打ち合わせして直したものだそうです。ストーリー漫画を編集部に持ち込みしたのはその時が初めてで、新人賞に出すのも今回が初めてだと聞いています。
東村アキコ
とにかく主人公の男の子がかわいくて、絵もしっかり描けてるし、背景はカケアミでもちゃんとできてるし、今回一番良かったと個人的には思います。
事務局長・篠原
では、森高先生はいかがでしょうか。
森高夕次
いかにもモーニングの新人賞で大賞をとりそうだな、という作品ですね。この人はもっと何回もチャレンジしてきて、何作目かでこの作品を描いてきたのかな、って思ってたんですが、初投稿でこれなら才能を感じます。ただ、この作品には毒が無いんですよ。たとえばジョージ秋山さんが同じような話を描くとしたら、いきなり人が殺されるとか、汚いシーンを描いておいて、最後にきれいな一輪の花を描くとおもうんですよね。でもこの作品は、とても優等生的ですよね。もっとアクセントをつけないと、最初から最後まで平坦になってしまうと思います。そこが僕は気になりましたね。
編集部員・O道
もともとこの方は、ナンセンスものの一コマ漫画やイラストを描いていて、91年には同人誌で日本漫画家協会優秀賞を受賞しています。ストーリー漫画以外では、地方紙などで連載経験もあるそうです。十年ほど前に突然、ストーリー漫画を描こうと思い立ち、華道にとても興味があったので、華道をテーマにした作品を描き始め、これまで描きためた作品を再構成したのが、この『花法主』だそうです。
東村アキコ
じゃあ、メインの収入はイラストで得ていらっしゃるんですか?
編集部員・O道
絵の仕事が多いそうですが、漫画の取材を兼ねて花屋でバイトもしていた、と聞いています。
東村アキコ
個人的にはすぐにモーニングに掲載しても問題ないかな、とは思うんですが、スクリーントーンは使いたくないんでしょうか?
編集部員・O道
はい。描きこむことにこだわりがある、と言っていました。決して、お金が無くてトーンが買えない、というわけではないです(笑)。トーンを使っていないせいで読みづらいと思われましたか?
森高夕次
この人は、漫画の描き方をよく分かっていますよね。カケアミでも、すごく読みやすいと思いますよ。
東村アキコ
カケアミとカケアミの間に隙間があったり、コマの隅がきちんとくっついていなかったり、ホワイトが甘かったり、プロとして絵の仕事をしているのなら、そういうこともきちんとクリアしてほしいですよね。文句をつけるとしたらそんなところかな。もしモーニングに掲載されるんだとしたら、そこの点だけがもったいないなって思いますね。
森高夕次
この方は掲載を狙えるような作画レベルだから、テーマや題材、商業ベースに乗るような発想を、直近で考えられるかどうかが課題だとは思いますね。この作品だと真っ先に、「華道漫画か、単行本にして何部売れるかな」って考えてしまいますよね。そんなことを考えさせない題材が欲しいですよね。
東村アキコ
これって、実際にいた人の話なんですよね? ってことは、アニメの『一休さん』みたいにメジャーなキャラクター設定をできればいいってことですかね。
森高夕次
時代劇として描きながらも、親子でも何でもいいから現代の問題を絡めて表現できると、それはそれでいいですよね。
事務局長・篠原
ありがとうございます。では、編集長はいかがでしょう。
モーニング編集長・島田
なんか、迫力無いな、っていう感じがするな。「花にも命があります」っていうテーマは分かるんだけど、なんとなく綺麗事のような気がしちゃうんだよね。
事務局長・篠原
華道という題材自体に問題がある、ということですか?
モーニング編集長・島田
いや、この人が華道を描きたいなら、華道でゴリ押しすればいいと思う。なんなら、この話を10巻かけて描いたっていいんだよ。ただ、それならもっと尋常ならざる迫力がないとダメだと思う。たとえば『ナニワ金融道』だと、「金がすべてだ」というテーマで描いていて、すごい迫力があるんですよ。だから、この作品が完成されているからこそ、もっと迫力のあるものにできるんじゃないかって思いますね。
事務局長・篠原
『へうげもの』の山田芳裕さんが、「描きたいものの逆から描け」っておっしゃっていたことがあって、要するにそうすると描きたいものがより際立つんですよね。だから、この作品も、なにか汚いものを描くところから始めると、一気によくなるかもしれませんね。
東村アキコ
『一休さん』だと、新右衛門さんみたいに、実在の人物だけど華やかなキャラクターが登場したじゃないですか。だから、この作品も当時実際に京都にいた人たちが登場してもいいかなって思ったりもします。この人の中にもう完成形のストーリーがあるなら、そんなことを言うのは野暮なのかな。でもまあ、この男の子が超カワイイから、この男の子に周りの大人が転がされていくっていうふうにするのもいいんじゃないでしょうか。そして、背景の土とか木とかはカケアミでもいいかもしれないけど、服はベタの部分もあった方がいいんじゃないかなあ、とは思いますね。





『あんな冬の日』
瑞樹くろ(神奈川県・27歳)

事務局長・篠原
では、次の作品は『あんな冬の日』です。森高先生は評価が高いようですが。
森高夕次
よくできていますよね。そして、年上の女と年下の男の子の関係を描いた作品って年下の男の子の視点で描かれたものが多いじゃないですか。この応募作もそういう視点で描かれているけど、どこかで俯瞰しても見ている。その点に新しさを感じました。でも、なんでモーニングに投稿してきたんだ、とは思いますよね。たまたま締切が近かったから出したのか、分からないですが、やっぱり今まで審査員をさせていただく中で、この人いいな、って思う投稿者がいても、その人がモーニングのこと全然知らない人だった場合、その後モーニングで活躍できたかどうかは疑問ですよね。もし自分が投稿する立場だったら、傾向と対策というか、これから投稿しようという雑誌にどういうものが載りやすいのか、ということは研究するのにな、とは思いますね。漫画家になりたいっていうときに、戦略はとても重要なんですよ。どの雑誌に投稿するかっていう選択も含めて才能だと思います。だから、作品自体は良いんですが、この人の雑誌の選択には問題があるかな。
東村アキコ
少女漫画的には、この作品はとにかく絵柄が古いんです。10歳くらい年の離れたお姉さんがいて、古い少女漫画をずっと読んでたっていうんならまだわかるんですが、どうしてこんなに絵が古いのか、って思っちゃいますね。
モーニング編集長・島田
モーニングを研究してて、モーニングにはこれくらい古いのがいいだろう、って思って描いたんならすごいけどね。
東村アキコ
モーニング的には、このくらいの古さはアリだと思うんですよ(笑)。もちろんこの人がもうこの先全然だめだ、っていうつもりはなくて、絵も上手いんだけど、この絵柄の古さは気になりますね。ところで、この人は北陸の人ですか?
編集部員・M川
私担当なのですが、作者は神奈川県出身です。
東村アキコ
この作品の中でタラバエビっていう言葉が出てきて、調べたら、北陸のごく一部でボタンエビとかシマエビとかをひっくるめてタラバエビって呼ぶらしいんですよ。そういう言葉を入れて投稿しちゃうあたりのダサさがモーニングっぽいとは思いますけど。でも、男の子のひたむきな感じとかはすごくいいので、男子をいっぱい描くといいのかな、とも思います。ただ、少女漫画の賞だとここまで残らないと思います。
編集部員・T渕
この作品は、男性人気が高いんじゃないかって思うんですよ。というのも、自分が十代の、つまり童貞のころは、年上の女の人ってこの作品に出てくるあんなさんのように見えてたんですよ。色気があって、近づいたら食われそうで怖いんだけど、でも近づきたい、みたいな感じです。だから、作者は女性だけど男性の視点も持っている方なのかな、とも思いました。
事務局長・篠原
なるほど、では担当のM川さんどうでしょうか。
編集部員・M川
この方は少女漫画の賞にも応募している経歴をお持ちです。モーニングが好きかどうかは聞いてはいないのですが、モーニングについて全く知らないわけではないみたいです。東村先生からは古いと言われてしまったのですが、個人的には今回の応募作の中で一番絵柄が印象に残りました。この作品の設定はベタすぎるくらいベタなんですが、ここまでベタなものをストレートに描けるなら、いいネタが見つかれば強いんじゃないかな、とも思います。もちろん、青年誌で勝負するなら、何かしら企画がないとダメだなとは思っています。
東村アキコ
少女漫画だと、こういう人ってすごくたくさん出てくるんですが、必ずフィギュアスケートの取材に行かせるっていうのが伝統になってるんですよ。フィギュアスケートって、描くのに相当な画力を必要とするんですよ。だから、新人に最初に課すいいハードルになる。題材を選ぶときには、この人の画力の伸びしろを考慮したものにしなくてはいけないですよね。
編集部員・M川
お聞きしたいとは思っていたのですが、この少女漫画のような絵柄で、何に気をつければ、青年誌で通用するのでしょうか。それとも、もう全くはじかれてしまうものなのでしょうか。
森高夕次
絵柄が古いことを気にするのは、たぶん女性漫画誌の編集者だと思います。東村さんがさっきおっしゃったようなことを言われると思います。モーニングなどの青年誌のほうが、明らかに女性的な絵柄でも掲載されていることは多い。ただし、それはそれで大変で、明らかに女性の絵だけど、男性にも受けるっていう漫画を描けるのは、やはり限られた人なのかもしれないですよね。女性漫画誌ではじかれるからといって、青年誌で受けるかどうかは分からないですよね。
事務局長・篠原
ありがとうございます。では、編集長はいかがでしょうか。
モーニング編集長・島田
基本的に森高先生が仰られた通りで、一目で女性とわかる絵柄でも全く問題はないです。むしろ題材とか、読者をひきつける何かを今後作り出せるかどうかだと思います。





『お見事! 郷太郎/傲岸の虎』
小三島武良(埼玉県・28歳)

森高夕次
僕はこれ、素晴らしいと思いました。1話目が原稿で、2話目がネームなんだけど、MANGA OPENだからネームでもいいんだけど、だったら、1・2話どちらもネームの方がよかったかな。じゃないと時間がなくてこうなっちゃったのかなとか思ったりもして…。お話はよくできていて面白い。でもとにかく演出がやり過ぎ! このお話をもっと抑えめの演出で描いていたら、僕はこれは雑誌に載ってても面白く読めるレベルだと思う。本人は工夫しようと思っているんだろうけど、考え過ぎた結果、演出過多になってしまっていて、そのせいで逆に素人臭く見えちゃう。もっと時系列をちゃんと追って、ヒキの絵をちゃんと作って、もっと普通に見せれば、ぐっと良くなるはず。もっといろんな漫画を読んで、効果的な演出の仕方が身に付けば、この人はすぐ連載できるレベルだと思う。
東村アキコ
私もこの作品面白かったです。主人公の子供もかわいいし、頑張ってるし、全体的によくできてて、すごく好きです。強いて言うと、設定をきっちり作るつもりはないのかなって。私は歴史は全然詳しくないんですけど、この舞台が何時代で、世の中の情勢がどうなっていて、誰が殿様で、場所は江戸なのか京都なのか…少なくともそれくらいの設定と、あとは、このお父さんはどこの藩の武士で、なんで浪人になっているのかとかそういうバックグラウンドもきっちり作っておかないと、ちょっと幼稚に感じてしまうんですよね。少年誌だったらそれでいいんだろうけど。前半にそういうものの説明があった方が、大人っぽいのかなって。それがあった上で、主人公の男の子が少年誌っぽいのはアリだと思うんで。あとは、このお父さんが、相手を斬る前に我を失って「殺す…殺す…」ってブツブツ言ってるのは絶対にやめた方がいい! この作家さんはそういう演出は似合わないと思う。だって逆に殺されるってここで読者がわかっちゃうから。主人公はお父さんを信じてて、読者は主人公目線なんだから、「うちの父ちゃんは強いから絶対死なない、絶対勝つ。勝って父ちゃんにお見事です!って言うんだ」って思わせといて、サクッと殺されちゃうのがいいわけだから。その緩急のセンスが致命的に足りていないから、それは担当の人が言ってあげないとダメだと思う。お父さんが殺された時の子供の反応も、「泣かす」のが早い!まだここでは呆然としてて、表情変えずに耐えてるのがかっこいいんだから。そういうことをこの先教えてあげるべき。それ以外の部分はすごくよくて、このまま載ってても私は楽しみに読むと思います。ただ歴史考証だけはやってほしいかなって気がします。
編集部員・T橋
僕がこの作品の担当なんですけど、歴史考証に関しては、藤沢周平さんの小説みたいに、架空の藩ということにしています。
モーニング編集長・島田
架空の藩にしちゃえばそれでいいって思ってる感じが透けて見えるんだよ。だから子供っぽい。架空の藩でもいいけど、絶対にモデルは必要。そもそも時代がいつか考えようともしていない気がする。
森高夕次
子供っぽく感じるのは、演出過多なのと、顔のアップが多いからっていうのもあると思う。せっかく話は面白いんだから、とにかくもっと抑えて抑えて描くべき。仇の子供を引き取って、自分の子供と兄弟として育てるというのは、時代劇のテーマとして大いにありだと思う。この話を浅田次郎原作でながやす巧が描いたものを僕は見てみたい(笑)。とにかく表現方法が少年誌っぽすぎるんだよね。この作品の場合は、少年誌的な迫力とかはいらないんですよ。
東村アキコ
河川敷の斬るシーンでも、すっごいヒキにして、草の線だけあって、首がパシって飛んでる方が、ショックがでかいみたいな演出ってあるでしょ。迫力を出したい時ほどヒキで、どうでもいいところほどヨリにするとか、いろんな漫画を読んでそういうテクニックを身に付けてほしい。この人ならすぐできそうな気がするから。預けられた家の子供が、シュッとしててハンサムでかっこいいし、仇を討つことになるだろう主人公と一緒に暮らしていくっていうのは、女性読者喜びそうだしいいと思います。タイトルもすごくいいですよね。
事務局長・篠原
実はこの作品、2次選考の時に編集長が、すごく作りモノっぽい感じがしてしまうって言っていて、その時は何がそう感じさせるのかわからなかったんですけど、今お二人の話を聞いて、わかった気がします。


※『傲岸の虎』は、『お見事!郷太郎』の2話目以降の構想をネームの形にしたもののタイトルです。今回このネームも選考の対象として評価して森高賞を受賞しましたが、今回Web公開はいたしません。



『又旅』
田中ガス(奈良県・37歳)

東村アキコ
すごく完成された作品で、特に私がいう事は何もないって感じで、面白かったです。ラストもすごい好きですね。
森高夕次
「生と死」とか「死にたがる人」をテーマとした作品で言えば、僕は『とっておきの日』よりこっちの方が大人っぽくて好きです。そういう感情ってどうしても哲学的なものがないと子供っぽくなってしまうんだけど、この作品はそこがしっかりしてる。完成品だから、雑誌に載せて読者の反応を見るしかないと思う。でもやっぱり、いくらなんでも笑える部分がなさすぎる。4コマの体裁をとっている以上、哲学的な雰囲気に加えて、最後には笑いを取る姿勢が欲しい。笑わせるというモチベーションを意識的に高めていかないと、商品としては弱いままで終わってしまうから。
事務局員・劔持
この作品は2次選考で私が担当になりました。作者と電話で話したところ、本人も笑いを入れるバランスが難しいと思っているみたいです。このくらいかな~というのを考えながらやってるそうなんですけど。
森高夕次
笑わせようと思うんだったら、もっと自虐的に、死生観とか自分が信じてるものに、あえてツッコんだりとか、崩したりってことを意識的にやっていった方がいいと思う。
モーニング編集長・島田
森高さんに言われて俺もよくわかったけど、この作品は笑いの要素が圧倒的に足りないんだよな。売れてる、評価を得ている漫画で、笑いの要素が一切ない漫画って実はものすごく少ないんじゃないかな。モーニングの漫画だって、ほとんど全部の漫画に、どこかにユーモアがあるじゃん。
事務局員・劔持
えっ!  『又旅』はユーモア一切ないですか!? 僕は結構笑えたんですが…。
東村アキコ
私も笑いの要素は全部排除して描いてるとしか思わなかったです。泣いちゃうくらい真面目に読んでて、ボケは1個もわからなかったです。
モーニング編集長・島田
だから逆に言うと、こういう4コマのスタイルで笑いの要素を排除したことがこの作品の新しさなんだろうけど、やっぱりさすがにちょっとさびしくなるっていうか…。テーマとか話の内容は嫌いじゃないんだけど。それこそ業田良家さんくらい、全部がギャグになっていたら、多分好きだと思う。
編集部員・T渕
郷田さんの『自虐の詩』も、ギャグの半分ぐらいは、ちゃぶ台をどうひっくり返すかっていう、吉本新喜劇みたいな話で、この作品もそういう強引に笑いにもってく決まりパターンが1個あればいいんじゃないかな。
モーニング編集長・島田
そうなんだけど、『自虐の詩』は、どんなに悲惨でも最後にとっても良い終わり方をする予感があるじゃない? これは最後死んで終わる話だからな…。もちろん暗いばっかじゃなくて、人間の善性みたいなものを描こうとしてる作品だってことはわかるんだけど。





『イクラリオン戦記』
臼倉史(東京都・34歳)

東村アキコ
前回のMANGA OPENで『ペンギン君』を描いた人ですよね。私は『ペンギン君』の時からこの作家さん割と好きで。まぁ今回の作品はラストがアリかナシかって話になると思うんですけど、ナシだとしたら、じゃあ他のラストがあったのかっていう話になると思うんで、本人がこのラストに着地したんだったら、作家性というか、それはそれでアリなんじゃないかと私は思います。前作より全然良くなっていると思うし、個人的には絵が好きです。よくある話ではあるんですけど、女の子がかわいくって魅力的で。なんか雰囲気も、結局最後まで主人公漫画描けてないじゃんってとことかも私は好きで。………私は好きですよ、好きなんですけど、でもこのまんまじゃダメなんです! 雑誌に連載したり、単行本売れたりするためには。どうしたらいいのかわからないんですけど…。
森高夕次
僕はこの作品、新人の投稿作にはありがちだなと思ってしまいました。最初の方はよくできているなと思っていたんですけど、ラストはもっとオチをちゃんとつけてほしかった。どうなるのかなと思って読んでいて、最後はカタルシスがあるのかと思っていたら、それがなくてモノローグのような形で終わってしまった。もっと話をまとめる力をもうちょっと欲しいなと思いました。前半がうまいだけに残念。
事務局長・篠原
担当の柳川さんはどうですか?
事務局員・柳川
前作がファンタジーの要素が強かったので、今回はもっと王道なものを目指そうという事でこういう話になったんですけど、先生方が言われる通り、ちょっとエンタメ要素が薄かったかなと思っています。ラストに関しては、作家さんが、最後をまとめるところも描いて提示してくれたんですけど、それをつけると蛇足な感じがしたんで、今の形のようにラスト切ってみてはどうかと提案して、なくしたんです。それは最後、主人公が結局ダメな日常に戻っていくというもので、そんなラストを読者は見たいのかなと思って。
森高夕次
なるほどなぁ~、ヘタクソなオチをつけるよりは描きっぱなしの方が印象に残るだろうと。
東村アキコ
私は、主人公ここから頑張るんだろうなと思ったし、人によって受け取り方が変わるしね。
森高夕次
ラストにも繋がるんだけど、この作品、漫画を描いてる男の子と相撲をやっている女の子が、ちょっと乖離しちゃってるんですよ。もうちょっとこの二人をうまく結びつけられるような理屈を考えてくれないと、読んだ時の満足感が薄いんですよね。話をまとめる力がまだ足りないので、もうちょっと進歩してほしいですね。
モーニング編集長・島田
心象風景とかイリュージョンを描くのをやめてもらった方がいいんじゃない? それを出すと話はなんでもアリになっちゃうから。





『踏んばれ、がんばれ、ギランバレー!』
たむらあやこ(北海道・34歳)

森高夕次
この人の力量は買います。ただ、オリジナルの作品を見る前にエッセイを見せられても、この人のパーソナリティーがわからないので、エッセイ漫画本来の面白味はどうしても薄れてしまう。そういう意味で、投稿作でエッセイ漫画というのがクエスチョンマーク。俺だったら、自分がかかった病気のことを、架空のキャラクターを使って30ページくらいの物語にして出したと思う。
東村アキコ
内容とかじゃないんですけど、この作品4コマか、あるいは8コマとかの方がいいんじゃないかと思いました。要するに、1個のトピックを8コマくらいで描いてもらえると読みやすいかなって。例えば、「病気になった瞬間」とか、「ベッドでの過ごし方」とか、「親はこうしてる」とか。私この病気は名前は聞いたことがあったけど詳しいことは知らなくて、知らないことを知れるっていう意味ではすごくよかったんですけど、あとは形式を、担当がもうちょっと整理してあげたらいいのではと思いました。
事務局員・平野
2次選考から僕が担当してまして、北海道在住の方でまだお会いできてはいないんですが、何度か電話で話して、かなり体調は良くなられて、今は自宅で療養されているそうです。この投稿作の時は、枠線もフリーハンドで描いていたんですが、今は定規を使って線を引けるそうです。このように良くなっていく過程を見られるというのはとても価値があると思うんですが、東村先生がおっしゃていたように形式の問題とか、あとは2次選考で編集長が言っていたような「読んでいて辛すぎる」という部分も確かにあると思うので、その辺をどうすればいいか考えています。
事務局長・篠原
この作品は、僕はすごく気になっていることがあって、僕は読んでてそんなに「辛いな~」と思わなかったんですけど、2次選考では「もう読んでいてしんどかった」という意見と、明るく描いてるし今描いてるってことは良くなってるっていうことだろうから「全然辛くなかった」という意見と両極端だったんですね。その点、森高さんと東村さんはどうだったのかなって。
森高夕次
僕は、ここで痛さが伝わるか伝わらないかをあまり評価の対象にしなかったというのが本音なんです。この作者がこういう体験をして大変だったという事が伝わったとしても、それを投稿作の評価に繋げていいものかが疑問で。それをエンターテインメントというか、架空の話にして作品にしたときに、その痛さが体験者だからこそのリアリティーを持って伝わるならば、それは評価に直結するんだけど。この作品でも痛さは伝わってきますけどね。
モーニング編集長・島田
その痛さが伝わる事で、読んでるときに、読み辛さというか、俺は「辛くなるから読みたくなくなっちゃうな」って感じがするんですよ。
森高夕次
はいはい、その気持ちはわかります。
東村アキコ
私は、結局その痛さというのは体験した本人しかわからないと思うから、それよりも、周りの家族の描写があったじゃないですか。お父さんが頑張って働いて医療費工面するとか、叔母さんが無理矢理でもご飯食べさせてくれるとか。本人のもの凄い痛みとかは、もちろん情報としてはあっていいんだけど、そこばかりを描くよりは、そういう周りの対応にスポットを当てて描いてほしいと思いました。その方が漫画としてエンターテイメントになるから。『ダーリンは外国人』だって、外国人のダーリンが日本に来て「大変だ」「困った」っていう描写ばかりじゃ面白くないけど、そのダーリンのずれた言動に対して周りがツッコんでいくから面白いわけで。
モーニング編集長・島田
この人も明るく描こうとはしてるんだよね。
事務局長・篠原
そうですね。ただ、まだ辛いことを明るく見せるための技術が足りないというか。
東村アキコ
でももしモーニングに載ったら、充分世のため人のためになると思いますよ。もうちょっと読みやすく整理してあげればいいかなと思います。





『群青の月』
猫太マナ(栃木県・17歳)

事務局長・篠原
では、次は『群青の月』です。まず東村先生からお願いいたします。
東村アキコ
17歳にしては絵も上手いし、ちゃんとできてるから才能はあるとは思うんですが、17歳だからといって、これからだって言っててもしょうがないわけで。少女漫画だと、もう17歳でプロとしてデビューして描いている人も割といるんですよね。自分の身の回りを描くのか、自分とはかけ離れた世界を描くのか、どっちか決めて、もう少しページを短くして描くのがいいんじゃないでしょうか。
森高夕次
最初は、この作者の年齢を見ずに作品をみて、30歳くらいの人がこういう漫画を描いてきちゃったのかなあ、典型的に売れない漫画家だなあ、なんて思っちゃったんですが、17歳っていうことならOKだと思います。なんで売れない漫画家だなあ、なんて思ってしまうかというと、ものすごく独りよがりなんですね。でも、ここまで独りよがりになれるということは、逆に言うと自分の世界を持っているということだから、将来性はあると思います。予言めいたことを言うなら、この人はブレイクする可能性はあります。ただ、他人に見せるというトレーニングをしたことがないんだなあ、っていうのが作品からよく分かるから、とにかく描いて他人に見せるっていうことを繰り返した方がいいと思います。アシスタントに入るなりして、社会性を身に付けていくのもいいですし。
事務局長・篠原
ありがとうございます。では担当の福島から何かありますか。
事務局員・福島
私は2次選考から担当させていただいているのですが、とにかく絵がきれいだという点で担当したいと思いました。このあと打ち合わせして、いくつかネームを描いてもらったのですが、たしかに身の回りに題材を求めるか、自分のいるところとは全く違う世界を描くのかは本人もまだ決めかねているようでした。また、打ち合わせしたものとは、まったく違うネームが来ることもあって、自分の描きたいものがしっかりあるんだな、という印象はあります。これから、上手くそれを刺激できればと思っています。
モーニング・島田
この人はどういう漫画が好きなの?
事務局員・福島
『ばらかもん』とか、『ピアノの森』とか『銀の匙』とかが好きだそうです。でも本人いわく、あまり数は読んでいないとのことでした。
モーニング・島田
じゃあたくさん読んでもらった方がいいね。漫画1000冊読むまで打ち合わせしないとかね(笑)。やっぱり勉強だから。
東村アキコ
そうですね。やっぱりたくさん漫画を読んで、いろいろ吸収していってほしいですね。





『わかりあえたら』
伊澤わさ子(東京都・23歳)

東村アキコ
私はこの作品、大賞でもいいと思います。絵もすごくいいし、キャラもかわいい。何より丁寧に描いているところに好感を持ちました。今回の応募作の中では、一番プロに近いんじゃないでしょうか。一つ文句をつけるとしたら、タイトルくらいですかね。
森高夕次
平均点が高く突出したものがないという中で、消去法的に選ぶとするならば、私もこの作品が大賞候補だと思います。ただ、この人は本当に才能があると思う反面、実戦投入寸前と考えてみると、どうしても絵が弱いと思ってしまいます。ぎりぎり、モーニングに載る可能性のある絵だけど、この人の絵を見て、おっさん読者は「あ~女の絵だな」と思ってしまうかもしれない。モーニングで描いている女性作家さんは皆どこか男でも読める部分を持っている。この人の場合は、「女の人が女の絵を描いている」という感じが強すぎて、マイナスになっていると思います。モーニングに載っても成立するという絵柄を突き詰めていって欲しいです。
編集部員・T幸
3年くらい前にコミティアで声をかけて担当になりました。この作品に関していえば、最近、おばあちゃんが亡くなったということを聞いたので、じゃあその話を描きましょう、と。初めは、お姉さんがいなくて主人公が一人だけだったのですが、どうも面白くなかったので姉妹という設定にしました。物語や演出方法などは問題ないと思うのですが、やはり絵柄が弱いというのがあって…。どういう絵柄にしようかと話し合っているところです。
東村アキコ
私は、絵はすごい好きなんです。特に、後半のお姉さんが泣いているあたりの顔は感動しました。
森高夕次
お姉さんと妹を下手な漫画家が描くと、本人としてはキャラを変えて書いたつもりでも、区別がつかないというのがありがちだけど、この人の場合は明確に別人と分かる。それだけで次元が高いですね。女子高校生の体のラインと、ちょっと年上のお姉さんの体のラインの描き方なんかは非常に上手い。
モーニング編集長・島田
今改めて読み返してみるとこの人は本当に上手いよね。大体思った通りの展開なんだけど、普通の話を読ませるっていうのが一番力量がいると思う。
東村アキコ
本当にそう。おばあちゃんが死んだっていう話だけでこの長い一話をここまで読ませるっていうのは、天才だと思います。ダサいはずの普通の演出なのに、お姉さんが瑞々しくて色っぽい。髪の毛といった細かいところにまで意識が行き届いています。一つだけ気になったのは登場人物の鼻にかかっているトーンです。これは、もう少し勉強して変えた方がいい。
編集部員・T幸
アドバイスありがとうございます。今、色々と絵柄のバリエーションを試しているところなんですが…。今のままでいくのか、エッセイっぽく一筆書きのような絵にするか、好きな作家さんの真似をするか、それで迷っています。
森高夕次
私は、青年誌に載っていてもおかしくない、という路線に変えて行くべきだと思うんだけどなあ…。
東村アキコ
星里もちる先生の絵を目指してみたらどうでしょうか。このニュートラルな感じの絵柄ってすごい武器だと思うんですよ。
モーニング編集長・島田
没個性に見えるけど、意外と思い出せる絵ってことか。
森高夕次
確かに、人気が出て、なおかつ売れそうな感じはしますね。





『ししまい番長』
さとう柏花(大阪府・28歳)

森高夕次
この作品は、正直印象に残りませんでした。前半でこんなにキャラを作りこまなくていいと思います。ししまいの動きだけを読ませるくらいの割り切り方が大事。もう少し描きたいところを絞っていく構成力が必要ですね。
東村アキコ
私も詰め込み過ぎだと感じました。絵も上手いし、かわいいとは思うのですが、もう少しネームを整理した方が良いです。高校デビューまでのくだりを省いて、ダサい子が高校に入って、ししまい部を作るくらいがちょうどいいのではないでしょうか。ししまいは良いと思いますけど(笑)。
モーニング・ツー編集チーフ・三村
この方とはコミティアで出会いました。ししまいの瑞々しさと迫力に圧倒され、どんな人だろうと思って連絡を取ったところ。熱烈なししまい愛をお持ちで、ししまいの漫画を描きつづける人でした。そのせいか、ししまいの動きを描きたいという気持ちが強すぎて、ストーリーが滅茶苦茶になってしまうんですね。採点表に東村先生が「落ち着け!」と書いてらっしゃいますが、僕も本人に何度か「落ち着け!」と言っています(笑)。
編集部員・Y江
実はその後、私もししまいが大好きなので、この方の担当を引き継いだのですが、描いていて楽しいのは?と訊くと「ししまい!」と即答されるくらいで…。私もストーリーをどうするかで悩んでいます。
東村アキコ
私、全然お金とかいらないんで、プロデュースさせてもらえれば、そこそこのギャグ漫画にする自信はあります。
一同
おーっ!
東村アキコ
ししまい好きな女の子が、所構わず、すぐししまいをやりたがるのはアリなんじゃないんですか。ひたすら、ししまいが好きな女の子が空回りするギャグ漫画です。タイトルは「ししまいガール」(笑)。
事務局長・篠原
もうキャラクターが立っていますね(笑)。
モーニング編集長・島田
ぜひ、お願いします(笑)。





『特になにもしてない』
さかぐちまや(愛知県・27歳)

東村アキコ
とにかく絵が上手い。昔の高野文子先生を見ているようで、すごい心地が良かったです。「るきさん」みたいな漫画を描いてほしいです。何てことない話なんですが、絵が上手いから読めてしまうんですね。それはすごい才能だと思います。もし、何も賞がないのであれば、東村賞をあげたいくらいです。
森高夕次
完成品であるということは分かります。それが分かった上で、もし本に載っていたらつまらないと僕は思ってしまいますね。ただ、つまらないんだけど、載せたくなる気持ちも分かります。絵に売れる要素があって、さらに「引きこもりモノ」で括ることができるこの作品は、現代の売れ線のひとつのパターンだと思うんです。正直、好感は持てなかったけど、これは載せるしかないというレベルの完成品だとは思います。それでウケが良いか悪いかを判断すればいいのではないでしょうか。
編集部員・Y原
下読みの段階で絵の上手さに惹かれ担当になりました。東村さんがおっしゃったように、1ページで全部を描くようにして、まさしく『るきさん』みたいにしていきたいです。週に4枚か5枚はネームを送ってくれて非常にやる気もある。何か自分がハマっているものを漫画にしてくれれば、すぐデビューできると思います。
東村アキコ
たとえば、もっとノスタルジーっぽさを前面に押し出して、幼少の時の記憶で4ページで一話を繰り返せばいいんじゃないですか。この人はゼロから空想でポンっと話を作るタイプの人じゃない。この作品でも、「引きこもり」のところより、子供のときのエピソードの方が私は好きです。
編集部員・Y原
なるほど参考になります。ありがとうございます。





『ヒューマンレンタル』
方月春仁(東京都・37歳)

森高夕次
力作だと思いました。この人は鈴ノ木ユウ(『コウノドリ』をモーニングで連載中)の成長曲線を参考にするといいですね。商業誌に載るにはどうすればいいか、どうやって人の気持ちを惹く演出をするか。鈴ノ木ユウの最初のロックの漫画から読み直して、学んでいってほしいです。もちろん、鈴ノ木ユウとは違う存在にならないと載らないのですが。ただ、未来は感じるんだけど年齢が37歳っていうのがなあ…。
事務局員・高橋
この方は現在37歳で30歳過ぎてから漫画を描き始めたそうです。
モーニング編集長・島田
鈴ノ木君もわりと歳をとってから受賞していますよね。ただ彼の場合はストーリーじゃなくてパッションを描いていたんだ。感情をブチ撒ける絵が上手かった。話は未完成なところが多かったんだけど。
東村アキコ
ものすごく売れる人かもしれないし、そうではないかもしれない。話も面白いような面白くないような…。ちょっと評価に困ってしまいました。この設定は一つのジャンルと言っても過言ではないくらい本当に良くありますよね。あえてそこに挑戦して新境地を切り拓くのかと思ったらそうでもないし…。
モーニング編集長・島田
話はまとまっているんだけど、地味なんだよね。
事務局員・高橋
編集長がおっしゃっているように、この作品は「なんとなく読めるんだけど印象に残らないなあ」というところがあってどうしようか悩んでいます。
モーニング編集長・島田
身も蓋もない話をすると、週刊漫画雑誌の中で「一話読み切りで毎週安心して読める作品」というものの需要はあった。けれど今は、そのちょっとした話を楽しむ余暇時間がスマホに取られてしまったんですよ。もっと読んだ甲斐のある何かが上乗せされていないと厳しい。昔は逆にこういう種類の読み味のものが載っていないと雑誌は成立しなかったんだけど…。まあ、今でも雑誌のバランスから考えてみると必要ではある。たとえば、この作品だって女性がものすごくかわいかったりすれば載せてみたい気もする。
東村アキコ
私も女性がとにかくかわいくないと思います。美人を描こうとしている分、目についてしまう。
モーニング編集長・島田
男の顔も主人公顔じゃないしなあ。
東村アキコ
タイトルを変えて上手くやり直せば、ありがちとはいえ連載向きの良い設定だとも思います。さらに、個人経営というか、フリーのヒューマンレンタル屋さんであれば、一人で色々な人に成り代わる漫画的表現が可能なので、そうすれば良かったのにと感じました。
事務局員・高橋
アドバイスありがとうございます。さっそく本人に伝えてみたいと思います。





『エスケープ』
佐藤啓(宮城県・21歳)

森高夕次
まず21歳という年齢を考慮したいです。21歳でここまで描けると考えれば、非常に将来性はある。ただ一読して思ったのは、説得力が全くないんです。頭の中でストーリーを構築する力が足りないんですね。もう少し人生経験を積んでいけば、もっと描けるようになるはずなので、頑張ってほしいです。
東村アキコ
正直なところ、キャラに魅力が無さ過ぎるし、ストーリーも面白くない。もっと言えば、登場人物の名前が普通すぎる! せめて、あだ名にするくらいはした方がいいと思います。ただ、この人はデッサンがキッチリ描けていて、この年齢では相当絵が上手いと思うんです。小物もしっかりと描けています。なのに、この絵柄を選んでしまっているから読みづらい。もう少し違う絵柄のものを見てみたいです。
モーニング編集長・島田
確かに絵は上手いですよね。かなり難しい構図の絵を描いている。
事務局員・高橋
持ち込みで受けた際も、絵柄に難があると思ったのですが、ところどころに「おっ」と思えるカットがありました。荒削りだけれど、「色気のあるかっこいい男」を描けるようになると思ったんです。ただ、まだ頭の中で描いているような気がしています。色々と本や映画を見て勉強してほしいと思っています。
東村アキコ
この人は大学生なんですか?
編集部員・T橋
家の近くの市民体育館で働いているそうです。
東村アキコ
だから体育館がこんなに上手いんだ(笑)。今回は辛口評価にしてしまったんですけど、違う絵柄、ある意味で普通の絵柄にして、違う話を描いてこれからも応募して欲しいです。
モーニング編集長・島田
生身の人間が経験ができる人生経験はタカが知れているから、取材とかをいっぱいした方がいいよ。後は、若いんだから、頭を柔らかくして絵柄も話も含めて色々なことに挑戦すればいい。現実的な話を描くか、現実から離れてファンタジーみたいな話を描くか。区別としてはそれくらいでいいと思います。





MANGA OPEN事務局員プロフィール

事務局長・篠原
今回から事務局長を務める、香川生まれの中堅編集者。相当な話し好きで、担当している作家との打ち合わせが10時間以上に及ぶこともある。
吉原
この道20年のベテラン。サッカーファンではなく、浦和レッズサポ。大事なことなのでもう一度。サッカーファンではなく、浦和レッズサポ。
上甲
事務局の中核を担う編集者で一児の父。他人の意見を全否定することなく、アドバイスするので皆気軽に相談するが、なぜ青いチェックの服を着ている頻度が高いのかは、未だ誰も聞き出せていない。 
剱持
事務局長とほぼ同期の中堅編集者。元柔道部であり、編集部のダイエット競争では、持ち前のストイックさを生かし一ヵ月で体重を9.6kg落として優勝した。
寺山
若手ながら、実質的に事務局を取り仕切る影の実力者。うれしい時も、怒っている時も、いつでも笑っている度量の大きい人物だが、あまりにもずっと笑っているので少々気味悪がられている。
関根
編集部では珍しい理系男子。物理学や数学などに詳しく、関係資料が山と積まれた彼の机はもはや要塞と化している。
柳川
サブカルチャーに詳しいアラサー女子。メガネ越しに鋭いまなざしで皆を観察しており、時折容赦ないツッコミを繰り出す。
平野
英語が堪能な国際派若手編集者。普段はクールで落ち着いた印象だが、酒が入ると漫画論を熱く語る一面も。
高橋
入社二年目で編集部のアイドルで、早くも週刊連載を立ち上げた期待の星。大事なことは忘れないように付箋に書いてパソコンに貼っており、一番大きな字で書いてあるのは「報・連・相」。
福島
6月からモーニングに配属された新入社員。先輩たちの個性に圧倒されつつ、自分のキャラを模索中。

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